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不知夜月とJardin de ciel(空の庭)のコラボ頁です。

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† 闇に咲く悦楽の閨 第4章 2幕 †

帰寮したエドリックとニコル。二人の恋の行く末を案ずるジョフロア。その恋を巡って心を痛めるアレクの、エドリックに対する複雑な思いとニコルに打ち明ける本心。そして、景虎とアレクの微妙な歩み寄り。絆をキーワードにそれぞれの思いと願いが幾重にも交錯する。

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Drama

ナレーター
  • by z
  • 2009-05-24 22:38
  • edit
ヴァンパイア達だけが開閉できる寮の地下の扉を通って、エドリックはニコルと一緒に帰寮した。ニコルを彼の自室の前まで送り届けてくちづける。ニコルの頬を挟んだエドリックの両手がそのまま首筋に落ち、肩を通って腕を伝った。最後に指が絡んだところで、エドリックは感触を惜しむように目を閉じた。すでに彼の記憶の欠落は始まっている。ニコルを抱いた思い出はもうない。記憶よりも想いを繋げようと、エドリックの手はニコルの指先からなかなか離れようとしなかった。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-24 22:38
  • edit
また…明日…
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-24 22:39
  • edit
エドリックは、そう言ってニコルと別れた。だが、彼には“再び”は訪れない。すべてはリセットされて、新たに始まる。
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-24 22:39
  • edit
エドリックが自室に戻ると、ジョフロアが待ちかねたように窓から滑り込んできた。エドリックの帰室を物音で知ったであろうに、彼は気配さえ感じさせない。一方のエドリックもそんなジョフロアには慣れていた。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-24 22:40
  • edit
ジョフ。私はニコルを抱いた
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-24 22:40
  • edit
その言葉に自嘲が絡みついている。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-24 22:40
  • edit
洞窟から寮へ帰る道すがら、ずっとその言葉を繰り返してきた。そうやって記憶を繋いできたさ。だけど、もうその実感がない
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-24 22:41
  • edit
苛立って吐き捨てたその直後から、恍惚の表情を浮かべて目を閉じる。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-24 22:41
  • edit
焦りでいっぱいなのに、この幸福感はなんだ? 頭と心が分裂しそうだ!
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-24 22:42
  • edit
エディ…
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-24 22:42
  • edit
ジョフロアは思わずエドリックを抱きしめた。苦しげに顰められた眉に後悔が滲む。エドリックはこうして恋人に会うたびに混乱に陥るのだろうか。二人の愛を再開させるべきではなかったのかもしれない。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-25 11:50
  • edit
エディ、君はニコルを好きなんだろう?
エドリック
  • by z
  • 2009-05-25 11:51
  • edit
ああ、もちろん
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-25 11:51
  • edit
じゃあ、もう何も考えるな。幸せだけを感じていろ。君は全てを忘れていい。僕が君の代わりに覚えていてあげるから…
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-25 11:51
  • edit
ジョフロアはエドリックを落ち着かせるように肩をさすり、金髪にくちづけた。その時、ふと彼の嗅覚を掠めた血液の匂い。思わず身体を放して、首に掛かるエドリックの髪を掬った。案の定、首筋に穿たれた二つの牙の痕が小さく残っている。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-25 11:52
  • edit
エディ、無茶するなとあれほど言ったのに…。吸血以外でも二コルは満たされる筈だよ。精液でも、精気でも、彼らの糧になると聞いた。なにも血液をあげなくたって…
エドリック
  • by z
  • 2009-05-25 11:52
  • edit
…私は彼の喜ぶものを提供したかったんだ。…たぶん
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-25 11:52
  • edit
エドリックは首筋に手をやった。指先に感じるほんの少しの腫れと痛み。ヴァンパイアにしか付けられない筈の傷。彼にとっては、それこそがニコルとの愛の証しだ。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-25 11:53
  • edit
このままでいいよ、ジョフ。手当は不要だ
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-25 21:27
  • edit
何を言っているんだ。二人が満ち足りてこその恋だろう、エディ? 命を削ってしまったら元も子もない。とにかく、身体を診させてくれ。これは、君を彼の元へ連れていくための条件だったはずだ
エドリック
  • by z
  • 2009-05-25 21:27
  • edit
…わかったよ。心配症の人狼め!
