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不知夜月とJardin de ciel(空の庭)のコラボ頁です。

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† 闇に咲く悦楽の閨 第4章 3幕 †

ヴァンパイアと学園の共存の為に奔走してきたジョフロア。学園を守る事と仲間である事の狭間で折り合いを見つけはじめた景虎。距離を置いていた二人がいだき合った時、ヴァンパイア達を受け入れる心の手掛かりを見つける。一方、ニコルの元を訪れたジークは、自分の体験に基づいた重みのある言葉で若いヴァンパイアを諭した。

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Drama

ナレーター
  • by z
  • 2009-06-20 18:43
  • edit
コンコン

窓ガラスを叩く微かな音が景虎の部屋の静寂を破った。いつものようにジョフロアが窓辺に立つ。そしていつものように景虎が窓を開けに行くのも、二人にとって5日ぶりだった。
景虎
  • by t
  • 2009-06-20 18:44
  • edit
……
ナレーター
  • by t
  • 2009-06-20 18:44
  • edit
景虎は無言だった。窓を開けた途端、伸ばされた景虎の腕がジョフロアの腰を攫った。身のうちに閉じ込めるように彼を抱きしめた景虎の両腕。ジョフロアは言葉を口にする暇もなかったかもしれない。景虎の強引なくちづけが彼の唇を割る。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-20 18:44
  • edit
……暉…堂…
ナレーター
  • by z
  • 2009-06-20 18:45
  • edit
万事の最優先はお前だと言わんばかりの抱擁に、ジョフロアはやっと息を取り戻すように景虎の名を囁いた。小さな壁も溝も自分のちっぽけな杞憂も、景虎は、まるで存在しなかったかのように飛び越えてくる。
景虎
  • by t
  • 2009-06-20 18:46
  • edit
ジョフロア。お前、いったい何を探している?
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-20 18:46
  • edit
あなたに朗報を…。少しでも安心して共存できる要素があればと思ったんですが…
ナレーター
  • by z&t
  • 2009-06-20 18:47
  • edit
景虎の圧するような視線から逃れるように目を逸らして、ジョフロアが申し訳なさそうに言った。ヴァンパイアの安全性に関してジークに問い詰めたが、押し黙ったまま明言を避けられてしまっていた。恋人の横顔を見て、景虎は見つからなくて当然と言わんばかりに苦笑する。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-20 18:48
  • edit
彼ら自身が人を殺さぬように手加減しているという答えしか得られなくて…。結局、彼らを信じられるかられないかという問題のようだから…。でも、エドリックはニコルを信じたようです。多分、ニコルの糧は暫く彼が専属になるかと…。その分不特定な犠牲者は減るでしょう
ナレーター
  • by z
  • 2009-06-20 18:49
  • edit
景虎にいざなわれて後に従いながら、ジョフロアは独り言のように言った。勿論、エドリックへの健康管理と癒しの提供はするつもりだった。そして、ニコルが辛くなればいつでもその関係を終わらせる事が出来るように、忘却現象の事をエドリックに伝えるつもりもない。だが、その事は心の中に留めた。エドリックの話をすると、景虎が辛辣になる事をジョフロアは良く知っている。
景虎
  • by t
  • 2009-06-20 18:50
  • edit
は、恋は盲目というやつだな。干からびてから後悔しても遅いぞ
ナレーター
  • by t
  • 2009-06-20 18:50
  • edit
そう皮肉って、景虎は上着を椅子の背に投げ、ふと動きを止めた。
景虎
  • by t
  • 2009-06-20 18:51
  • edit
…手加減している? 誰が? そう言ったんだ
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-21 21:05
  • edit
ジークです。地下洞窟にある神殿のような場所で彼に会って来ました。彼らは殺傷力を持ちながらも搾取には意識して加減をしているとの事。相手のエクスタシーも彼らの糧になります。摂取の際は“悦楽の蝶”と呼ばれる幻影が現われ、相手へ強い快楽を与える代わりに、行為の忘却を引き起こすのだとか。餌になったと思われる生徒の呆けたような恍惚とした表情は、たぶん快楽と忘却によるものだと思います。…でもエドリックはもう少し…
ナレーター
  • by z&t
  • 2009-06-21 21:07
  • edit
