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不知夜月とJardin de ciel(空の庭)のコラボ頁です。

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† 闇に咲く悦楽の閨 第4章 4幕 & エピローグ†

さまざまな想いが交錯する長い夜が開け、幾つかの事を心に決めた景虎の元へフレイが意外な事実を告げにやってくる。…そして、危うい均衡の上で全てが静まった頃、思いがけない再びの逢瀬が訪れる。(完結)

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Drama

ナレーター
  • by T
  • 2009-07-03 15:05
  • edit
朝の眩しい光が彼の執務室に斜めに差し込んでいる。景虎は重厚な机に置かれた二枚の書類を眺めていた。除籍勧告と銘打たれた紙にはすでに宛名が書かれ、景虎のサインと理事長代理の複雑な判が鮮やかな朱で押されていた。景虎はその内の一枚を取り上げた。宛名はニコラウス・ランドルフ。
景虎
  • by T
  • 2009-07-03 15:06
  • edit
……
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-03 15:07
  • edit
景虎は視線を落とすと、もう一枚に刻まれた名を眺めた。アレクサンドル・GD。しばらく考え込んでいた景虎の手元から、勢いよく紙を引き裂く音が響いた。書類を作ったのはたった数日前だった。その間に起こったさまざまな出来事が景虎の脳裏を巡った。
フレイ
  • by T
  • 2009-07-03 15:07
  • edit
おはよう、景虎。昨日はよく眠れたかい?
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-03 15:08
  • edit
ノックもなしにいきなり空けられたドアを、景虎は眉を顰めて一瞥した。朝の空気をまとい、つかつかと入ってきたフレイは機嫌よさそうに景虎の顔を覗き込んだ。金の髪が目前に流れ視界が明るく輝く。
景虎
  • by T
  • 2009-07-03 15:08
  • edit
何の用だ
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-03 15:09
  • edit
無表情な横顔を向けたままの冷たい返答だった。自身の上着の襟を何度か引いて形を直し、革張りの椅子から立ち上がった景虎に滲んでいた微かに緊迫した気配。任務遂行下の景虎特有のどこか真面目な重い眼差しがフレイに向かった。
フレイ
  • by T
  • 2009-07-03 15:09
  • edit
昨日、ニコルが帰ってきてね、それでアレクも元気を取り戻したようだよ。お前、アレクのことを少し気にしていただろう?
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-03 15:10
  • edit
わざわざそんなことを告げに来たのか、と言わんばかりに景虎は斜めに見ただけだ。そして、逆に問うた。
景虎
  • by T
  • 2009-07-03 15:10
  • edit
奴らはどこにいる?
フレイ
  • by T
  • 2009-07-03 20:17
  • edit
どこって…? さっきはダイニングルームで見かけたな
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-03 20:18
  • edit
珍しくアレクはクラスの連中と一緒だった、とフレイは軽く笑った。頷いてドアに向かった景虎に押しのけられたフレイがふと足元のダストボックスにつまずいた。綺麗な彫刻を施された木枠が倒れ、中から小さく破られた紙がさらさらと重なってこぼれた。ふとフレイの目を引いた、三角に裂かれた朱の印。
フレイ
  • by T
  • 2009-07-03 20:18
  • edit
おい、景…
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-03 20:19
  • edit
ドアに消えていく背を追ったフレイはその中身を確かめることはなかった。もちろん、彼の親愛なる部員の名もそこに見つけることはなかった。景虎は本部棟を出て中庭を足早に寮に向かって歩き始め、フレイは隣に並んだ。風は冷たいが日差しの暖かい緩やかな朝だ。硬い表情の景虎の横顔を眺めながら、フレイが口走った。
フレイ
  • by T
  • 2009-07-03 20:19
  • edit
話は終ってないんだぞ、景虎。…私もジークに会ってみたかったな
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-03 20:20
  • edit
ふと、残念そうに呟いたフレイの言葉が景虎の神経に障る。干からびてしまえ、とエドリックにと同じ罵声を浴びせようとして、景虎はいきなり歩を止めた。そして、怪訝そうにフレイを見つめた。
景虎
  • by T
  • 2009-07-03 20:20
  • edit
みたかった?
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-03 20:22
  • edit
数歩、行き過ぎて振り返ったフレイが、やっとまともに自分に向いた景虎にようやく用件を切り出した。
フレイ
  • by T
  • 2009-07-03 20:23
  • edit
そうさ。ニコルが言うには、ジークはまた眠っちまったらしいぞ
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-04 09:40
  • edit
楽しみにしていたパーティがお開きになったような気軽さでフレイは首を傾げた。じっとフレイの白い顔を見つめたまま、景虎は一瞬言葉をなくした。
景虎
  • by T
  • 2009-07-04 09:40
  • edit
何だって…?!
フレイ
  • by T
  • 2009-07-04 09:41
  • edit
昨日の夜のことらしい。ニコルが帰ったのと入れ替わりに
景虎
  • by T
  • 2009-07-04 09:41
  • edit