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-25 21:28
  • edit
少々高圧的なジョフロアに、エドリックが溜め息まじりに言い捨てた。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-25 21:28
  • edit
わかったなら、まずシャワーを浴びるんだ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-25 21:29
  • edit
ジョフロアが鋭く睨んで、シャワールームを指差す。エドリックはそれに負けじと混ぜ返した。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-25 21:29
  • edit
シャワーの後は君が抱いてくれるのかい? …一晩に二人も悪くないな
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-25 21:30
  • edit
冗談は無しだ、エディ。こっちは真面目に心配してるんだから、早くシャワーを!
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-25 21:30
  • edit
エドリックは肩を竦めて、わざとらしく大きな溜め息をついた。たらたらと文句を言いながら、行動だけは親友の言う通りにする。しかし服を脱ぐ手が不意に止まって、今度は屈んで自分の身体を覗き込んだ。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-25 21:30
  • edit
わぉ♪ 脇腹と内股にもキスマークがある!
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-26 02:34
  • edit
それは、小さな牙の痕だろうに。…まったく
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-26 02:34
  • edit
エドリックを力づくでシャワールームに押し込むと、ジョフロアは頭を抱えた。これが毎晩続きでもしたら溜まったもんじゃない。しかもこのやんちゃ坊主ときたら、朝になったらこれをケロっと忘れてしまうわけだから。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-26 02:35
  • edit
…ジーク。貴方という人は…
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-26 02:35
  • edit
ジョフロアの脳裏に、質問に答えずにそっぽを向いていたジークの横顔が浮かんだ。これが僕を巻き込むという事か。エドリックの身体が心配なジョフロアは当然エドリックの身体の面倒を見、本人の代わりに記憶の一端を担う。しかもニコルと同じ人外の彼は、ニコルの立場も十分に理解する事ができる。ここまで適切な恋の後見人は居まい。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-26 02:36
  • edit
…してやられちゃったかな
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-26 02:36
  • edit
ジョフロアは窓から夜空を眺めた。裏手の森の丈高い木々からせり上がるような満天の星。いったい幾星霜の年月をジークは独りで過ごしてきたのだろう。ニコルがあんなになるまで愛したのがエドリックだとすれば、ジークとニコル達の間に熱い恋愛関係が存在するとは思われない。愛し子の恋の行く末を自分に託して、彼自身はどうしようというのか。ジョフロアの目の奥に貼りついているジークの寂しげな背中が語るものは、いったい何なのだろう。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-26 02:36
  • edit
シャワーを浴びてきたぞ。すべて君のお気に召すままに、ジョフロア医院長
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-26 02:39
  • edit
タオルで水気を拭き取っただけで何も身に着けないでいるエドリックが、憂えた瞳のジョフロアに声をかけた。その身体をジョフロアがバスローブで包み込む。エドリックは時々親友に子供扱いされるのを好んだ。いつも紳士然として高圧的な彼が、ジョフロアだけにはやっちゃ坊主扱いされる事を楽しんでいるような所がある。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-26 02:40
  • edit
ニコルとの逢瀬の後は、毎回ジョフロア先生の診察があるのかな?
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-26 15:44
  • edit
ああ、暫くは続けるよ。君の身体に変化が訪れないと僕が確信できるまではね
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-26 15:45
  • edit
首筋の大きめな傷以外、他の二か所は鋭い針がかすった程度のものだった。そして、エドリックから立ち昇る匂いは人間らしい健康体の男性そのものだ。癌細胞をも嗅ぎ分けるというイヌ科の嗅覚を持つジョフロアは、微かな変化も見逃さない。翠の瞳や銀の髪といったヴァンパイアに顕著な兆候も現われている様子は無かった。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-26 15:46
  • edit
で、私の剣には使った形跡はあったか?
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-26 15:47
  • edit
…エディ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-26 15:47
  • edit
語気を強め、視線で制止したジョフロアに、エドリックが意地悪そうに薄ら笑う。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-26 15:50
  • edit
君は医師志望だったよな。触診してみたらどうだ?