そう言いかけて、ジョフロアは言葉を切った。エドリックの不思議な幸福感については未だよくわからない。もしかしたら蝶の乱舞と関係しているのかもしれない。ジョフロアの淡々と語る声を、景虎は眉を顰めて聞いていたがすっと手を伸ばした。大きなテーブルの向こう側に立ったジョフロアの頬に手を寄せる。撫でる様に動いた大きな手の平からパン!と鋭い音が響いた。
景虎
  • by t
  • 2009-06-21 21:08
  • edit
ジョフロア。好奇心は猫をも殺す、という言葉を知っているな
ナレーター
  • by
  • 2009-06-21 21:09
  • edit
きつい声と険しい表情で景虎が言った。たとえ狼男であろうと、得体の知れないやつらのねぐらまでたった独りで入り込んで無事に帰れるかどうか、確信があるはずがない。
景虎
  • by t
  • 2009-06-21 21:09
  • edit
いつかその好奇心で大事なものをなくしても、お前は後悔などしないのだろうな
ナレーター
  • by
  • 2009-06-21 21:10
  • edit
鋭い刃のような視線が真っ直ぐにジョフロアに向かっていた。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-22 22:58
  • edit
…だけど…守護する者の為に自分を顧みないあなたを、僕はどうやって守ればいいんです? …そんなの…不公平ですよ。僕はあなたの雛の中の一羽で居るなんて嫌だ
ナレーター
  • by z
  • 2009-06-22 22:59
  • edit
強い光のこもった翠の瞳が一瞬景虎を見つめ返した。けれど、直ぐにやるせなさそうに首を振り、大きく息をつく。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-22 22:59
  • edit
…でも…それであなたを失ってしまったら、後悔しますね。この痛みとともに肝に銘じます
ナレーター
  • by z&t
  • 2009-06-22 23:00
  • edit
自分の左頬に手を当てて、ジョフロアはその痛みの意味を探るようにそっと指を這わせた。なんとかヴァンパイアと景虎の和合を、と奔走してきたが、確かに一番軽んじていたのは自分自身の安全だったかもしれない。景虎の指が再び伸び、ほんの少し身構えたジョフロアの頬を、今度は宥めるように優しく撫でた。
景虎
  • by t
  • 2009-06-22 23:00
  • edit
信頼も心配もある。…自重しろ。いいな
ナレーター
  • by t
  • 2009-06-22 23:01
  • edit
静かな声と共に指が滑ってジョフロアの顎をすくうと引き寄せる。景虎は机に片手を着くと身を乗り出した。机越しのキスは柔らかく、きつい言葉を補うだけの情が十分にこもっていた。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-22 23:01
  • edit
……はい
ナレーター
  • by z&t
  • 2009-06-22 23:02
  • edit
温かさが胸に満ちてくる。それが熱い塊となってジョフロアを焦がした。何の益ももたらさなかった自分の行動だったが、少なくとも想いだけは十分に報われたのだ。愛されているという感覚に眩暈する。物言えずに立ち尽くしていたジョフロアの手を、景虎が導くように引いた。机を回ってきた恋人の腰を傍らに軽く抱きしめたまま、景虎は机の隅で閉じられていたノートパソコンの電源を入れた。立ち上がってくるわずかな時間の間にも交わされる優しいキス。やっと息をついたジョフロアに、景虎は一枚の写真を示した。例のアレクの姿の映ったセピア色の写真だった。
景虎
  • by t
  • 2009-06-24 01:55
  • edit
学園の創立当初の写真だ。100年以上前のものだ
ナレーター
  • by t
  • 2009-06-24 01:55
  • edit
江戸時代からすでに豪商だった暉堂は、明治に時代が変わってすぐに一族の人間を多数海外へ送り出した。当時の当主の兄弟や息子たち。多くの人間が世界へ散らばって行った。そんな話を淡々と景虎はジョフロアに話して聞かせた。
景虎
  • by t
  • 2009-06-24 21:58
  • edit
そんな中の誰かが…ここがやつらのねぐらに適当だと、何かの契約を交わして提供したのかと思っていたんだが…
ナレーター
  • by z
  • 2009-06-24 21:59
  • edit
景虎はジョフロアが眺めていた写真を受け取りながら付けくわえた。相変わらず自分の横に立った恋人の細い腰を抱いたまま、瞳はパソコンの蒼白い画面を滑る。
景虎
  • by t
  • 2009-06-24 21:59
  • edit
いいか、明治以前、ここは銅山だった。その前は謎だが古い地下道や…たぶん、俺も知らない洞窟などもいろいろあるだろう。銅が枯渇したかどうかは不明だが、いきなりこの学園を誰かがこの場所に建てた。…しかも、広大な敷地にヨーロッパ風の建物や文化を生かし、創立当時から海外からの留学生を積極的に受け入れている。これが何を意味するのか…