……。ふざけやがって!! あの…古狸め!
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-04 09:42
  • edit
憤りの息を吐いた景虎の表情が信じられない、というように歪んだ。ジークに会って結論を出す。その約束を取り付けにいくつもりだったのだ。そのために整えた心理が空回りする。景虎は咄嗟に走り始めた。黒髪を靡かせ怒りの表情で疾走する景虎を道行く生徒たちが飛びのいて恐々と見送っていた。寮の横を抜け森に続く地下通路の暗い石畳の入り口を駆け下りる。少し湿り気を帯びた薄闇の中、彼の弾んだ息と固い足音がこだまする。ふと、ある一点で足を止めた景虎に、フレイが息を切らせながらようやく追いついた。
フレイ
  • by T
  • 2009-07-04 09:42
  • edit
…景虎…。いったい、何なんだよ…。今更…
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-04 09:43
  • edit
景虎は2、3歩下がり石畳の壁や天井を見上げていたが、また進み同じように辺りを見渡した。地下道は入り組んで深い位置まで続いている。幾つか分かれ道も行き止まりもある。
景虎
  • by T
  • 2009-07-04 09:43
  • edit
おい! 銀色古狸! 起きて来い!
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-04 09:44
  • edit
 闇雲に叫んだ景虎の怒鳴り声が辺りに響き渡り遠く消えていく。景虎は拳で2,3度石畳の壁を殴りつけたがどこもびくともしなかった。
景虎
  • by T
  • 2009-07-04 09:44
  • edit
…分からん。…確か、この辺りに道があったように思うのに…
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-04 09:45
  • edit
 ジークの張った、人には決して見つけることの出来ない結界がそこにあることなど、もちろん景虎には分からない。しばらく無言で悔しげに壁を睨んでいた景虎が、気が抜けたように大きく息を吐いた。
フレイ
  • by T
  • 2009-07-04 22:30
  • edit
ジークは眠っちまった。で? どうなるんだ? ヴァンパイアたち
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-04 22:30
  • edit
 額に浮いた汗を手の甲で拭いながらフレイが問うと、景虎はそっぽを向いたまま肩を竦めた。
景虎
  • by T
  • 2009-07-04 22:31
  • edit
知らんな。お前の部の部員だろう。何かあったらお前に責任を取らせてやるさ
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-04 22:31
  • edit
 あっさりとした景虎の物言いにフレイはしばらく無言だったが、やがて柔らかな笑顔を浮かべた。
フレイ
  • by T
  • 2009-07-04 22:31
  • edit
へえ。ずいぶんと物分りがよくなっていないか?
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-04 22:32
  • edit
ニコルへのエネルギーの提供はエドリックが担うだろうと、ジョフロアは言った。そして昨夜、談話室で景虎に告げたアレクの言葉は潔く、力強かった。種を隔てる壁は高く厚い。けれど共存の可能性を模索する場所であり続けること。それはこの学園の役割なのかもしれない。
景虎
  • by T
  • 2009-07-04 22:32
  • edit
さあな。…この選択が正しいのかどうなのか、俺にはわからん。分からん以上、全ては保留だ
フレイ
  • by T
  • 2009-07-04 22:33
  • edit
白でも黒でもなく、グレーゾーンってのは案外アリかも知れないな
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-04 22:33
  • edit
二人は歩調を揃えて出口へ向かった。ふと、フレイが気になっていたことを口にした。自分たちが卒業した後、彼らはどうするのだろうかと。
フレイ
  • by T
  • 2009-07-04 22:34
  • edit
ずっとは居られないだろう? 彼らが居づらくなって転校して、ほとぼりが冷めた頃にまた受け入れるのか? 景虎
景虎
  • by T
  • 2009-07-04 22:34
  • edit
俺がこの学園に関わっていればな
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-04 22:34
  • edit
 森に出ると春の近い太陽がさんさんと辺りに降り注ぎ、世界は緑に満ちて明るかった。眩しそうに目を細めてフレイが笑った。
フレイ
  • by T
  • 2009-07-04 22:35
  • edit
じゃあ、生きている内にジークに会える機会もあるかもしれないな。私はその時のために極上のワインを用意しておくよ
景虎
  • by T
  • 2009-07-04 22:35
  • edit
毒でも盛ってやれ。どうせ死なんだろうがな
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-04 22:36
  • edit
結局、ジークの気まぐれに振り回されて終ってしまったような脱力感。それを振り払って、景虎はフレイを睨むときっぱりと言った。
景虎
  • by T
  • 2009-07-04 22:36
  • edit
今度会ったら、その時は白黒つけてやるさ
ナレーター
  • by T
  • 2009-07-04 22:36
  • edit
またいつか会えるだろうか。景虎の抱えた疑問の答えは、あの月の光を集めたような静かで深遠な銀色のヴァンパイアしか知ることはない。寮に近づいた二人の目や耳に精気に溢れる生徒たちのさざめきや姿が届き始めた。振り仰ぐと青い空が澄んで高い。夜の光の中で生きていく生き物。それでも、彼らも自分たちも同じこの世界で生きていく。学園は今日も喧騒に満ち、平和な均衡を保っていた。