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-26 15:56
  • edit
ジョフロアの鋭い嗅覚は、最初から二人分の精液の匂いを捉えていた。それを敢えて口に出さずに、彼はきっぱりと言った。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-26 15:57
  • edit
馬鹿を言うな。それより首筋の手当てが先だ。どうせ明日も彼に会うんだろう? 治して置かなきゃ、君の身体が持たないからね
エドリック
  • by z
  • 2009-05-26 15:58
  • edit
…わかったよ。手当してくれ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-26 15:58
  • edit
エドリックはジョフロアの腕の中に身を預けた。放っておいたら情熱に任せて何をしでかすか分からない親友。その友を抱きとめるジョフロアの腕はいつも広い。柔らかな唇がエドリックの首筋を這った。狼の癒しの力で傷を手当てするためだ。過去、このジョフロアの力が銃弾を受けた景虎を死の淵から救った経緯もある。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-26 15:58
  • edit
…また、君に抱かれたくなってきたな
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-28 10:50
  • edit
エディ、今は傷の手当てが先だ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-28 10:50
  • edit
ジョフロアの舌がエドリックの傷口を宥め、癒していく。ほぼ同じ背丈。このあいだ背比べした時はジョフロアのほうがミリ単位で高かっただけで、まだ成長期の彼らはいつ逆転するか分からない。一度だけ、彼らは関係を持った事があった。性欲の絶頂で狼の姿に変身してしまうジョフロアをエドリックが誘ったのだ。君の雄々しいオスが人間の味を知らないまま終わるなんて嫌だ。親友だからそれを手助けしたいと口説かれた。ジョフロアはそれを受け入れ、エドリックは狼をその身体に受け入れた。まだジョフロアに新たな恋が始まる以前の事だ。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-28 10:51
  • edit
…さあ、手当は終わった
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-28 10:51
  • edit
ジョフロアが無情にも身体を離すと、エドリックは口を尖らせた。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-28 10:51
  • edit
…そうだったな。今はお互い別々の恋人が居る身だった
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-28 10:52
  • edit
ジョフロアはそれには答えずに、眩しげな瞳を上げて柔らかく微笑み返しただけだ。勘が鋭いエドリックは、ジョフロアが何も言わなくても親友の変化に気が付いていた。だが、相手が誰だとは一度も問うた事がない。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-28 10:53
  • edit
今のところ君の身体は心配ないようだ。でも、朝になったら、また心拍数と血圧をとりに来るよ。今は少し高いみたいだから
エドリック
  • by z
  • 2009-05-28 10:53
  • edit
あたりまえだろ。君の腕の中に居て私が昂揚しないわけがない
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-28 10:54
  • edit
エドリックの柔らかな、そして諦めたような自嘲が鮮やかな笑顔に変わった。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-28 10:54
  • edit
でも。どんな事があっても、私たちは親友だ。そうだな、ジョフ?
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-28 10:55
  • edit
ああ、もちろん。一生ものの親友だよ。エディ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-28 10:56
  • edit
そう言ってジョフロアが消えたバルコニーの窓に、エドリックは歩み寄った。そのまま寮の裏手の森へ視線を移す。あの森の奥の洞穴からニコルに会いに行ったのだ。あの時すでに覚悟は決まっていた筈だ。そして今は親友も見守っていてくれている。銀色に光る星々を見上げて、ふと彼が思い出したもう一つの言葉。上着の内ポケット。この言葉も帰寮の道すがら何度も繰り返して繋げた記憶だった。エドリックは部屋の奥へ駈け戻り、脱ぎ捨てられた上着から銀のイヤリングを取り出した。たぶんニコルのものだ。彼は机から自家の紋章が刻印された便箋を出してペンを走らせる。大胆で美しい筆記体が紙の上で大きく踊った。
エドリックの書いた文字
  • by z
  • 2009-05-28 10:57
  • edit
I'm pretty sure I met Nic and I mated with him. ...MAYBE(ニコルに会った。彼を抱いた。…たぶん)
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-28 10:57
  • edit
今記憶に残っている事は、たったそれだけだった。あやふやなほうは、何度も言葉を繰り返して繋いだ事柄に過ぎない。それでも彼にとって、特別な意味があった。何故なら、彼はニコルに会いに行った時の気持ちだけは鮮明に覚えているからだ。エドリックはその下に日付と自分のサインを書き入れ、イヤリングとともに封筒に入れると机の目立つところに置いた。こうしておけば明日すべてを忘れてしまっていても、今宵何があったのかを知る事ができる。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-28 10:58
  • edit
細かい事に拘るな、エドリック。私はニコルを愛し、ジョフを信じている。それ以外、気にする事など何がある?
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-28 10:58
  • edit
エドリックは自分自身にそう言い聞かせて、他のすべてを一笑に付した。部屋着に着替えて外に飛び出す。談話室の大暖炉の火が見たくなったのだ。あそこで炎と爆ぜる薪を見ていると、彼は祖国の屋敷に居るような感覚になった。気持ちが落ち着くのだ。躍動的な焔と身体を炙る熱が彼を奮い立たせ、未来に立ち向かう勇気を与えてくれるような気がした。
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-29 16:34
  • edit
夜の12時近かった。エドリックが談話室へと続く螺旋階段を下りていくと、暖炉の前に先客があった。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-29 16:34
  • edit
やあ、アレク。君もその炎を見るのが好きなのか?