ナレーター
  • by t
  • 2009-06-24 21:59
  • edit
景虎は銅山の地図や学園の建物などの写真を何枚も画面に映し出した。今もその方針は変わらず、ここが日本であることを忘れてしまいそうなぐらい人種が入り乱れている。景虎は画面から視線をジョフロアに向け、その翠色の瞳をじっと見つめた。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-24 22:00
  • edit
…何でしょう? 僕も不自然さが気になるな…
景虎
  • by t
  • 2009-06-24 22:00
  • edit
つまり、この学園の創立の意味だ。あいつらのために…ここは作られたのかもしれない
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-24 22:01
  • edit
…なるほど。確かにそうかもしれません。実は僕も、沢山の外国人留学生を呼ぼうとしたのは、彼らを金髪の雛達の中に置いて隠してしまう為だと思っていました
ナレーター
  • by t&z
  • 2009-06-24 22:01
  • edit
有益な銅山をつぶし、異色な文化や建物や餌まで揃えて揃え、まるで誰かを迎え入れるために作られたような別世界。しかも、当時の日本の学校教育に、外国人留学生を呼べる程の質があると考える欧州人が居るとは思われない。それを強引に呼ぼうとする不自然さ。
景虎
  • by t
  • 2009-06-24 22:01
  • edit
…つまり、ここはやつらの家で、間借りしているのは俺たちの方ということかもしれん。暉堂は商人だ。利益のない投資はしない。…というわけではない。こういう連中はばかばかしい自己満足のために莫大な時間と費用をつぎ込んだりするもんだ
ナレーター
  • by t
  • 2009-06-24 22:02
  • edit
景虎は不愉快そうに写真を眺めると、指で人影を叩いた。アレクが言った暉堂の人間。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-24 22:04
  • edit
確かにそう考えると、地底湖に何故ゴンドラがあるのかも、寮の地下にあんな扉がある謎も解けますね。…でも、暉堂。いくら昔は生徒は餌であり、カムフラージュあっても、現在の正規の住人は生徒たちですよ。いつもあなたが言っている通りに。それは間違いないと思います
景虎
  • by t
  • 2009-06-24 22:04
  • edit
当然だ。学園は生徒のものだ。生徒の安全が最優先だ
ナレーター
  • by t
  • 2009-06-24 22:05
  • edit
きっぱりと言って、景虎はパソコンの電源を落とすとパタンと蓋をしめた。ゴンドラだの地底湖だの景虎には初耳だったがジークの懐まで入り込もうとしたジョフロアが何を見てきても不思議ではない。機械特有の小さな音もしなくなった部屋は静かな深夜の気配が二人を包み込む。景虎は寝室に続くドアを開けるとタイを外し、暗い部屋へ入っていった。
景虎
  • by t
  • 2009-06-24 22:05
  • edit
まあ何にしろ本当のことを知っているのはあの古狸だけだろう。…今度会って結論を出さねばならんな
ナレーター
  • by t
  • 2009-06-24 22:06
  • edit
着替えるためにワイシャツのボタンをはずしていた手を止めて、景虎が振り返る。
景虎
  • by t
  • 2009-06-24 22:06
  • edit
ただ、…気にはなっている。ここを作った奴は、どういうつもりだったのだろうな…
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-24 22:06
  • edit
宝石箱のようなジオラマを造って、大切な宝物を隠していたんじゃないかな。まだお伽噺や迷信が信じられていた時代です。彼らが学園に居ると知れれば、彼にも危険が及ぶ
ナレーター
  • by z
  • 2009-06-24 22:07
  • edit
ジョフロアの目が遠くを見つめた。少しだけ自分に重ねてしまったのかもしれない。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-24 22:07
  • edit
…ねえ、暉堂。もし僕が迫害を受けていたら、あなたはどうします?
景虎
  • by t
  • 2009-06-24 22:08
  • edit
つまらんことを聞くな
ナレーター
  • by t
  • 2009-06-24 22:09
  • edit
暗い部屋の入り口に立ったジョフロアの姿が逆光に立って朧げな影に見えた。景虎の声は少し憤ったように強かった。伸ばした腕はジョフロアの肩を掴まえると強引に引き寄せる。
景虎
  • by t
  • 2009-06-24 22:12
  • edit
どうする、だと?
