忍者ブログ
不知夜月とJardin de ciel(空の庭)のコラボ頁です。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

† 闇に咲く悦楽の閨 第4章 1幕 †

エドリックはジョフロアの案内でニコルの元へ向かった。何か大事なことを忘れてしまった気がする。記憶を失った事だけは認識していても、その時何があったのかを覚えていないエドリックが取った行動とは。二人の愛が再開する。(濡れ場あり)

拍手

PR

Drama

ナレーター
  • by z
  • 2009-05-10 17:34
  • edit
ダイニングホールを出て、ジョフロアがひとつだけ条件を出した。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-10 17:35
  • edit
君を二コルの元に連れていくけど、その後に必ず健康状態をチェックさせて欲しいんだ。ジークは自分たちの危険性について、言葉を濁した。とにかく僕が一番心配なのは君の身の安全だ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-10 17:38
  • edit
エドリックを見つめてそう言ったジョフロアの真摯な瞳が、まるで縋るようだった。

自室に何かを取りに行ったジョフロアをロビーで待つ間、エドリックはソファに身を預けて目を瞑っていた。何故ニコルに会いに行くのか。その意味さえ自分は分かっていない。ただ何かに突き動かされているとしか言いようがないのだ。ニコルの人となりを知っているとはいえ、得体のしれない不安がエドリックを押し包む。彼は窓から見える空を睨みつけた。親友は人狼、そしてこれから彼を待つのはヴァンパイア。彼と係わる人にあらざるものたちの存在。いくらファンタジーの宝庫である英国出身とはいえ、こんな状況に陥る人間はそうざらにはいまい。唇の端に薄く自嘲が浮かんだ時、懐中電灯を手に持ったジョフロアが現われた。どこから見ても、いや普通の人間以上に紳士そのものの親友を見つめて、杞憂を吹き払うような笑顔がエドリックに浮かぶ。
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-10 17:38
  • edit
光耀寮の裏手のドアから森に出た二人の横顔を、柔らかな朝の木漏れ日が照らしていた。先に森の奥の奇岩に軽やかに飛び乗って、ジョフロアがエドリックに手を差し出した。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-10 17:41
  • edit
この岩の上に地下洞窟への入口があるんだ、エディ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-10 17:41
  • edit
木立が回りを囲み、巨木の影になったそこは、人目を阻むように幽遠な佇まいを見せていた。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-10 17:41
  • edit
こんなところに目をつけるなんて、さすが人狼だな
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-10 17:42
  • edit
エドリックが呆れたように首を振って、ジョフロアの手につかまる。長い脚をかけ、弾みを付けて登った直ぐ足元に真っ黒な風穴が口を開けていた。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-10 17:43
  • edit
本当は寮の地下にも入口があるんだけど、その扉はヴァンパイア達にしか開ける事ができないんだ。気を付けて、エディ。暗いし、入口はとても狭い
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-10 17:43
  • edit
ジョフロアは先に中に入ると、ライトをつけ、後から降りてくるエドリックの足を自分の肩にかけさせた。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-10 17:44
  • edit
いいかい、エディ。飛び降りる高さは僕の肩から地面までだ。下は広いから安心して飛べ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-10 17:44
  • edit
居合い抜刀や馬術をたしなむエドリックは運動神経も良い。ジョフロアの言うとおりに難なく飛び降りて来て、ライトの光の及ぶ範囲の暗闇に目を凝らした。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-10 17:45
  • edit
学園に地下道があるのは知ってたけど、こんなところもあるのか
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-10 17:46
  • edit
傍らを湧水が流れる空洞が奥へと不気味に続いている。二人は前日にジョフロアが潜入した道を辿った。水晶群が鋭利な先端を天に向け、来る者を拒む水晶宮。雲母や方解石と光る苔が天の川のような光景を作り出す通路。それらを通りながらジョフロアは危険物にライトを当てて警告し、エドリックに注意を促す。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-11 03:06
  • edit
まるでインディアナ・ジョーンズの世界だな
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-11 03:06
  • edit
エドリックの声が高い天蓋を持つ空洞に木霊した。魔境を越えて神殿に至った彼らを迎えたのは優麗な地底湖だった。ジークによって結界を解かれていたそこに、眠り姫を迎えに来た王子の立ち姿が涼やかに映える。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-11 03:07
  • edit
彼はあのゴンドラの中に眠っている。人間で言うと仮死状態のようだけど、ヴァパイアにとっては浅い眠りなんだそうだ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-11 03:07
  • edit
一方のジョフロアは影のように佇んでいた。迷いの色はまだ彼の顔から消えていない。ただ、彼は運命を甘んじて受け入れる方だった。どう足掻こうがその流れに飲み込まれてしまう事を知っている。その制限の中で光り輝く術をこの親友ならば見つけられるだろう。エドリックを見つめるジョフロアの瞳はいつも温かな敬愛に満ちている。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-11 03:07
  • edit
ニコルは基本的に無事だよ。だから無理やり起こす必要はない。起こすも起こさないも君の意志次第だ。ただ、彼を起こしたら…
エドリック
  • by z
  • 2009-05-11 03:08
  • edit
…大丈夫だ。彼を娶(めと)るつもりだから
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-11 03:08