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-29 16:34
  • edit
暖炉の前に座り込んで、じっと焔を見つめている薄い肩。そういえば、先ほどニコルを部屋まで送り届けた時、二人部屋の筈の彼らの部屋に誰かいる様子はなかった。上から降ってきた声にアレクは振り向いた。螺旋階段の手すりから身を乗り出して、エドリックがこちらを見下ろしている。流れる金髪がかかって口元は見えないが、瞳が精気に溢れてキラキラ輝いているのが見えた。ここ数日間、遠くから見かけた彼とずいぶん様子が変わっている。
アレク
  • by s
  • 2009-05-29 16:35
  • edit
.........そうだけど。それが何?
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-29 16:35
  • edit
上目遣いで螺旋階段の方をアレクは一瞥しただけで、すぐに暖炉の方に向き直った。今、一番見たくない顔だ。その様子をエドリックは気にも止めず悠然とした足取りで階段を降り、暖炉の前のソファにゆったりと腰掛ける。
アレク
  • by s
  • 2009-05-29 16:35
  • edit
ニコルはいないよ。ずっと。知ってると思うけど。
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-29 16:36
  • edit
少し突き放すような声音に、エドリックは自分が招かれざる客である事を察した。だが言葉の内容から、ニコルこそがアレクの待ち人である事を悟る。エドリックは努めて声を抑えて言った。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-29 16:37
  • edit
彼は今部屋にいるよ、アレク。私がさっき送り届けた
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-29 16:37
  • edit
横顔を炎のオレンジ色に縁取られて、濃い睫毛の影を落としていたアレクの瞳。それが、ほんの少し驚きに見開かれた。息遣いさえを隠すようにエドリックから更に顔をそむける。エドリックの気遣うような視線がそれを追った。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-29 16:37
  • edit
君の家族を少し借りていた。…すまなかったな
アレク
  • by s
  • 2009-05-30 11:48
  • edit
僕、部屋に帰らなきゃ...。
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-30 11:48
  • edit
待ち人が帰ってきた事を、他の人物から聞くとは思いも寄らなかったのだろう。その狼狽を隠す様に視線は焔に向けたままアレクは立ち上がりエドリックの前を通り過ぎようとした。が、飲み込めきれなかった言葉がおもわず口からついでる。
アレク
  • by s
  • 2009-05-30 11:49
  • edit
今だけだ。ニコルを君に貸すのは
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-30 11:49
  • edit
小さな躯から立ち上る焔と共に迫りくる視線がエドリックに向けられる。更に震える唇から地響きのように絞り出す低い声音。
アレク
  • by s
  • 2009-05-30 11:50
  • edit
ニコルを悲しませたら、僕が許さない。
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-30 11:50
  • edit
きり、とその紅い唇が引き結ばれ、殺気さえ身に纏いつつ殆ど人けのない広い談話室をドアの方に向かって横切る。恐らく憎悪を向ける相手が間違っている事は本人が一番理解していた。だから、いなくなったニコルの居場所を知りながらも、彼の眠りを自らは解きに行かなかったのだ。それでもアレクの胸の内には、待ち人の愛する相手が、もう自分ではなくなった事を認識したくない、という気持ちがどこかにあった。が、ニコルの眠りを解いたというエドリックの煌々とした姿を実際目の当たりにすると、身の内から吹き出る怒りを抑え切れなかった。景虎の「感情をコントロールする事を覚えろ」という言葉が一瞬アレクの脳裏を掠る。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-30 11:55
  • edit
承知した。彼を預かったからには全力を尽くす
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-30 16:33
  • edit
ヴァンパイアの前に人間などひとたまりもない。アレクの瞳に籠る熱がそう語っていた。同時に命がけの恋も上等だと不敵に笑う。エドリックの騎士魂と反骨精神が、熾火のように滾って身体を熱くした。だが、彼には弱味もあった。それは目の前の相手に頭を下げるしかない。エドリックは頭を切り替えて、アレクに向きなおった。それは、直情的な彼が、この恋をいかに真剣に考えているのか物語っていた。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-30 16:34
  • edit
だけどアレク、お願いがある。私はどうやらニコルとの愛の記憶を失うらしい。記憶がないが故に私の手が及ばない事もあるだろう。その時は、どうかニコルの力になってやってくれまいか? それが出来るのは君しかいないんだ。頼む
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-30 16:34