闇に咲く悦楽の閨 了 そして…エピローグ
  • by Z
  • 2009-07-04 23:17
  • edit

      闇に咲く悦楽の閨

          了

   ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

        エピローグ


ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-04 23:23
  • edit
【エピローグ】

地下洞窟のひんやりした空気がジョフロアを押し包んでいた。ジークが再び深い眠りについたと景虎から聞かされてから半月。ジョフロアは訳の分からない空虚感を抱えて、時々この場所を訪れていた。膝を抱えて座り込んだ彼の、足元から天蓋部までせり上がった岩床に散在する方解石や雲母。それに苔の光が反射して、淡い天の川の中に飲み込まれているような幻想を誘う世界。

ジョフロアは景虎の制止の言葉を忘れたわけではない。だが、ここはあまりに危険とはかけ離れた神秘的な優しさに満ちていた。その上、学園はジークが目覚める前と変わらず平和で、エドリックとニコルの恋は上手くいっている。何もかもがリセットされたような日常。だが、ジョフロアの中の何かがもう元へは戻らない。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-04 23:24
  • edit
また貴方に会いに来る。僕はそう言いましたよね…
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-04 23:24
  • edit
別れ際にそう言い残したのに、再び会う事は叶わなかったジーク。この先に、彼と話した地底湖があるはずだった。だが、あの時のようにはもう進めない。ジークによって結界が張られたのだろう、闇と一体化したようなその先には、どうやっても入り込む事はできなかった。あの超音波の旋律は覚えている。機器でも持ち込んで同じ旋律を奏でれば、先に進めるのか。反対側の出入り口に当たる光耀寮の地下扉にも以前と同じように結界が張られていたが、ニコルやアレク達は相変わらず中に入り込めるのだろうか。そんな事を思いながらジョフロアは目の前の銀河に似た光景を見つめる。
  • by Z
  • 2009-07-04 23:25
  • edit
.. .... .. ......... ...... .. ...... ....... ... ... ....
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-04 23:25
  • edit
その時、聞き覚えのある微かな音の波をジョフロアの耳が捉えた。それが徐々に大きくなる。ニコルかアレクか。俯いていたジョフロアの視界に誰かの足元が飛び込んできた。下からそれを上に辿る。そして、夢でも見ているように目を瞬かせたジョフロアの上に、思いのほか優しい笑顔が降ってきた。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-04 23:26
  • edit
…卿!
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-04 23:26
  • edit
眠りについたと思っていたジークがそこに立っていた。待っていたと語りかけるような慈愛の籠った視線が注がれている。それは、ジョフロアから危険という概念を取り去ってしまうのに、あまりに十分だった。何か言いかけたジョフロアを優しく手で制して、彼は彼らが進むべき方向を指し示した。見れば、今まで闇だった場所に地底湖に向かう道が口を開けていた。無言で前を行くジーク。その後ろ姿を見慣れていたわけではないのに、無性に懐かしく感じる。