  • edit
…えっ?
エドリック
  • by z
  • 2009-05-12 20:29
  • edit
そのくらいの覚悟はあるさ。私は眠り姫を目覚めさせる王子なんだ。あたりまえだろう?
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-12 20:32
  • edit
冗談なのか本気なのか、エドリックが茶目っ気たっぷりに微笑んだ。だがこの四日間の彼の行動と真剣な表情を知っているジョフロアには、彼の覚悟が少し眩しく見える。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-12 20:34
  • edit
ニコルを起こすキーワードは、愛だそうだ。…具体的に言うと、エクスタシーの波動を彼に感じさせる事かな…
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-12 20:34
  • edit
ジークによれば、エクスタシーを含んだ人狼の咆哮が彼を目覚めさせたのだという。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-12 20:35
  • edit
エクスタシー? じゃあ、眠り姫はキスだけじゃ起きないというのか?
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-12 20:35
  • edit
…どうだろう。もしキスで起きないのなら、もう少し、その…
エドリック
  • by z
  • 2009-05-12 20:36
  • edit
…マジか?
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-12 20:36
  • edit
ジークが言った言葉をそのまま受け取るなら、そう思うよ
エドリック
  • by z
  • 2009-05-12 20:37
  • edit
まいったな。寝ているニコルに紳士にあるまじき行為なんてできないぞ
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-12 20:38
  • edit
…それなら、君が一人で…
エドリック
  • by z
  • 2009-05-12 20:38
  • edit
…… ……
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-12 20:38
  • edit
エドリックが真面目な顔で語るジョフロアをまじまじと見つめた。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-12 20:39
  • edit
…一人で…エクスタシーってまさか…?
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-12 20:39
  • edit
方向性はそれで合ってると思う。そうならない事を祈るよ
エドリック
  • by z
  • 2009-05-12 20:40
  • edit
…ったく。他人事だと思って…
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-12 20:40
  • edit
そう言って大きく溜め息をついたエドリックは、それでも覚悟を決めたようだった。ジョフロアが岩に結び付けられていた舫い綱を引くと、地底湖の中央に浮かんでいたゴンドラがゆっくりと黒い腹を滑らせてこちらに近づいてくる。エドリックの目に、最初は横たわるニコルの足が、そして船首楼の影から覗く輝く銀髪が飛び込んできた。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-15 16:56
  • edit
…ニコル!
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-15 16:57
  • edit
刹那、彼の足は濡れた岩を蹴っていた。さながら城壁を駆け登る騎士の如く、黒い龍のようなゴンドラに飛び乗る。早鐘を打つ胸を押さえ切れないエドリックの足元に横たわる哀しげな姿。白い横顔。思わず傍らに跪き、見入った瞳がもうそこから動かない。突然、彼の胸の中で膨れ上がり溢れ出した幸福感。それは魂に刻まれている彼らだけの記憶だ。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-15 16:57
  • edit
エドリック…
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-15 16:59
  • edit
心配そうなジョフロアの声にエドリックは我に返って顔を上げた。だが、すくと立ち上がり、親友に返した声はきっぱりとして自信に満ちたものだった。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-15 16:59
  • edit
灯りを置いて君は先に帰っていてくれ。ちゃんと人間のままで、君に再び会うつもりだ。私を信じてくれるね
ジョフロア
  • by z
  • 2009-05-15 17:00
  • edit
信じるよ。君が猛者だって事も意志の固い事も分ってる。だけど、明日の朝になっても君が戻って来なければ、僕は様子を見に来るよ。君たちを祝福したいけど、君が心配な事には変わりないからね
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-15 17:01
  • edit
ジョフロアは、愛し合う行為によって起こる忘却現象についてエドリックに伝えなかった。ニコルが自分自身の危険性を含めた全てをしっかりと把握した上で、話せばいい。忘却現象によっていつでも好きな時にリセットできる刹那刹那の初恋の連続から、二人で共に育てていく愛へと移行させるのは、本人の覚悟と運命に委ねるべきだからだ。
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-15 17:02
  • edit
ジョフロアが闇へと消えてから、エドリックは再びニコルに視線を落とした。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-15 17:02
  • edit
ニコル…
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-15 17:03
  • edit
小さく呼びかけても全く反応はない。手の平でそっと薄い肩をつかんで揺らしてみても、銀髪が揺れただけで彼の翠の瞳は覗かなかった。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-15 17:04
  • edit
…ニコル…いったいどうして…こんな…
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-15 22:51
  • edit
ニコルにかける声は甘く切ない。胸に満ちる切ない痛み。何故だか分からないのにその切なさだけが鮮明で、エドリックを驚かせ嘆かせた。