  • edit
自分にはジョフロアがいる。ニコルにもいたわってくれる友が必要だろう。エドリックは騎士らしく最敬礼した。同じ英国出身。誇り高い大貴族が簡単に頭など下げない事をアレクも知っていた。
アレク
  • by s
  • 2009-05-31 01:02
  • edit
...わかった。
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-31 01:03
  • edit
真摯な態度で自分に深々と頭を下げるエドリックを見て、アレクの火照った熱が急激に下がり始めた。それは自分と同様の意識を有する相手への心情からなのか。やや先程よりは穏やかな口調でこう言った。
アレク
  • by s
  • 2009-05-31 01:03
  • edit
君達が愛の記憶を失うのは僕も知ってる。かなり辛い恋になる事もおおよその察しはつく。それにどうしても君が耐え切れなくなったら、僕じゃなくジークにでも聞いてみたらいい。但し、解決出来る保証はないけどね。
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-31 01:03
  • edit
ほんの少し譲歩の翳りが見えるアレクの言葉だった。それは、いつも彼の心の片隅にある「ニコルを仲間に加えた責任感」に因るものなのか、ニコルへの愛情なのか、それともその両方なのか.....この先、ニコルがエドリックとの恋において、もし僅かな期間でも幸せを掴むなら、この自分の想いの置き処も果たして変化するのだろうか。暖炉の炎からカタンと薪の崩れる音がして、夜の静寂とアレクの思惑の輪を瞬時に破る。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-31 01:04
  • edit
快諾してくれて嬉しいよ、アレク。そして、鍵はジークが握っているらしい事も分かった。でも、考え込むのは趣味じゃないし、超える山が大きいほど熱くなる性分らしい。私は大丈夫だ。とにかく君の手に返す時まで、彼を大切にする
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-31 01:05
  • edit
たぶん自分の生涯を通して彼らに係わるだろう。エドリックにはそんな予感があった。ニコルを目覚めさせた時、娶ると言った彼の言葉はあながち大げさではない。但し、これも自分の生ある限りの事だ。時を越えて生きる彼らに自分の手が及ぶのはほんの一瞬に過ぎない。いずれニコルはアレクの元へ帰る。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-31 01:06
  • edit
…ああ、それから。押しかけ婿ではあるが、君たちは家族同然だ。我が公爵家の領内で君たちを守ることも厭わない。必要なら私の次に家督を継ぐ者にもそう申し伝えよう。何かの時はそれを思い出してくれ、いいね?
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-31 01:06
  • edit
そう言ってニヤリと微笑んだ時には、すでに普段の彼らしい尊大で威丈高な態度に戻っていた。自分の言いたい事だけを押しつけて、相手の返事すら待っていない。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-31 01:07
  • edit
さてと。無駄に君を引き留めてしまったな。一刻も早く部屋に戻りたいのだろう?
ナレーター
  • by T
  • 2009-05-31 13:32
  • edit
深夜の談話室に響く二人の声。静まり返った廊下や吹き抜けの階段にも微かに流れ消えていく。その声に足を止めた人影があった。帰室途中の景虎が談話室へ向かったことにそれほど意味はない。ただ、ヴァンパイア達の動向が気になっていただけだ。
景虎
  • by T
  • 2009-05-31 13:33
  • edit
……
ナレーター
  • by T
  • 2009-05-31 13:34
  • edit
さまざまな思惑と感情が交錯している。それは誰だろうと同じだ。ニコルとエドリックの関係やアレクの衰弱の理由。その側面を二人の会話から推し量り、景虎は暗い廊下で黙って考え込んでいた。
景虎
  • by T
  • 2009-05-31 13:34
  • edit
話が弾んでいるようだな。…時間を考えろ、時計も読めんのか
ナレーター
  • by T
  • 2009-05-31 13:34
  • edit
談話室のアーチ型の入り口から、一歩踏み込み灯りの中に現れた景虎が険しい声で言った。
エドリック
  • by Z
  • 2009-05-31 18:06
  • edit
これはどうも、理事長代理。あいにく私の体内時計は、常にグリニッジ標準時なんでね。…ところで、君の言う弾んでいる話とやらは面白かったかい? 盗み聞きが趣味とはな
ナレーター
  • by Z
  • 2009-05-31 18:06
  • edit
エドリックは景虎をちらと見やって、あからさまに嫌な顔をした。この二人は水と油で反りが合わない。
景虎
  • by T
  • 2009-05-31 18:07
  • edit
聞かれたくない話なら部屋でしろ。露出狂とは貴族らしい性癖だ。…GD
ナレーター
  • by T
  • 2009-05-31 18:08
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視線も向けず一言だけ言い捨てると、景虎はGDに向かった。大きな手がすっと彼の左の胸を服の上から押さえた。軽く淡い仕草。
景虎
  • by T
  • 2009-05-31 18:08
  • edit
どうだ?