やがて地底湖を臨む空間が目の前に開けた。清水の滴る音が奇岩の天蓋に柔らかく木霊し、清流の作り出す澄んだ空気が肺と肌に心地よい。外界から忘れ去られたような荘厳なる地球の胎内。そこには相変わらずゴンドラが浮かび、秘めやかに彼らを待ち受けていた。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-04 23:27
  • edit
どうして、再び目覚めたのです? …何か心残りでも?
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-04 23:28
  • edit
ジョフロアの問いに、ジークは黙って微笑んだだけだった。肯定なのか否定なのか。返事が無い事にじれながら、その表情を見て類推しようとしても、長い年月が作り出した仮面は容易にジョフロアにそれをさせない。ジョフロアはゴンドラに乗るように促されて、従うしかなかった。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-04 23:30
  • edit
もしかして、また僕の遠吠えが貴方の眠りを邪魔してしまいましたか?
ジーク
  • by S
  • 2009-07-04 23:31
  • edit
....いや
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-04 23:31
  • edit
邪魔ではない。そう口にした声はとても穏やかで、久しぶりにその人の声を聞いたせいか、どこか感慨深げに聞こえた。同時にジークの指がジョフロアの髪に延びる。ゴンドラの中に座り込んだ二人の距離は近い。ふわりと撫でられて、ジョフロアはジークの想い人が自分と同じ黒髪をしていた事を思い出した。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-04 23:32
  • edit
貴方の愛した黒髪の人に僕は似ているのでしょうか…。良かったら貴方の恋の話を聞かせて頂けませんか? しがない人狼が聞き手でも差し支えなければ…
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-04 23:32
  • edit
以前、ジョフロアがジークに促した全く同じ台詞。時の指針が巻き戻ったように、ジークの視線が虚空を透かして時の彼方へ翔けていく。すべてがあの時と同じだった。やがてジークは頷いた。そして、語り始めたのだ。彼の秘められた物語を。
ジーク
  • by S
  • 2009-07-04 23:36
  • edit
......遠い昔......まだこの身体を自分の心が許してさえいなかった頃、時代の波に飲まれ仲間が次々と消え....私一人になった。そんな時、ある人間の男に出会った。それまで、男性と寝た事のなかった私に彼は閨の快楽を与えた。...ちょうど、君の様な長い豊かな黒髪で優しく包む様に微笑む男だった。
ナレーター
  • by S
  • 2009-07-04 23:37
  • edit
朗々と語る低く重たい声音が、優麗な湖を育む天蓋に静かに響く。
ジーク
  • by S
  • 2009-07-04 23:38
  • edit
私は彼を「己の死に場所」に定め、一切の人間の血を断った。彼に抱かれている中で死にたかった。しかし、血を絶っても一向に死なない己を見て、人間の血以外である精液でも生き延びる事を、その時悟った。やがて、彼の肉体を病が冒し始め、死が訪れようとする最後の瞬間まで彼は自分を私に与え続け「生きろ」と。共に死ぬ事さえ許してくれなかった男の最期....笑っていたよ。
ナレーター
  • by S
  • 2009-07-04 23:38
  • edit
暫しの沈黙。
ジーク
  • by S
  • 2009-07-04 23:39
  • edit
....ジョフロア
ナレーター
  • by S
  • 2009-07-04 23:39
  • edit
相手に眼差しを据えて、そのまま言葉を継ぐ。
ジーク
  • by S
  • 2009-07-04 23:39
  • edit
君と寝たい。ジョフロア
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-04 23:41
  • edit
胸の締め付けられるようなジークの話に、思わず彼の手に指を伸ばそうとしていたジョフロアが身体を引いた。思いかげない言葉が心臓を熱く抉り、奈落の底に誘うような翠の瞳がこちらを見つめている。思えば少し不思議だった。彼の長い生にしてみれば通りすがりにしか過ぎない第三者の自分に、ヴァンパイアの秘密を易々と伝えてくるジークが。単に行き過ぎた戯れなのか。けれど、余裕があるようにみえて、時々見せるジークのアイロニカルな笑いが、どこか哀しげであるのがとても気になっていた。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-04 23:42
  • edit
貴方は渇いて? …それとも違う意味で僕と? 貴方が看取った黒髪の人の望み通りに生き抜くためたら、僕のエナジーを差し上げないでもないけれど…
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-04 23:42
  • edit
ジョフロアは少し困ったように俯いた。自分に少し似ているというジークの愛した男。だがその人の身代わりになって閨の快楽をともにする事は無理だった。自分には景虎がいる。それに人狼の特殊な生理もある。だが、少なくとも寝るという事はそういう意味だと、見つめてくるジークの瞳が告げていた。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-04 23:43
  • edit
…何か別の方法で、貴方を満たすことはできませんか? そういえば、貴方が仰っていた蝶。…あの蝶を、もし性行為を伴わずに貴方が見る方法があるのなら、僕にもできることがあるかもしれません…
ジーク
  • by S
  • 2009-07-04 23:44
  • edit
私は渇いてはいない。君の愛情が欲しいだけだ....
ナレーター
  • by S
  • 2009-07-04 23:45
  • edit
ここにきて、ジークは意外にも真摯な思いを口にしつつ、ふと首を傾げる。
ジーク
  • by S
  • 2009-07-04 23:46