彼はとても大事な事を忘れてしまった気がしていた。それが今の自分の気持ちと繋がっている。何かは分からなくても、身体と心がそう訴えていた。自分とニコルの間に起こった特別な何か。それがニコルをこんな姿にしたに違いない。エドリックはジョフロアの言動からも、うっすらとそれを察していた。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-15 22:51
  • edit
私が危険を顧みると思うか? 前にも言ったな、ニコル。君と最初にダンスした時だ。切り立つ崖に咲く美しい花こそ、手折りたくなるって…
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-15 22:52
  • edit
今すぐでもニコルにくちづけたい。だが、逸る想いを抑え込む。くちづけたら最後、その先を留められる自信などない。それよりも今は自分の行動の意味と決心をしっかりと胸に刻む事を優先するべきだった。

彼はニコルのそばに腰を下ろすと時計を見つめた。そして、以前自分に起こった記憶が欠落したと思われる時間を反芻した。ニコルを探しに談話室に行き、階段を駆け上がったと思われる時刻から朝のダイニングルームでニコルと話すまで。それと同じほどの時間をここで何もせずに潰せば、少なくとも自分がここへ来た目的やここへの道筋だけは覚えている筈。そうエドリックは考えたのだ。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-15 22:53
  • edit
私は君を目覚めさせるために来た。たとえ再び他のすべてを忘れてしまっても、その覚悟だけは絶対に忘れたくないんだ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-15 22:54
  • edit
普段ニコルと接する時に何も起こらないのであれば、記憶の消失を喚起させる特別な何かをせずに時を過ごさねばならない。エドリックは大きく息を吸って目を閉じた。指がそっと伸びて、ニコルのそれに絡む。