アレク
  • by S
  • 2009-05-31 23:58
  • edit
あっ、景....き、き・ど・う君....うん、もう怪我んトコは治ったから。ほらっ。それよりニコルが帰ってきた!僕、部屋に戻らなきゃ。
ナレータ-
  • by S
  • 2009-05-31 23:59
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そこにある険悪な雰囲気など全く構わず、似合わないガッツポーズをして見せるアレク。彼の胸に置かれた浅黒い大きな手からは、本人の口から発する悪態の言葉とは裏腹な暖かさが伝わって来る。
アレク
  • by S
  • 2009-05-31 23:59
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心配してくれてありがとう。
ナレータ-
  • by S
  • 2009-05-31 23:59
  • edit
胸に置かれた手をアレクはそっと両手で掴み身体から離す。
景虎
  • by T
  • 2009-06-01 00:00
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そうか
ナレータ-
  • by T
  • 2009-06-01 00:00
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頷いた眼がまっすぐに、GDの大きな翠の瞳を見つめた。拒絶も嫌悪の色も滲んでいない黒い瞳には穏やかな力が満ちていた。景虎は執務室でのGDを思い出していた。仲間のために感情のままに彼から血を盗んだヴァンパイア。その仲間を奪っていこうとするエドリックを前にして、決して冷静でいられない筈だ。廊下にもれ聞こえた声が孕んでいた殺気じみた怒り。それでもGDは何の手出しもしなかった。意外だった。景虎が胸の中だけで吐いた、小さな感嘆の息。それが瞳に浮かんでいたかもしれない。
アレク
  • by S
  • 2009-06-01 00:01
  • edit
ねぇ、僕どんな顔してる?変な顔してない?...こんな事、君に聞く方が可笑しいか....
ナレータ-
  • by S
  • 2009-06-01 00:01
  • edit
今にも駆け出しそうになる捻った身体の顔だけが景虎の方を向いて笑い綻んだ。恐らく学園一無愛想な男に投げかける質問ではない。それでも、景虎の優しさが見せかけのそれではない事を知っている数少ない人物に、自分がなりかけている自覚はアレクにはない。
アレク
  • by S
  • 2009-06-01 00:02
  • edit
僕、行くね。おやすみなさい。
エドリック
  • by Z
  • 2009-06-01 15:29
  • edit
おやすみ、アレク。良い夢を。ニコルには、今夜は必ず私の夢を見ろと言づけを
ナレータ-
  • by Z
  • 2009-06-01 15:30
  • edit
そう言って、気障ったらしくウインクをする。だが、アレクの方に顔を向けたまま、その目はすぐに景虎へと流れた。二人の間に流れる微妙な雰囲気をエドリックも察していた。今のアレクの問いに景虎が何と答えるのか、興味津々といった風情で薄ら笑いを浮かべている。
アレク
  • by S
  • 2009-06-01 15:31
  • edit
(どこまでも いけすかないヤローだ...) 