  • edit
性行為を伴わないでと....もしかして君は、人の姿で達した事はないのか?
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-04 23:46
  • edit
…ありません。僕は射精時に狼に変わってしまいます。それもメスを闇雲に求める獰猛な…。だから僕には地下牢と鎖が必要なんです
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-04 23:47
  • edit
人として完全に満たされる事はない。恋人を満たしてあげる事もできない。ふと地下牢での逢瀬の感覚がジョフロアの身体に蘇って熱くさせた。それを見抜いたようなジークの瞳がジョフロアの身の置き所を更に狭くする。以前、自戒を解いて誰かと愛し合えばいいと、ジークに助言した事は覚えている。だが、その矛先がまさか自分に向いてくるとは思ってもみなかった。全ての事に敏感なはずのジョフロアは、唯一、自分に向けられる愛情に関して鈍感だった。以前大きな愛情を失った時の記憶が、痛点をやわらげるためにその感覚センサーを酷く鈍らせている。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-04 23:49
  • edit
…貴方が好きです。愛情も差し上げたい。…ですが色んな意味で、貴方を悦楽で満たす事は僕には無理です
ジーク
  • by S
  • 2009-07-04 23:50
  • edit
哀れだな....
ナレーター
  • by S
  • 2009-07-04 23:50
  • edit
目の前の青年には視線を向けず ただ小さくそう呟く。
ジーク
  • by S
  • 2009-07-04 23:51
  • edit
...ジョフロア、一度でも人として満たされたいとは思わないか?
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-04 23:52
  • edit
…確かに…貴方と同じように異種を愛すると辛い思いをする事はありますね。…ジーク。失礼、ジークと呼んでも構いませんか? …でも、僕は人として満たされる事はとうに諦めてます。見果てぬ夢を口にすれば欲しくなるし…
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-04 23:53
  • edit
異種間ではどう考えても普通の性交など無理な話だった。例え人狼のメスが見つかったとしても、愛せるかどうかも分からない。ジョフロアはふとニコルの元からエドリックが帰ってきた夜を思い出した。ニコルがあんな風にエドリックを愛している以上、ヴァンパイア達の間に濃密な恋愛関係が存在するとは思われない。ジークの傍らにはその愛を分かち合う人は居ないのだ。それが、どんなに辛い事か。愛を知ったジョフロアには、容易に想像できた。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-04 23:53
  • edit
…貴方は…いったいどれくらいの年月を独りで…?
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-04 23:53
  • edit
冷徹な瞳のジーク。深く冷たい湖のような碧。その向こうに微かに煌めく暖かい血の通った愛の形を見つけて、ジョフロアの双眸から突然涙が溢れ出た。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-04 23:54
  • edit
…ごめんなさい。僕どうかしてます。…ただ貴方が愛しくて
ジーク
  • by S
  • 2009-07-04 23:58
  • edit
ジークと...
ナレーター
  • by S
  • 2009-07-04 23:59
  • edit
呼べ、という傍ら、その青年が......今の今まで心の奥底に無理矢理押しやっていた想い、それに心を馳せているのか。憂いを帯びた翠玉から流れる涙をじっと見据える。...まるでそよ風に揺れるやわらかな花の様な。
ジーク
  • by S
  • 2009-07-04 23:59
  • edit
呪っているだけでは何も始まらない。君を人の姿のまま満たせてみようか。
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-05 00:00
  • edit
静かで諭すような声。自分を見つめるジークの瞳は、今までと違って圧してくるように真っ直ぐだった。それゆえ彼の言っている事が嘘偽りであるとは思えない。今までの不思議な力を見ても、ジークならばきっとそれが可能なのだろう。だが、いくら見果てぬ夢の成就を提示されても、寝たい、愛が欲しいと言った相手の言葉のままに身を委ねる事は流石に躊躇われた。特に此処はヴァンパイアたちの閨の象徴であり、寝台として揺り籠のように浮かぶゴンドラの上だ。ジョフロアの鋭い嗅覚には、そこに残された体液の匂いも届いて来ていた。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-05 00:01
  • edit
…ジーク。気持ちはとても嬉しいです。人の姿のまま達する事は僕の夢でしたし、特に貴方からの言葉だから余計に流されそうです。…ですが…
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-05 00:02
  • edit
抗おうとするのに、ジョフロアの身体の芯には不思議な熱が点り始めていた。ジークはジョフロアを見つめているだけで、何もしていない。突然起こった感情の制御不能。ジョフロアは慌ててその考えを振り払おうと頭を振った。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-05 00:25
  • edit
…そうだ。エディとニコルは上手くいっていますよ。僕の見立てでは、今のところエディの身体に変調は起きていませ……
ナレーター
  • by S
  • 2009-07-05 00:27
  • edit
咄嗟に話題を変えようとしたジョフロアの言葉を最後まで聞かず、ジークの右手がそれを制す。相手が押し黙ったのを確認すると、自身の上着のボタンを上からゆっくりはずし胸の中心を露にした。片手をそっと青年の前に差し伸べる。
ジーク
  • by S