そのまま時が流れた。その間、彼は何度も未知なる未来に迷い、何度も覚悟を決めた。時間稼ぎなど無力な足掻きかもしれない。そんな甘い囁きも彼の決心を何度も鈍らせた。その度に、エドリックの指がニコルの銀色の髪を掬って、白い頬に残った涙の痕をためらいがちに辿った。
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-16 16:15
  • edit
時計の針が時の来たことを告げると、エドリックはゴンドラから身を乗り出して地底湖の清水を掬って口に含んだ。喉を流れるその冷たさが彼の身を引き締める。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-16 16:15
  • edit
…ニコル、迎えにきた。私だ。エドリックだ!
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-16 16:15
  • edit
堰を切ったように力ない身体を胸に抱きかかえて、彼は懇願した。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-16 16:16
  • edit
ニコル。起きてくれ。君の哀しみを私にも分けてくれ…
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-16 16:16
  • edit
エドリックは血の色を失ったニコルの唇にくちづけた。驚くほど冷たくはないにしても、明らかに体温が低い。エドリックは横になってニコルに身体を寄せた。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-16 16:17
  • edit
私が君に触れてどれだけ感じているか分かるか?
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-16 16:17
  • edit
目を瞑ったままのニコルの額に、祈るようなくちづけが落とされた。自分の胸のボタンを外して、ニコルの手をエドリック自身のすべらかな胸に当てる。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-16 16:19
  • edit
ほら、鼓動の高鳴りが分かるだろう? 君のせいだ。君の存在が私を高揚させる。これもエクスタシーだ、ニコル。強く、静かな私の想いだ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-17 21:02
  • edit
繊細な鼻梁とほっそりした顎、少し薄めの唇がどこか儚げなニコル。それらを愛でるようにエドリックの指が愛おしげに辿る。その指が右の耳に辿り着いた時、エドリックは小さな銀のピアスを見つけた。繊細な彫りの華奢な造り。彼はフレイの袖についていた情事の名残のピアスを思い出した。そっと外して上着の内ポケットに忍ばせる。これで記憶を失ってもニコルに会ったという証が残る。エドリックは形のいい耳に唇を寄せると、軽いキスと共に囁いた。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-17 21:02
  • edit
美しいニコル。君を忘れないために少し借りるよ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-17 21:03
  • edit
エドリックはニコルの身体を仰向かせると、その上に自分の身体を重ねた。愛しい身体を感じて、若い身体の芯が熱を帯びる。その時、今まで全く反応を示さなかったニコルの瞼が微かに動いた。ジョフロアの言った方向性。その手掛かりを見つけて、エドリックは覚悟を決める。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-17 21:03
  • edit
ニコル、私を感じろ。そして答えてくれ。そして、一緒にエクスタシーの頂きに駆け登ろう
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-17 21:04
  • edit
エドリックの舌が軽く結んでいたニコルの口元をこじ開けた。歯列を辿って唇を柔らかく刺激する。身体の硬直が解けるように顎が弛緩すると、すかさずその奥を蹂躙していった。その一方で腕と手が身体をきつく圧する。其の時、肺を強く圧迫されたニコルの胸が大きく息を吸い込んだ。それを見定めて、エドリックが硬さを帯びた自分の中心をニコルのそれに押し付ける。ニコルの快楽を呼び覚まそうとする、エクスタシーへの予兆を秘めた熱。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-17 21:05
  • edit
…これ以上こうしてると、紳士の嗜みを忘れてしまいそうだ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-18 11:20
  • edit
エドリックはニコルのボタンに思わず伸ばした手を握り締めた。乱れ始めた息を大きく吸って整える。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-18 11:20
  • edit
目を覚ましてくれ。…そして愛し合おう
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-18 11:21
  • edit
熱い吐息と共に、エドリックが万感の想いを込めてくちづけた。熱のこもった手のひらがニコルの身体を這う。徐々に深くなるくちづけ。そして、それに応えたもの。それはニコルの柔らかな唇の動きだった。続いてエドリックの背中にふわりと添えられた二コルの手に、エドリックは大きく安堵する。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-18 11:22
  • edit
…目覚めたのか、ニコル。私は君を娶りに来た
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-18 11:22
  • edit
くちづけの途中で唇の形がそのまま笑みに変わって、生まれたばかりの若葉のような緑が瞼の中から現われ、甘やかに見つめ返す。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-18 11:22
  • edit
ニコル。君は私のエナジーだけで生きろ。私は騎士だ。君を守り、惜しみなく与える。それに怯まない。…だから、君は暫く人間から何かを貪る罪悪感に苛まれる必要はない
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-18 11:23