そ~いう事は自分で言えば?エドリック。僕は君のメッセンジャーじゃない
エドリック
  • by Z
  • 2009-06-01 15:32
  • edit
フレイからジョフに伝わった君からニコルへの伝言のメッセンジャー役は果たしたのに? …もっとも伝え主の名前は言わずに、私が代役を務めたけどな
ナレータ-
  • by Z
  • 2009-06-01 15:33
  • edit
ジョフロアのポケットの中で溶けてしまっていたチョコレートは預からなかったが、その伝言の事はエドリックも聞いていた。伝言の内容が途中変わってしまうのは、なにもゲームの時だけではない。エドリック自身の伝言をアレクが変えて伝えようとアレクの勝手だ。
景虎
  • by T
  • 2009-06-01 15:34
  • edit
役立たずの自覚が足りないようだな、バイロン。いい加減黙れ、浮かれ野郎め
ナレータ-
  • by T
  • 2009-06-01 15:34
  • edit
景虎は不快そうにエドリックを斜めに睨むと、アレクに道を譲り身を除けた。大きな身体が視界からエドリックの姿を隠し、アレクへ行き先を示した。
景虎
  • by T
  • 2009-06-01 15:35
  • edit
相手にするな。…腹黒なわりには笑顔は悪くない。ではな
エドリック
  • by Z
  • 2009-06-01 23:19
  • edit
余計な御世話だ、学園君主。…ああ、それから。露出狂と言わずに公明正大と言ってくれ
ナレータ-
  • by Z
  • 2009-06-01 23:19
  • edit
身を引いて景虎の表情をちらっと見ながら、人差し指を立ててチッチッと横に振る。エドリックにも、これ以上二人の会話を邪魔する気は更々なかった。身を翻すと大股で螺旋階段を駆け登っていく。
アレク
  • by S
  • 2009-06-01 23:20
  • edit
褒めるか けなすか どっちかにしてくんない?両方当たってるけど。
ナレータ-
  • by S
  • 2009-06-01 23:21
  • edit
毒舌なのはお互い様と笑いながら、景虎の譲った空間をすり抜ける。だが、ドアに手を掛けたところでアレクは立ち止まった。
アレク
  • by S
  • 2009-06-01 23:21
  • edit
意外に甘かった。君の血。僕の好みだったよ。でも、もう二度と君の同意なしに血は取らない。それだけ言っとく。
ナレータ-
  • by S
  • 2009-06-01 23:22
  • edit
景虎の返事は聞かず、ドアを開け、走り去る靴音だけが深夜の建物に反響した。
景虎
  • by T
  • 2009-06-01 23:25
  • edit
…甘い?
ナレータ-
  • by T
  • 2009-06-01 23:26
  • edit
それは褒めているのか、けなしているのか。景虎はほんの少し考え込んで後姿を見送ったがすぐにきびすを返した。ゆっくり螺旋階段を登る。3階まで登りきって、彼はふと足を止めた。気配を感じたのだ。洩れた明かりの作る濃い影の中に溶け込んだシルエット。
景虎
  • by T
  • 2009-06-01 23:26
  • edit
過保護もいい加減にするんだな。あいつの自己顕示には辟易する
ナレータ-
  • by T
  • 2009-06-01 23:26
  • edit
腕組みをしたまま壁にもたれかかったジョフロアが彼を見つめていた。景虎は驚きもしなかった。エドリックの身に危険が及ぶかもしれない場面にジョフロアが居合わせない筈がない。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-03 00:05
  • edit
……エドリックの…ことですか?
ナレーター
  • by z
  • 2009-06-03 00:06
  • edit
ジョフロアは何かを思い巡らすように一瞬伏せた瞳を再び上げた。年がら年中エドリックの護衛めいた事をしているわけではない。但し、一度係わった以上、何か起きたら飛び出すつもりだった。だが立ち聞きの趣味はない。両方の立ち位置を満たす距離がこの場所だった。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-03 00:06
  • edit
…彼があなたに失礼な事を? すみません
景虎
  • by t
  • 2009-06-03 00:07
  • edit
あいつならどんな目に遭おうと自業自得だと納得せざるを得ないだろうな
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-03 00:07
  • edit
煽ってましたか…。それはたぶん、軽いジャブで戯れ合っているつもりの彼なりの仲間意識だと思います。でも、かなり誤解されやすいタイプではあるな。あなたもそうだけど…
ナレーター
  • by z
  • 2009-06-03 00:08
  • edit
そう言いながら、ジョフロアは居心地悪そうに身じろぎした。ヴァンパイアの事で意見が食い違い、物別れになった夜以来、景虎とは顔を合わせていない。
景虎
  • by t
  • 2009-06-03 00:10
  • edit
バイロンの心理などに興味はない
ナレーター
  • by t
  • 2009-06-03 00:10
  • edit
あるのはヴァンパイアの方だ。アレクが我慢できたところをみるとジョフロアの意見も的を射ているのだろう。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-03 00:11
  • edit