ナレーター
  • by t
  • 2009-06-27 01:16
  • edit
浅黒く厚い胸にいきなり抱きすくめられてジョフロアが目を瞬いているうちに、景虎は半ば引きずるように部屋に引き込んだ相手の身体をベッドの上に押し倒した。景虎の黒い瞳は力をもってジョフロアを見つめていた。
景虎
  • by t
  • 2009-06-27 01:17
  • edit
守ってやる。俺の持てる力の全てで。…だから俺の側にいろ、離れるな
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-27 01:17
  • edit
…例えば…の話なのに…
ナレーター
  • by z
  • 2009-06-27 01:18
  • edit
もし明治時代に二人が居て自分が迫害されていたら景虎は学園の創始者と似た行動をとったかもしれない。同じ事を景虎も感じただろうか。ジョフロアはそれは口に出さずに、くちづけに応えていた。擁護の信念と強引さはきっと先祖譲りなのだろう。ジョフロアの身体を蹂躙し官能に燃え上がらせていく景虎の手が、そんな人狼の思考をも巻き込み、奪い去っていく。
景虎
  • by t
  • 2009-06-27 01:18
  • edit
…俺に似ているそうだ…。俺は、酷くて嫌な男だと罵られたが…
ナレーター
  • by t
  • 2009-06-27 01:21
  • edit
ふと、くちづけを交わしながら景虎が呟いた。口元に浮かんだ苦笑。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-27 01:22
  • edit
…それはきっと、情の裏返しですよ
景虎
  • by t
  • 2009-06-27 23:53
  • edit
情?…意味がよく分からんな
ナレーター
  • by z
  • 2009-06-27 23:54
  • edit
ジョフロア自身もそんな言葉を何度景虎にかけたか知れない。景虎が誰かを守る理由を見つけてしまったら、どんな事をしても守るのだ。それを知っているジョフロアは、その強い守護の信念を愛している。だからこそ彼が愛される男だという事も知っていた。くちづけの途中で囁いたジョフロアが、ふと思い出したように虚空を見上げた。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-27 23:55
  • edit
…それを言ったのは、アレクではないですか? 話の内容は聞こえなかったけど、談話室で話していたのはあなたとアレクだと分かりました。…なんだか会話のトーンが穏やかだったから…
ナレーター
  • by z
  • 2009-06-27 23:55
  • edit
景虎が他人と話す時の、いつもの撥ねつけるような冷たさが感じられなかったのだ。景虎はアレクを守る理由を見つけたのかもしれない。野生の勘をジョフロアは身に付けている。こと自分に関する事は鈍感であるのに、彼の情感の流れを察する能力は鋭い。そして、景虎もそんなジョフロアに取り立てて隠し事するのを無駄のように思っていた。深い翠の瞳は、いつも自分の奥底を暖かく見つめている。
景虎
  • by t
  • 2009-06-27 23:56
  • edit
…ジョフロア。あいつらのように永遠を生きるとは、どんな気分なのだろうな…
ナレーター
  • by t
  • 2009-06-27 23:58
  • edit
景虎の瞳がどこか遠くを見つめるように微かに凪いだ。想像もつかない、とふっと息を吐く。アレクが抱えていた問い。自分がどんな生き物で、なぜ生きているのか。答えが出るまでは生き抜いていくしかない。どんな命であろうと。
景虎
  • by t
  • 2009-06-27 23:59
  • edit
あいつは生きる答えを欲しがっている。だが、それを見い出してしまえば、生きることに憂いてしまわないのだろうか…
ナレーター
  • by t
  • 2009-06-28 00:00
  • edit
呟いた独り言のような言葉の意味を、ジョフロアは問わなかった。ただ、柔らかな笑みを返す。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-28 00:00
  • edit
それはあるかもしれませんね…
景虎
  • by t
  • 2009-06-28 00:01
  • edit
…その時は、俺が白木のくいを打ち込んでやってもいい。俺の生まれ変わりを探せ。そう言おうと思っていた