  • edit
目を瞬かせてまだ呆然としていたニコルの意識に、直情的な王子の言葉が魔法の呪文のように沁み渡った。それが慈愛の雨となり、ニコルの心の若草を萌えさせ、少しずつ活気づける。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-18 11:24
  • edit
…但し私が死んだら、私を忘れろ。そして、次の人を見つけろ。君が生きる為だ。躊躇などしてはいけない。ちゃんと分かっているから、その事で決して気に病むな
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-18 11:25
  • edit
エドリックは一気にそれだけ言うと、鮮やかに笑んだ。視線は了解を得るというよりも、有無を言わさない一途さだった。抑えきれないほどの情熱を宿して、青い瞳がニコルを見下ろしている。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-18 11:25
  • edit
私の恋人になるにあたって、他に質問は? …なければ、愛させてくれ
ニコル
  • by s
  • 2009-05-18 21:05
  • edit
すべて貴方のお望みのままに....
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-18 21:06
  • edit
そう静かな声音で応える。躊躇いがちだった二人の口づけが深くなる。どうやってエドリックがこの場所に来れたか、どれ位の時間が経過したのか、ニコルの中で巡る思考は山程あるはずだった。だが彼は今、自分の目の前いる。この命、この身体、この運命(さだめ)をただ、彼に預けてしまいたい。時には息さえ出来ない程の苦しさを味わいつつ。
ニコル
  • by s
  • 2009-05-18 21:06
  • edit
そしてどうか、貴方を忘れろなどと....
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-18 21:07
  • edit
言わないで欲しい、と。そんな悲しみに耐える位なら、いっそこのまま眠らせてほしいと。たぎる血潮が声もなくそう呟く。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-18 21:07
  • edit
君がそう望むなら、それでいい。…だけど、君自身が生きる事を最優先するんだ。いいね?
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-18 21:08
  • edit
受容に満ちた笑顔の後に続いた喰らうようなくちづけ。それがそのまま首筋に降りていく。同時にエドリックの手も、ニコルの優雅なクラヴァットを取り去り、もどかしそうに釦を外してシャツの中の素肌を流離う。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-18 21:09
  • edit
君を身体ごと愛したい。もし渇いているなら、すまないが私が君を愛でている間に、私の身体のどこからでも血を吸い取ってくれ。君をすぐに欲しい
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-18 21:09
  • edit
エドリックは身を起こすと、上着とシャツを手早く脱ぎ去った。細身ながらしなやかな筋肉を持つ熱い身体が再びニコルを覆う。自分の首筋をニコルの口元に与えつつ、手は既に相手のベルトに掛かっていた。性急で奔放な熱がニコルを瞬時に攫っていく。
ニコル
  • by s
  • 2009-05-19 16:28
  • edit
...ん...っ...
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-19 16:28
  • edit
渇いたニコルの唇が瑞々しいエドリックの首筋から血を貪る。普段見えない小さな牙歯がきゅっと食い込み、一筋の紅い糸が線を描いた。こんな時、恨めしい自分の性を止める術を知らない。渇望と欲情は龍の様に大きく畝(うね)り躯を駆け巡る。エドリックの綺麗に張りつめた筋を曲がった指で辿りながら下腹部へと流れ、待ち切れないそこに五指が触れる。
ニコル
  • by s
  • 2009-05-19 16:29
  • edit
....貴方の血と肉が欲しい。
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-19 16:30
  • edit
反り上がりつつある相手の雄芯を握ると、ニコルの手の中で その質量が膨れ上がり密を滴らせた。指に滾った透明な雫を自ら己の後ろにもっていくと、なめずるような疼きが這い上がってくる。
ニコル
  • by s
  • 2009-05-19 16:30
  • edit
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-19 16:31
  • edit
自分の首筋を伝い流れた血を指で掬って眺め、エドリックは不敵に笑った。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-20 00:12
  • edit
欲しいなら、喰らえ。怯まないと言ったはずだ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-20 00:12
  • edit
たとえ相手が何者であろうと構わない。手に入れたいと願った美しい裸体が眼下にあった。ニコルの濡れた瞳が自分の訪れを待っている。ここまで来ためくるめく思いと奇妙な既視感が彼を支配した。それを振り払うように、エドリックは熱っぽくくちづける。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-20 00:12
  • edit
…そして貰うよ、ニコル。身体も…魂も…
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-20 00:13
  • edit
そう宣言すると、勃ちあがったニコルの下腹部を舌と口腔で喰らうように侵食した。相手が愉悦に仰け反った隙に、ニコルの下肢を割って身体を滑り込ませる。エドリックの情熱の滾りをそこは吸いつくように受け入れていった。見上げてくる翠の瞳。熱く自分を圧するニコルの愛しさ。歓喜の痺れがエドリックの全身を駆け抜ける。切なげに寄せたエドリックの眉根に恍惚が滲んだ。やがて衝動は律動に変わり、意識も奪われるほどの幸福感が彼を支配していく。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-20 00:13