確かに。あなたの焦点は彼らでしたね
ナレーター
  • by z
  • 2009-06-03 00:11
  • edit
ここ数日、彼はヴァンパイア達の功罪の“功”に当たる部分を探して奔走したが、景虎を安心させるような確固たる要素は掴めなかった。それを見つけない限り、いつもどおりの会話は望むべくもない。ジョフロアは視線を落とすと景虎に背を向けた。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-03 00:11
  • edit
次に会う時までに必ず何か探しておきます
景虎
  • by t
  • 2009-06-03 00:12
  • edit
余計なことをするな。お前は一生徒なんだ。そこから逸脱するな
ナレーター
  • by t
  • 2009-06-03 00:12
  • edit
低い声がジョフロアの背に飛んだ。ジョフロアの言動が景虎の気を荒立てる。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-03 00:12
  • edit
でも…。その前に、僕はあなたの…
ナレーター
  • by z
  • 2009-06-03 00:16
  • edit
全てを一人で背負い込み、手助けする事さえ望まない景虎の守護の情。鋭い制止の言葉に、掠れた声がジョフロアの唇にのぼった。それをぐっと噛みしめて、輝く翠色の瞳だけが景虎をじっと見つめ返す。
景虎
  • by t
  • 2009-06-03 00:16
  • edit
…話の続きが必要なら部屋でだ。…5分後に
ナレーター
  • by t
  • 2009-06-03 00:17
  • edit
ジョフロアの様子を察してか、溜め息をひとつつくと景虎はそう言った。ジョフロアが頑固なことは彼も百も承知だった。声を荒げていてはエドリックに文句は言えまい、とうに深夜だ。そしてジョフロアに一瞥を投げかけるとそれ以上何も言わず景虎は立ち去って行った。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-06-03 00:17
  • edit
…暉堂
ナレーター
  • by z
  • 2009-06-03 00:17
  • edit
ジョフロアは胸に熱いものを感じて俯いた。力のある視線が、来い、と明確に語っていた。いつもの強引な視線。けれど、いつまでも慣れることはない。その度に身体の奥底まで抉るように掻っ攫っていく。ジョフロアは目を瞑って暫くその感覚を懐かしんでいたが、やがて滑るように闇に消えた。
アレク
  • Aesthetic Authors 〔管理人〕  
  • 2009-06-03 15:04
ハァ、ハァ..
ナレーター
  • by s
  • 2009-06-03 14:53
  • edit
夜中にも関わらず談話室から長い廊下を息が切れる程走ってアレクは自室の前に辿り着いた。ドアノブに手を掛けながら息を整える。扉を押し開くとほっそりと佇む見慣れた後ろ姿が目に映った。涙が流れる。後から後から。朧げなその影がゆっくりとこちらに近づいて来る。
アレク
  • by s
  • 2009-06-03 14:54
  • edit
....
ナレーター
  • by s
  • 2009-06-03 14:54
  • edit
言葉さえ出ない。絶え間なく流れる涙が頬を伝う。たった4日。4日この姿を見なかっただけで、自分はこんなにも脆くなるものかと溢れる水分は音もなく語る。その時、近づく影から細い手が伸び小さな身体を抱き寄せた。
ニコル
  • by s
  • 2009-06-03 14:54
  • edit
ごめん。
アレク
  • by s
  • 2009-06-03 14:55
  • edit
..さっき、談話室でエドリックに...
ニコル
  • by s
  • 2009-06-03 14:55
  • edit
うん....
アレク
  • by s
  • 2009-06-03 14:56
  • edit
違う、こんな事言いたかったんじゃない。もう君が誰を好きでも構わない。だけど、僕を置いていかないで、もう二度と。君がいない世界で僕を一人にしないで...お願い。
ニコル
  • by s
  • 2009-06-03 14:56
  • edit
I will promise you. (約束する)
ナレーター
  • by s
  • 2009-06-03 14:57
  • edit
抱き寄せた小さな肩が小刻みに震えている。今でも忘れない。アレクの背丈を追い越した遠いあの夏の日、遮る物がなくなった視界がとても広く感じた事。彼の寄せる愛情がとても深い事。そして、立場の逆転はこれからの長い旅の始まりだった事。ほのかに部屋に薫る彼の芳香が酷く懐かしく感じる。
ニコル
  • by s
  • 2009-06-03 14:57
  • edit
(私は傲慢かもしれないな)
ナレーター
  • by s
  • 2009-06-03 14:57
  • edit
エドリックの溢れる愛を手にした今でも、それは変わらずここにある。自分の存在自体がアレクの生を繋ぎ止め、又苦しめてもいる事を知っている。どうしようもない時の狭間にある二人の絆。ジークという仲間の存在があるにも関わらず、アレクは「一人にしないで」と言った。その言葉の意味は同じ立場でないと分からない。

その夜、ニコルは子供の様に泣きじゃくる小さな身体をいつまでも抱きしめた。左手の中指にはサイズの合わない金の指輪。ふと見上げると窓の隙間から刃で切り刻んだ様な上弦の月が見えた。

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