  • 2009-07-05 00:28
  • edit
手を、ジョフロア。胸の中心、私の心の臓の上に。
ナレーター
  • by S
  • 2009-07-05 00:28
  • edit
相手の面映い戸惑いの色がありありと伝わって来る。それを推し量ってか、それ以上 手を延ばしては来ない。
ジーク
  • by S
  • 2009-07-05 00:29
  • edit
大丈夫。類似体験だ。ここで君の....閨での悦楽の記憶を辿らせて貰おうか。
ナレーター
  • by S
  • 2009-07-05 00:52
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二人の煌く双眸が一線上に重なった。現身(うつしみ)を保って悦楽を味わう事への戸惑いの大きさが僅かな沈黙を生む。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-05 00:52
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…記憶というと…暉堂との…ですか?
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-05 00:53
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ジョフロアが躊躇いがちに聞いた。ジークは頷いたが、その真意は掴みかねた。どうやら、ゴンドラをベッドにしていだきあう同衾とは、少し違うようだ。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-05 00:53
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…わかりました。そして、僕は達するんですね。…人の姿のままで
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-05 00:53
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理屈では分からなくても、ジークの瞳にはジョフロアを納得させる光があった。これから誰かを抱くような艶めいたものではない。寧ろ真摯で慈愛の籠った光。恋人を裏切るような行為とは違うのかもしれない。ジョフロアは覚悟を決めたように、並んで座っていたジークに向かい合った。そしてジークの膝の上にあった白い手に自分の指を絡めて、すべてを委ねる。
ジーク
  • by S
  • 2009-07-05 00:54
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そうだ。もし狼になる衝動が来たら、私の名を呼べ。
ナレーター
  • by S
  • 2009-07-05 00:56
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絡み合ったお互いの手を そっとジークは自分の胸の上に置き、片方の手でジョフロアの濡れた両の瞼を閉じる。
ジーク
  • by S
  • 2009-07-05 00:57
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君の脳内でその記憶を辿れ。臆するな。ジョフロア、私を信じろ。
ナレーター
  • by S
  • 2009-07-05 00:58
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最初は小さなさざ波の様だったジョフロアの身体の震えが段々と、そしてゆっくりと全身に広がり始めた。意識が混濁しているのか、薄く開いた翠の瞳の焦点がぶれる。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-05 01:00
  • edit
……っ…
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-05 01:00
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誰にしがみついている意識なのか、ジョフロアの手がジークの膝を掴んでうずくまった。肩で息をし始めた彼は、艶めかしい声を殺すように自分の二の腕を唇に押しあてる。やがて衝動を抑えきれないように腹部がうねり上がった。突き上がる悦楽の波が来る度にジョフロアは熱い吐息とともに顔をあげる。艶冶に顰められた眉と、快楽の甘さを物語る笑み。夢見るような瞳の奥にほんの少し悲哀の色を滲ませて、行き場のない迷いで足がゴンドラの中を彷徨っていた。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-05 01:00
  • edit
…ジーク……だめです…僕は狼に…
ジーク
  • by S
  • 2009-07-05 01:01
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大丈夫だ。声を殺すな。
ナレーター
  • by S
  • 2009-07-05 01:01
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組み敷かれ貫かれている感覚がジョフロアの脳裏を辷(すべ)っているのか、記憶が頂点の「それ」に近づくにつれ、地響きの様な不思議な旋律に変化していくのを、重なる手を通してジークは実感していた。
ジーク
  • by S
  • 2009-07-05 01:03
  • edit
まだだ。まだ頂点ではない。その先にあるもの掴み取れ!
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-05 01:04
  • edit
…だめ…で…す。貴方を傷つけて…しま…う…
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-05 01:04
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促されてもなお、性欲の魔物に身を預けて自分を狼へと明け渡してしまう事への恐怖がジョフロアを苛んでいた。苦しみに歪んだその顔と、ジークの服の端を掴む縋るような指が彼の背負った十字架の重さを物語っている。ジークはその黒髪にそっと手を触れた。傷ついた若者を宥めるような手のひらが髪を優しく辿る。無言の愛情の暗示。柔らかに背中を押すような許容。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-05 01:04