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-28 00:02
  • edit
でも、それって命を背負い込むことですよ。…あなたらしいな
ナレーター
  • by t
  • 2009-06-28 21:40
  • edit
景虎の黒い瞳の焦点が帰ってきて、少々呆れたようなそれでいて納得したようなジョフロアの表情を見下ろす。この学園の創立に尽力し自身も学生として在籍した写真の男は、ヴァンパイアたちに何を見出したのだろうか。景虎はその男から、人狼の恋人を持つ自分へと繋がる血を確かに感じていた。たとえ異質であろうと、自分にとって何よりも大切な命。今、それは目の前にある。
景虎
  • by t
  • 2009-06-28 21:41
  • edit
ジョフロア…。俺が守ってやる…
ナレーター
  • by t
  • 2009-06-28 21:41
  • edit
強く抱きしめた腕が緩むと景虎の唇ははだけたジョフロアの胸を走り、片腕は彼を抱きしめもう一方の指先はスラックスのジッパーを越えて素肌を辿っていく。微かに汗を帯びたジョフロアの身体が小さく竦む。景虎の手がやわらかく包み込み刺激すると恋人の身体は素直に応え始める。抱きしめ重なった身からはとうに熱くなった怒張する存在が景虎の下腹から渇きを訴える。
景虎
  • by t
  • 2009-06-28 21:41
  • edit
なのにお前…5日も俺のベッドを留守にして、しばらく自分の部屋で安眠できると思うなよ
ナレーター
  • by t
  • 2009-06-28 21:42
  • edit
少々焦れたようないつもの片頬を上げた笑みが景虎の表情にのぼった。怒りも渇きも、元は一点からの感情だ。景虎の注ぐ情の中心に居る。その事実に酔うような柔らかな笑みがジョフロアの頬を暖かく染める。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-28 21:42
  • edit
…はい…僕も……
ナレーター
  • by z
  • 2009-06-28 21:43
  • edit
そのあとの言葉は掻き消えた。5日ぶりの刺激に敏感な身体が暴走し始め、快楽が自分の意志さえ奪われた全身から中心へと駆け昇ってくる。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-28 21:43
  • edit
…暉堂…待…っ…
景虎
  • by
  • 2009-06-28 21:44
  • edit
我慢しろ。…よし、お前、狼の姿で地下牢へ行け
ナレーター
  • by t&z
  • 2009-06-28 21:44
  • edit
すかさず一言釘を刺した景虎が、すでに半裸に近いジョフロアの服を強引に剥ぐ。そして自分はすばやく立ち上がるとドアに向かった。性欲の絶頂で狼に変身してしまうジョフロア。雄々しいオス狼であるが故に体内に異質を受け入れる性交を拒み、自然の摂理に従ってメスを求める。精神のコントロールを失って暴れる雄狼を抑えられるのは地下牢の頑丈な鎖だけだ。そこが狼の鋭い牙から二人の愛を守れる唯一の場所だった。
景虎
  • by
  • 2009-06-28 21:45
  • edit
五日分は保たせろ。さっさと終わったら許さんぞ
ナレーター
  • by
  • 2009-06-28 21:45
  • edit
よほど根に持っているのか、振り返ってそんな言葉を置いた景虎の姿がすでにドアの向こうに消えている。ジョフロアは小さく息をつくと毛布を引き寄せた。ほんの一瞬、毛布の中で生き物がうごめいた気配がすると、そこから顔を覗かせたのは黒い大きな狼だった。リビングの窓を鼻先で押し開け、その隙間から夜の闇に駆け出した狼はすぐに影に溶けて消えていった。
ジーク
  • by s
  • 2009-06-29 22:32
  • edit
おかえり、ニコル。
ナレーター
  • by s
  • 2009-06-29 22:33
  • edit
寮の端の二人部屋。薄い月明かりに照らされて見慣れたシルエットが浮かび上がる。泣き疲れたのか、安心したのか既にGDはニコルのベットで小さな寝息をたてて眠っている。自分もそろそろ眠ろうと、うとうとしていた矢先の突然の来訪者。遠のきつつあった意識が再び呼び戻って来る。
ニコル
  • by s
  • 2009-06-29 22:33
  • edit
ジーク....何故、貴方もGDも私を眠りから揺り起こさなかったのですか?