  • edit
…私を愛せ…そして生きろ。だけど、もう私を置いて眠るなんて許さない!
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-20 00:14
  • edit
情熱と言葉をニコルの身体に叩き込みながら、エドリックが頂きへ駈け昇っていった。身体を突き抜ける痙攣と共に、愛する者の名をうわごとのように繰り返す。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-20 00:14
  • edit
…ニコル
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-20 18:53
  • edit
エドリックが高みに到達するのとほぼ同時にニコルも迸った。その時、頂点に達したお互いの肉体の喜悦と愛情があのヴァンパイアの事象を呼び覚ます。ニコルの白い喉から小さな吐息が漏れた瞬間、反り返った彼の胸の中心から揚羽蝶(Swallowtail)の文様がふわりと浮かび上がり、色とりどりの蝶の幻影がゆらゆらと二人の間を飛び交い乱舞する。二人を乗せたゴンドラはゆったりと揺れ、幽玄な世界が静かな水音と共にその領域を侵す。
ニコル
  • by s
  • 2009-05-20 18:54
  • edit
私はとうに貴方のものです.....エドリック....例え...
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-20 18:54
  • edit
そこでニコルは言葉を飲み込んだ。例え、この悦楽の蝶が貴方から愛の記憶を奪い去ろうとも、私は貴方を忘れない、生きている限り。その様子を見て何かを言いかけたエドリックの唇をニコルはそっとキスで塞いだ。乱舞していた蝶は清廉な空間に吸い込まれ音もなく消え失せていく。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-20 18:55
  • edit
……
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-20 18:55
  • edit
エドリックはくちづけの中でその美しい光景を呆然と眺めていた。まだしっとりと自分を押し包む熱い恋人の身体。悠遠なる恍惚。それが湧きあがる幸福感となって彼を眩暈させる。エドリックは再び強烈な既視感に襲われていた。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-20 18:55
  • edit
…あの綺麗な蝶。そして、言葉を最後まで言わない君。…まったく不思議な事ばかり起こる。これもヴァンパイアを恋人に持った男の定めなのか
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-20 18:55
  • edit
自身に起こる事象をいともあっさりと受け入れてしまったエドリックは、ニコルから身体を外して仰向けに寝転んだ。不可解な事にも疑問を挟まずありのままに受け入れる性格は、長年人狼の親友であり続けた所以だ。エドリックは恋人の白い身体に自分の上着をふわりかけてやると、横に並んだニコルの肩を抱き寄せる。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-20 18:56
  • edit
私はどうやら記憶を失くしたらしいんだ。それが君に関する何かのような気がしてならない。もしこんな幸せな逢瀬を忘れてしまったのだとしたら、実に勿体無いな
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-20 18:56
  • edit
短絡的直情思考ゆえか、勿体無いで片づけてしまったエドリックを翠の瞳が見つめた。自分の哀しみは理解されないのか。そう思った瞬間、再び熱い身体が覆い被さって、ニコルの額に額を擦り寄せてきた。切なげで祈りのような囁きがニコルの心の扉を開こうとする。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-20 18:56
  • edit
…君は素直だな。綺麗で脆い人形のようだ。なにを達観している? 君は君自身のものだよ、ニコル。少しぐらい運命に逆らってみろ。私も一緒に受けて立ってやるから
ニコル
  • by s
  • 2009-05-20 18:57
  • edit
....私が貴方と最後に会ってから、何日が過ぎたのですか?
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-20 18:57
  • edit
本来なら目の前にエドリックが現れた時、一番に聞くはずだった質問をニコルは投げかけた。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-20 18:57
  • edit
四日だ。正確には四日半かな。…ちなみに君の居場所はジョフから聞いた。そして、ジョフがそれを知ったのはジークからだ
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-20 18:58
  • edit
4日。思ったより日数が経っていない。それもジークが絡んでいる事で合点はいく。しかし、仲間である二人がここで眠る自分を起こそうと思えば人など介さず出来たはずなのに、エドリックが来るまでそのまま眠らせておいたのは何故なのだろう。それにジョフロアがジークに接触?GDが手回ししたのか。それとも、エドリックに一番近いジョフロアに彼自身が尋ねたのだろうか。あの朝のダイニングテーブル越しにジョフロアは、それでいいのかとニコルに言った。彼は何かを知っている。様々な想いが交錯する中、すべてを目の前のエドリックに話すべきかどうかニコルは迷っていた。
ニコル
  • by s
  • 2009-05-20 18:59
  • edit
そうですか...ジークが...。
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-20 18:59
  • edit
先程の恍惚が嘘の様に自分の頭が冷えていく
エドリック
  • by z
  • 2009-05-20 19:00
  • edit
恋人を目の前にしてそんな醒めた顔をさせるとは、君のボスは相当な影響力を持っているんだな。…とりあえず、あいつに楯突いてみたらどうだ?
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-20 19:00
  • edit
ニコルに軽くくちづけたエドリックが、悪戯っぽく笑う。その笑顔の向こうの真摯な眼差しは、迷っているニコルの言葉を促しているようだった。