  • edit
……ジーク…
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-05 01:06
  • edit
ジョフロアはひとつ大きく息をつくと、やっと安心したように微笑んだ。その後、彼はもう振り返らなかった。吐息を震わせながら、脳内で景虎との悦楽に駆け昇っていく。乱れる髪も構わずに性欲の波に揺られながらジョフロアは身を捩った。仰け反ったうなじから覗く肌の熱さ。抑え切れぬ昂りを知らせる嗚咽に似た声。自分の声がそんな風に響くのさえジョフロアは知らなかった。渦巻く怒涛のような地と大気の振動は彼自身が発するものなのか。それとも彼を舞い上げるものか。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-05 01:07
  • edit
……あぁっ…!
ナレーター
  • by S
  • 2009-07-05 01:07
  • edit
ジョフロアの細い喉元から声が漏れたその瞬間、手を置いていたジークの胸から一羽の黒い大きな揚羽蝶(Swallowtail)の文様がふわりと浮かび上がる。すると、その蝶はジョフロアの目の前で大きな羽をひらひらとまるで何かを語りかける様に数度羽ばたいた。
ジーク
  • by S
  • 2009-07-05 01:08
  • edit
... .... .. ......... ...... .. ...... ....... ... ... ....
ナレーター
  • by S
  • 2009-07-05 01:08
  • edit
再び あの音律が目の前の揚羽蝶に向かってジークから発せられ、それが木霊する様に地下洞窟空間全体にゆっくり響き渡る。
ジーク
  • by S
  • 2009-07-05 01:08
  • edit
私は....今日の事を君に忘れて欲しくない。
ナレーター
  • by S
  • 2009-07-05 01:08
  • edit
悦楽の蝶はヴァンパイアたちの閨において相手のエクスタシーを貪る所為によって生まれ出で、相手に悦楽を与える代償として忘却を引き起こす。だが、今回ジークはそれをジョフロアにさせたくなかったのだ。結界を張られ行き場を失ったその揚羽蝶は、大きく一度羽ばたくと すぅとその場に消えた。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-05 01:11
  • edit
…あれが…貴方の言った悦楽の蝶ですか…?
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-05 01:11
  • edit
引いて行く身体の震えを感じながら、ジョフロアはそれを見つめていた。ガクガクと爆ぜるようだった震えが今は小刻みになり、甘い疲労の中で身体が溶けていく。おそるおそる濡れたはずの衣服に手をやってジョフロアは驚いた。乾いた手触りの中のそれは、肉欲の痕跡すら留めていない。訳も分からず見上げたジョフロアの瞳は、再びジークの見守るような瞳に出会った。またしても無言の肯定。蝶が舞った事から見て、ジョフロアの悦楽は本物だったのだろう。だが全てはジョフロアの身体で起った事ではなく、脳のみが起こした疑似体験だったようだ。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-05 01:12
  • edit
…ありがとうございます、ジーク
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-05 01:12
  • edit
ジョフロアは身をすり寄せるようにしてジークの膝に頭を預けた。たとえ脳が起こした幻影であっても、その悦楽は大きな幸福としてジョフロアの身に刻まれていたからだ。これはきっとエドリックが感じた幸福感と同じものに違いない。しかも、ジークはそれをジョフロアの記憶の中に留めておいてくれると言った。これから景虎に抱かれる時、彼はその行為の延長上にある人間としての快楽を再び思い描く事が出来る。それはジョフロアにとって、なによりの賜物だった。
ジーク
  • by S
  • 2009-07-05 01:13
  • edit
嬉しい? ジョフロア
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-05 01:14
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ええ、とても。…でも、貴方は満たされたのですか? もちろん貴方が愛した人の隙間を埋める事はできないとは思います。だけど、僕が貴方から頂いたものの何分の一かでも貴方に返す事が出来ていたらと思って…
ジーク
  • by S
  • 2009-07-05 01:14
  • edit
いい子だ...。
ナレーター
  • by S
  • 2009-07-05 01:18
  • edit
穏やかな声音にそう耳打ちされる。
ジーク
  • by S
  • 2009-07-05 01:25
  • edit
悦楽の蝶は私自身も満たされないと生まれない。 君の得た恍惚感はとても芳醇で極上の味だったよ。だが次は記憶ではなく、君に直接触れて悦楽の蝶を乱舞させてみたいものだね。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-05 01:27
  • edit
……
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-05 01:27
  • edit
景虎への想いの中で人として達する事を叶えてくれた恩人の言葉を否定も肯定もできなくて、ジョフロアはジークの膝に額を乗せたまま俯いた。黒髪から覗く首筋に微かに血が昇ってきたところをみると、意味が呑み込めた上での無言なのだろう。考えてみれば、恋人にしか見せないような姿を晒した相手だ。二人の間の境界は既に外れていた。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-05 01:28
  • edit
…貴方を満たすことが出来たのなら…良かった…