ジーク
  • by s
  • 2009-06-29 22:34
  • edit
君が、そう望んだから。
ナレーター
  • by s
  • 2009-06-29 22:34
  • edit
簡潔な応え。この人は何をどこまで分かっているのだろう、と思わずにはいられない。そんな伏せ目がちなニコルを前に、唐突にしかし、ゆっくりとジークは自身の恋の話をし始めた。

ジーク個人のプライベートな話を聞くのはそれが初めてだった。恐らく横で眠るGDも知らないだろう。それまで、自ら望んでヴァンパイアになった訳ではないニコルにとって、ジークは同じヴァンパイアでありながら、何処か得体の知れない相手としての距離感を保(も)っていた。それが今回、そのジークから直接聞かされる『長い黒髪を持つ その男性との恋の話』が、何故か今の自分とエドリックに重なり胸が締め付けられる想いがした。
ジーク
  • by s
  • 2009-06-30 09:46
  • edit
とある人狼に言われたよ。君が恋する相手の人間に対して、身体的マイナス面を熟知しているかどうか、もし知らなければそれを必ず伝える様にと...ご丁寧に釘まで刺された
ニコル
  • by s
  • 2009-06-30 09:47
  • edit
とある人狼?...あぁ
ナレーター
  • by s
  • 2009-06-30 09:47
  • edit
誰の事を指しているかは明白だった。エドリックに一番近い人物、ジョフロアだ。
ジーク
  • by s
  • 2009-06-30 09:48
  • edit
私が愛したその男が病に倒れ死んだのは、ただ単に病に犯されたのか、それとも...私との恋が原因だったのか、未だ答は出ない。あの時の私にはそんな余裕すらなかった。だから、君には知っておいて欲しい
ナレーター
  • by s
  • 2009-06-30 09:48
  • edit
ジークは一層低く通る声音で静かに言葉を継いだ。
ジーク
  • by s
  • 2009-06-30 09:48
  • edit
もし君がこの先、エドリックとの恋において、彼の身体に異変を来す兆候がほんの少しでも現れた時...この恋からすぐに身を引く覚悟はあるのかと。それがなければ、これ以上先には決して進むな。皮肉な事だが『忘却を伴う恋』は相手に対して『いつでも振り出しに戻る事が出来る』のが利点だ。私の言っている事がわかるね?ニコル
ニコル
  • by s
  • 2009-06-30 21:20
  • edit
はい、わかります。.....という事は、私はエドリックに記憶の話は出来ない....んですか?
ジーク
  • by s
  • 2009-06-30 21:20
  • edit
判断は君がしろ。少なからず彼は何か気付いているだろうから

だが...忘却現象を起こさない方法を先日一つ思いついた。まだ試していないから、それが君とエドリックの場合に当てはまるかどうかは分からない。しかし、もしどうしても君がエドリックの記憶を消したくない時は、試してみる価値はあると私は思うよ。しかし、それによって又違う事象を生み出すのかもしれない。それは......神のみぞ知るというところだな。
ニコル
  • by s
  • 2009-06-30 21:22
  • edit
貴方は記憶の忘却についての話をされたのですか? その黒髪の方に...
ジーク
  • by s
  • 2009-06-30 21:23
  • edit
しなかった。というより、出来なかった。彼はその記憶があろうとなかろうと私を愛してくれたからね...いつも満たされていたよ私は。
どちらがより幸せで又、辛かったのかは今となっては知る由もないがね
ナレーター
  • by s
  • 2009-06-30 21:24
  • edit
人を好きになるな、と最初に言ったジークの言葉が今になってようやく理解出来る。最高の幸福感と引き換えに愛する人と同じ体験も記憶も共有出来ない恋。それでも笑って逝ったジークの想い人。自分はそこまで この恋に耐えうる事が出来るのだろうか。
ジーク
  • by s
  • 2009-07-01 08:23
  • edit
それから、間違ってもエドリックを仲間にはするな。たとえ彼が望んでもだ。まあ、恐らく君の薄い血では人一人仲間には出来ないだろうが。
ニコル
  • by s
  • 2009-07-01 08:24
  • edit
彼が望んでも?
ジーク
  • by s
  • 2009-07-01 08:24
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ああ、必ず後悔する
ナレーター
  • by s
  • 2009-07-01 08:24
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ジョフロアがあの時 言い放った『僕にはそれが貴方の自戒に思えてならない』という言葉が、ふとジークの脳裏を掠める。
ジーク
  • by s
  • 2009-07-01 08:25
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...100年前、ロシアの虐殺現場から一人生き残った幼児の君を連れ出し、GDが育て、成人したら人間の元に返すつもりだった。しかし、君に情愛を持ち始めていたGDにとって、君と離れる事は余程堪え難かったのだろう。あの時、君を仲間にしたいと懇願したGDに根負けした事を私は今でも後悔している。

...君はヴァンパイアには向かない
ナレーター
  • by s
  • 2009-07-01 08:25
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初めて明かされる自分のヴァンパイア誕生秘話。自分がジークとGDの二人にどうやって出会ったのか、そしていつヴァンパイアになったのか、朧げな記憶はあるがはっきり二人に問いただした事はなかった。何故かずっと聞いてはいけない気がしていたのだ。
ニコル
  • by s
  • 2009-07-01 08:26
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そうですか.....