ニコル
  • by s
  • 2009-05-20 19:00
  • edit
ボス....そう思った事はないんですが。いつも彼が何を考えているのか私には分からない。今回の事も...気紛れな彼が何故貴方をここに招き入れたのか...いや、違う。そんな事はどうでもいいんです。...先程、記憶をなくしたと貴方はおっしゃいましたが、何故そう思うのですか?
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-20 19:01
  • edit
ニコルは目の前の恋人が、この4日間どんな想いで過ごし ここに辿り着いたのかを一番知りたかった。
ニコル
  • by s
  • 2009-05-20 23:46
  • edit
怒っていますか?私がここで眠ってしまった事を...
エドリック
  • by z
  • 2009-05-20 23:46
  • edit
いいや。だけど、もうするな。…そんな事より私が気になるのは君の瞳に宿る哀しげな翳だ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-20 23:47
  • edit
エドリックは否定の為に首を振って、ニコルの瞼に優しくくちづけた。いたわるような熱が伝わる。そのキスが銀の髪にも落とされて、腕の中に包み込む。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-20 23:47
  • edit
夕方に談話室で君を探していた筈だったんだ。だがその後、君に会ったのかさえ覚えていない。その夜の記憶がごっそり無いんだよ。私はその原因を知りたかった。おまけにジョフは君の居場所を知っている事を最初は隠していた
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-20 23:47
  • edit
エドリックは身体を起こすと素肌にシャツを身に付けた。衣服を整えながらもニコルへの視線は外さない。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-20 23:48
  • edit
君と関連した何かがある…。そうは思ったけど、私は謎解きには興味はない。ここに来たのは、ただ君に会いたかったからだ。会えば止まってしまった何かが動き出す。そんな気がした。君が目覚めて、こうして見つめ合える。私はそれで満足だよ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-20 23:48
  • edit
上着はニコルの身体の上に残したままで、エドリックはもう一度くちづけた。細かい事に頓着しない正義漢は、常に前向きであまり後ろを振り返らない。ひるまずに真正面から運命を乗り越えていく。
ニコル
  • by s
  • 2009-05-20 23:49
  • edit
貴方は私に優しすぎる。詰ってもらった方がまだましだ。
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-20 23:49
  • edit
謎解きに興味はないと....その謎解きこそが、ニコルに翳を落としているとも知らず。真っ直ぐで、いかなる時も尊大で揺るぎなく、自らを騎士と呼ぶ澄み切った碧い瞳の恋人。彼は恋はしても、決してその恋には溺れないのだろう。彼と自分の中の恋心には大きな隔たりがある事をニコルは感じ始めていた。満足そうな彼の横顔。刹那、ニコルはそんな彼の精神の美しさを壊してみたい衝動にかられる。
ニコル
  • by s
  • 2009-05-20 23:49
  • edit
エドリック、お願いがあります。
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-20 23:50
  • edit
きちんと衣服を整え終えたエドリック。そんな彼をニコルはじっと見つめ、未だ裸体に彼の上着をかけたままの姿で静かにこう言った。
ニコル
  • by s
  • 2009-05-20 23:50
  • edit
私に服を着せて下さい。貴方にそれが出来ますか?
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-21 09:29
  • edit
一瞬の困惑したエドリックの表情。生まれながら周りの人間に傅(かしず)かれ育った彼。それでもニコルはその言葉を撤回しなかった。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-21 09:38
  • edit
出来るか出来ないかを問うているならば、むろん出来る。だが、着せ替え人形遊びは好みじゃないな
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-21 09:39
  • edit
二コルの周りに花びらのように散らばっていた衣服。エドリックはそれをひとつずつ拾う。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-21 09:39
  • edit
それから、私はとりたてて優しいわけではない。詰りたいと思った時には詰るさ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-21 09:39
  • edit
己の行動を自嘲するように片頬を上げて、彼はニコルの後ろに回った。裸の肩にドレスシャツをふわりとかける。ニコルの細い手首をとっては優しく袖に通し、背中から抱き込むように前へ廻した指が釦をかけようとして、ふと止まった。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-21 09:40
  • edit
これは、私が君を人形のようだと言った事への皮肉かもしれないな。余興なら乗るが、さっきから言っているように、楯突く相手なら自分の運命かジークにしておけ。それともあいつが怖いのか?
ニコル
  • by s
  • 2009-05-21 09:40
  • edit
ジークが怖いわけではありません。勿論、貴方のおっしゃる余興でもなければ、私の嗜虐心を満たしているつもりもありません。嫌なら今すぐ手を止めて頂いて構わない。
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-21 09:41
  • edit
本心だった。断るだろうと思っていた。あの尊大なエドリックが、自分のわがままを受け入れ手際よく服を着せていく。本当は彼にそんな事などさせたくはなかった。が、ニコルはその辛い気持ちをぐっと抑え、決して自分から手伝おうとはしなかった。