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-05 01:28
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彼はぽつりとそれだけを言った。次に望まれたら、行きつくところまで行くのかもしれない。それは愛する人を裏切る事だ。だから、もう一度同じ体験を自分からせがむ事はできない。それだから、もうこんな逢瀬はない。たぶん。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-05 01:30
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……ジーク…?
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-05 01:30
  • edit
ジョフロアは身を起こすと、ジークが背にしていたゴンドラの縁に手をかけた。ふわりと若草の香りのする黒髪がジークの鼻先をくすぐって、ジョフロアのキスがジークの頬に舞い降りる。ほんの少し唇が掠って、口角とも頬ともつかない場所に。親愛の情を込めて、けれど恋人とのキスではない場所。ジークがほんの少し顔の角度を変えれば、そのまま情熱の底に落ちていきそうな危うさの中で、ジークの手がジョフロアの髪を静かに伝い下りた。何かを思い出したような哀惜の光がジークの瞳に宿って、昔愛した黒髪の男と今腕の中にいる身体の境界を測るように、ゆっくりと指が一筋の髪を絡めとる。しかし、二人はそのまま動かず、暫くお互いの温かみを感じ取っていた。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-05 01:31
  • edit
…おいとまします、ジーク
ジーク
  • by S
  • 2009-07-05 01:31
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一人で帰れるね?
ナレーター
  • by S
  • 2009-07-05 01:32
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その時、ジークがジョフロアに向ける眼差しは、様々な寂念を長い間撥ね除け生きてきた者だけが知るうる領域の「情愛」だったのかもしれない。
ジーク
  • by S
  • 2009-07-05 01:33
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ジョフロア、もし君が....
ナレーター
  • by S
  • 2009-07-05 01:34
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既に立ち上がりかけていたジョフロアに向かって、ジークが何かを言いかけてやめた。この望みは満たされない。昔の想い人の面影を宿す目の前の青年が、自分とこれからの長い旅を分かち合う事など...例え、前世で結ばれた魂であったとしても、その魂はおそらく今頃、もう違う誰かを愛している。世の摂理とはそういうものだ、と悠久の時を駆け抜けた自分が一番良く知っているはずなのに....
ジーク
  • by S
  • 2009-07-05 01:34
  • edit
いや、なんでもない。...さよなら
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-05 01:37
  • edit
何故か離れがたくて、ジョフロアがジークの手を取ろうとした。けれど、ジョフロアは我に返って微笑んだ。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-05 01:37
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…ジーク、ありがとうございました。…でもなんだか、封印されていた何かが開きそうで怖いんです。ごめんなさい。僕は行きます…
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-05 01:38
  • edit
後ろ髪を引かれる思いを断ち切るようにジークに背を向ける。この静寂の中にずっと一緒にいたら、帰れなくなりそうな気がした。
ジョフロア
  • by Z
  • 2009-07-05 01:38
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…それから。ニコルとエドリックの事を、僕は出来る限り見守っていくつもりです
ジーク
  • by S
  • 2009-07-05 01:39
  • edit
....そうか。君も幸せにおなり、ジョフロア。
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-05 01:39
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俯いた後ろ姿をジークの声がそっと押す。振り返れば元へ戻れなくなるような気がして、背を向けたままでジョフロアは頷いた。そのままゴンドラのデッキを蹴って対岸に飛び移ると、直ぐに走り出す。本当は半身を引き千切られるような想いに心が悲鳴を上げていた。遥か遠い昔に、自分の身体がその理由を知っていたような気がしてならない。その一方で、理性が全力でそれを否定していた。
ジーク
  • by S
  • 2009-07-05 01:39
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……
ナレーター
  • by Z
  • 2009-07-05 01:40
  • edit
遠くなっていく足音が木霊となって地底湖の天蓋に響く。それが消えた後の静寂の中に、いつもと変わらない永遠がひたひたと忍び寄ってくる。やがて、その闇を悠久の沈黙が再び支配していった。
完結
  • by Z
  • 2009-07-05 01:51
  • edit
   ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

      闇に咲く悦楽の閨

          完

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