ナレーター
  • by s
  • 2009-07-01 08:26
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こんな時、どんな言葉も出て来ないものだな、とニコルはひとりごちる。
ニコル
  • by s
  • 2009-07-01 21:38
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ジーク、貴方は これから又眠りに?
ジーク
  • by s
  • 2009-07-01 21:38
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ああ、少々疲れた
ニコル
  • by s
  • 2009-07-01 21:38
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今回の目覚めの目的は果たされたのですか?貴方が単なる気紛れに目覚めるはずがない
ナレーター
  • by s
  • 2009-07-01 21:39
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まっすぐに見つめ合う二つの視線。ニコルは今日初めて、ジークを真正面から見た様な気がした。険しいジークの表情が少し柔らぐ。
ジーク
  • by s
  • 2009-07-01 21:39
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君に その事を伝えに。....この先、GDや他の仲間が君と同じ様な想いをしたその時は....その事を君から伝えてやって欲しい、自身の体験を元に。
もう一つ、ここもいつまでも安全という訳ではない。身の危険を感じたのなら私の事は構わず、素早くその場を離れる事だ。色々と過去に遡って憶測する輩がいる様だが、恐らく真実とは言いがたいだろう。まぁ、時を経て それを知る者も私一人の今となっては、どうでもいい話だがね
ニコル
  • by s
  • 2009-07-01 21:40
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でも本当に、それだけの為に貴方が? もしかして、目覚めを促したというジョフロアの遠吠えと先程の貴方の恋の話には何か関係があるのではな....
ナレーター
  • by s
  • 2009-07-01 21:40
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そこまでだ、と長い人差し指をニコルの唇にそっと置く。
ジーク
  • by s
  • 2009-07-01 21:40
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ないよ。そういう事にしておいてくれ
ナレーター
  • by s
  • 2009-07-01 21:41
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くすり、と笑ったジークの薄い口の端には、普段見えない小さな牙歯が垣間見えた。
ニコル
  • by s
  • 2009-07-02 14:35
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わかりました。でも、一つ伺ってもいいですか? 何か引っ掛かるんです...私は眠っている間、貴方が泣いている夢を見ました。何故だろう...
ジーク
  • by s
  • 2009-07-02 14:35
  • edit
.........君の夢の中でなら....私でも泣くかもしれないな
ナレーター
  • by s
  • 2009-07-02 14:35
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そう小さく呟きながら去ろうとするジークの首筋に、ニコルの細くしなやかな手が伸びる
ニコル
  • by s
  • 2009-07-02 14:36
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貴方の血を私に、ジーク。
ジーク
  • by s
  • 2009-07-02 14:36
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よかろう
ナレーター
  • by s
  • 2009-07-02 14:36
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熱い抱擁の様な首筋へのキス。ドクドクと波打つ紅い血潮が二つの身体を行き交う。
ジーク
  • by s
  • 2009-07-02 22:45
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は...ぁ
ナレーター
  • by s
  • 2009-07-02 22:46
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仰け反るジークの白い首筋がほんのり桜色に染まり、喉元から微かな吐息が漏れた瞬間、ゆっくりとニコルが唇を離す。
ニコル
  • by s
  • 2009-07-02 22:46
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今まで....自分の中にある貴方の血を疎ましく思っていました。でも今は違う。極上です
ジーク
  • by s
  • 2009-07-02 22:47
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君に褒めて貰えて嬉しいよ。だが、いつのまにこんなキスを?
ニコル
  • by s
  • 2009-07-02 22:47
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100年も生きていれば それくらい....
ジーク
  • by s
  • 2009-07-02 22:47
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たかだか100年だ
ナレーター
  • by s
  • 2009-07-02 22:48
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そう言うジークの表情はニコルが今まで見た中で一番穏やかではなかったか。GDによろしくと言い残し、ゆっくりと扉を開け地下に向かって歩き出すと、静寂が彼の背中を追いかける様に広がっていった。

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