そんなエドリックの様子を見つめながら、初めて彼に会った時の事を思い出していた。豪奢な金髪を靡かせながら、真っ青な双眸には獅子の様な熱さを嬉々と滾らせ、周りを圧倒し颯爽と廊下を歩く彼の姿に目が釘付けになった。漲る太陽の様な全うな存在感。何度も振り返り彼を見つめた。あんな人間は見た事がない。あれは、いつの事だったかと。
ニコル
  • by s
  • 2009-05-21 09:41
  • edit
楯突くなら自分の運命か....確かに。
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-21 09:42
  • edit
あの時、自分の喉は彼の血を真っ先に欲しがっていた。己が闇の存在であるという罪悪感を振り払い、光を纏うかの様な彼の姿が見えなくなるまで目で追った事を彼は知らない。それから程なくして彼から私信が届いた。自分の行動を見透かされたのか、と思ったが胸の高鳴りには勝てなかった。その彼が今、自分の目の前にいる。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-21 09:42
  • edit
その意気だ、ニコル。一緒に受けて立ってやる
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-21 09:42
  • edit
ニコルの表情の変化をずっと見つめていたエドリックが、恋人の両腕を掴んで翠の瞳を覗き込んだ。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-21 09:43
  • edit
…よかった。瞳の哀しげな翳が消えたな。そのほうがずっと潔くて君らしい。私が最初に見とれた君のままだ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-21 09:43
  • edit
そう言って鮮やかに微笑むと、そのままニコルの唇を優しくついばむ。思ったとおり、彼の唇は永遠の味だった。時の流れによって洗練された所作。思索型のニコルが長い年月の中で見つけたであろう大胆さの煌めきがその瞳に帰って来ていた。少し開いた心の扉のノブを掴んで、エドリックはそれを押し開きたい衝動に駆られる。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-21 09:44
  • edit
…ところで、せっかく服を着たところで悪いんだが。…もう一度いいかな? 閨で楯突かれるのは、構わない。…むしろ好みだ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-21 09:44
  • edit
ニコルを攫うように押し倒して、くちづけで相手の反論を奪う。すでにその手は、先程エドリック自身がはめたばかりのニコルのシャツの釦を外しにかかっていた。
ニコル
  • by s
  • 2009-05-21 09:45
  • edit
どこまでも懲りない方だ。貴方という人は。
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-22 04:35
  • edit
そう言いながら、エドリックの洒落たアスコットタイを解きにかかる。つと、ニコルはいつもの癖で自分の右の耳朶に触れた。銀のピアスがない。あれは、自分が人間だった頃の唯一の姉の忘れ形見だ。肌身離した事はない。何度もその耳朶に触れ、ゴンドラの底に敷かれた緋色の布に視線を落とす。
ニコル
  • by s
  • 2009-05-22 04:35
  • edit
...ピアスが....
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-22 04:36
  • edit
いつなくしたのか分からない。眠りについている間か。もしあれが閨の最中に この深淵な湖の底に沈んでしまったなら、もう二度と見つからないだろう。気丈に振る舞っていたニコルの瞳に涙が浮かんだ。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-22 04:36
  • edit
…すまない、ニコル。盗人は私だ
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-22 04:36
  • edit
エドリックは上着の内ポケットから、銀色の小さなピアスを取り出した。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-22 04:37
  • edit
君との逢瀬の証しとして、少しの間だけ借りるつもりだったんだ。もし、私が君と会ったことさえ忘れてしまったら、君との愛の歴史が紡げないだろう? …それじゃ、君に申し訳ない。君ばかりに重荷を負わせてしまう
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-22 04:37
  • edit
苦渋に顰められた眉根。すまなさそうに俯いたエドリックに、哀しみが混ざった自嘲が浮かぶ。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-22 04:38
  • edit
…わかってる。馬鹿みたいな妄想さ。だが、人は恋をするとロマンチストになるらしい。これを一日貸してくれないかな、ニコル。その代りこの指輪を持っていてくれ。明日交換しよう。この事自体、私は忘れてしまうかもしれない。けれど、もしかしたら君が運命に楯を突く手助けになる気がするんだ
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-22 04:39
  • edit
この4日間、エドリックは限られた情報の中で、彼なりの流儀と覚悟を持って ここにやって来たのだろう。彼の手のひらの中で光る小さなピアスはそれを物語っていた。
いま彼が語るたくさんの愛の言葉も このピアスの事も あと数時間したらきっと綺麗さっぱり忘れるのだから。そして又、明日もこの先もずっと彼はニコルに愛の言葉を紡ぐ。性懲りもなく。困惑した表情で指輪を差し出すそんな彼がニコルは愛おしくてたまらなくなった。
ニコル
  • by s
  • 2009-05-22 20:23
  • edit
わかりました。では、ここに
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-22 20:24
  • edit
ニコルが細い左手を差し出すと、エドリックはその中指に自分の指輪をはめた。見事な細工が施された金の指輪。少し大きいそれはニコルの指の上とくるりと廻った。
ニコル
  • by s
  • 2009-05-22 20:24
  • edit
私にはほんの少し大きいようですね
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-22 20:24
  • edit
くすっと穏やかに微笑みエドリックに左手を掲げて見せる。
ニコル
  • by s
  • 2009-05-22 20:25
  • edit
エドリック、そのピアスは私が人間だった頃の唯一姉の忘れ形見です。大事にもっておいて下さい
エドリック
  • by z
  • 2009-05-22 20:25
  • edit
君の大切なもの、確かに預かった。明日返す。もし私が忘れていたら、そう告げてくれ。…とにかく、これで君と会った事実を核として、私の想いを明日へ繋げる事ができると思う
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-22 20:26
  • edit
恋人の笑顔を満足そうに見つめる青い瞳は澄み切っていた。エドリックは居住まいを正してニコルの前に跪くと、指輪のとなりの薬指に熱っぽくくちづける。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-22 20:26
  • edit
いつかパートナーシップを申し込む時が来たら、揃いの指輪を此処に
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-22 20:26
  • edit
停まっていたそれは前へ進み始めた。記憶は消えても事実だけは未来へと繋がる。たとえ線は鮮明な一本で繋がっていなくても、華奢な鎖のように小さな接点で繋がっている。確かに甚だ頼りない。けれど二人は愛の軌跡をそうやって紡ぐ。やがてくちづけは深くなり、身体は再び自然に求めあった。
エドリック
  • by z
  • 2009-05-22 20:27
  • edit
…ニコル。私たちの愛は、いつでも新しくて鮮やかだな
ナレーター
  • by z
  • 2009-05-22 20:27
  • edit
恋人の髪を指で優しく梳いて、エドリックが問いかける。
ニコル
  • by s
  • 2009-05-22 20:28
  • edit
ええ
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-22 20:28
  • edit
そうですね、と再び艶然と微笑む口元に重なる唇。揺蕩う水面に浮かぶ一艘のゴンドラ。せつなく揺れる閨は再び憂いを帯びようとしていた。

以下は、ドラマ執筆管理人の書き込み専用です。

他者様の書き込みがあった場合は、予告なく削除させて頂きます。

書込者
キャラ名
台詞
パスワード

Copyright © 月と空のコラボ空間 : All rights reserved

「月と空のコラボ空間」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7 & Zippy
忍者ブログ [PR]

HOME