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不知夜月とJardin de ciel(空の庭)のコラボ頁です。

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† 闇に咲く悦楽の閨 第3章 7幕 †

再びアレクの元を訪れた景虎はヴァンパイアの存在が理解できず苛立ちを募らせる。人とヴァンパイアの接点が様々に交錯していた。

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Drama

ナレーター
  • by
  • 2009-05-03 01:13
  • edit
コンコン
景虎
  • by
  • 2009-05-03 01:13
  • edit
邪魔するぞ
ナレーター
  • by
  • 2009-05-03 01:14
  • edit
ゆっくりと、そしてはっきりしたノックは相手が誰なのかを容易に想像させた。予告どおりの昼下がりの時刻。アレクの部屋にやってきた景虎は薄暗い部屋の中に足を踏み入れて、目が慣れるのを待つようにしばらく動きを止めた。
アレク
  • by
  • 2009-05-03 01:15
  • edit
あっ、景...き、き、き...ふぅ...
ナレーター
  • by
  • 2009-05-03 01:16
  • edit
本人を目の前にして、一つ大きな溜め息をつく。いつまで経っても彼を名字で呼ぶ事に慣れない様だ。
景虎
  • by
  • 2009-05-03 01:17
  • edit
き・ど・う、だ
ナレーター
  • by
  • 2009-05-03 12:03
  • edit
子どもに言い聞かせるように一文字ずつくぎって口にしながら景虎はドアを閉め勝手に中に入った。そしてつかつかとベッドのアレクに近寄ると屈み込み、毛布を剥ぎ取ろうと手を伸ばした。
景虎
  • by
  • 2009-05-03 12:04
  • edit
見せろ。痛みは引いたか
アレク
  • by
  • 2009-05-03 12:04
  • edit
き・ど・う...君。昨日、あっもう今日か、ずっと側にいてくれてありがとう。寝てないんでしょ?僕、もう殆ど大丈夫だから。
ナレータ-
  • by
  • 2009-05-03 12:05
  • edit
そう言いながら、自分で上着を脱ぎ包帯を外し傷跡の箇所を景虎に見せる。本人の言った通り、昨日の傷跡が嘘の様に殆ど回復している。
アレク
  • by
  • 2009-05-03 12:06
  • edit
ほらね。き・ど・う君。
景虎
  • by
  • 2009-05-03 12:06
  • edit
……
ナレーター
  • by
  • 2009-05-03 12:07
  • edit
景虎は手の平をアレクの胸と背中に当ててしばらく目を閉じていた。昨日の軋みが嘘のように消えている。ヴァンパイアの回復の早さを目の前にして、景虎はしばらく無言だったが、納得したように手を引いた。ただ、薬草の匂いの染み付いた包帯を取り去り、かわりにポケットから取り出した新しい包帯をアレクの身体に巻きなおす。
景虎
  • by
  • 2009-05-03 12:08
  • edit
何故そんなに名を呼びたがるんだ
ナレーター
  • by
  • 2009-05-03 12:09
  • edit
たどたどしく暉堂の名をくぎる口調に景虎は少々眉を寄せた。けれど、その手は丁寧で一巻き一巻きをしっかりと固定しながら巻き重ねていく。景虎の声はアレクの耳の上から聞こえた。
アレク
  • by
  • 2009-05-05 13:46
  • edit
忘れたくないから。
ナレータ-
  • by
  • 2009-05-05 13:47
  • edit
上目遣いで大きな瞳が景虎をじっと見つめる。
アレク
  • by
  • 2009-05-05 13:47
  • edit
僕の勝手だけどね。
景虎
  • by
  • 2009-05-05 13:48
  • edit
…? よく分からんな。何故ファーストネームが忘れないことになるんだ。ミドルでもラストでも同じだろう
ナレータ-
  • by
  • 2009-05-05 13:49
  • edit
翠の瞳を覗き込んで景虎が問うた。手はよどみなくアレクの肩に包帯をかけ背を走る。
アレク
  • by s
  • 2009-05-05 19:57
  • edit
僕のファーストネーム、お母さんがつけたんだ。ファーストネームってなんとなく願いが込められてる気がする。だからニコルとジークには呼ばせてない。き・ど・う君のファーストネームは誰がつけたの?
ナレーター
  • by t
  • 2009-05-05 20:01
  • edit
そういえばニコルはアレクをラストネームで呼んでいたこと、そして彼が母親から逃げて狂い死にさせたと告白した言葉を景虎は思い出していた。
景虎
  • by t
  • 2009-05-05 20:03
  • edit
祖父だ。…確かに、名には重要な意味があるのだろうが?
アレク
  • by s
  • 2009-05-05 20:04
  • edit
そっか。お祖父さんなんだ。いい名前だと思うよ。日本の漢字の事は良く知らないけど。
ナレータ-
  • by s
  • 2009-05-05 20:04
  • edit
自分が相手を忘れたくないことと、その名前に願いが込められている事に直接の関連性はない。だが、100年後200年後でも記憶に留める名前となると、アレクの言葉にも何処か考えさせられる部分もある。
アレク
  • by s
  • 2009-05-05 20:05
  • edit
本当は僕が単に名前で呼びたいだけかな。あっ、ありがとう包帯。
ナレータ-
  • by s
  • 2009-05-05 20:05
  • edit
巻いてくれた包帯に気遣いながら上着を着ると、ベットから降り自分で重いカーテンを開け放した。部屋の内部に優しい陽光が入ってくる。
アレク
  • by s
  • 2009-05-05 20:06
  • edit
明るいね。
ナレータ-
  • by s
  • 2009-05-05 20:07
  • edit
窓の外を眺めながら、ふと「き・ど・う」と呟いた。記憶の何処かで聞いた事のある名前。
アレク
  • by s
  • 2009-05-05 20:08
  • edit
もしかして、お祖父さんも「き・ど・う」君?この学校にいた?
景虎
  • by t
  • 2009-05-05 20:09
  • edit
……。だろうな。詳しく聞いたことはないが…。一族の男子はこの学園に籍を置くことが多いからな
ナレーター
  • by t
  • 2009-05-06 09:36
  • edit
景虎はアレクのベッドから立ち上がりながら、ふと思い出したのか胸ポケットに手をやった。取り出した古い写真。朽ちかけた時のなごりのようなセピア色の小さな横顔。
景虎
  • by t
  • 2009-05-06 09:37
  • edit
…これはお前か?
ナレータ-
  • by s
  • 2009-05-06 09:37
  • edit
差し出された写真を受け取ったアレクが それに見入る。何人かの学生が映った古い集合写真。その中に小さく映った自分の姿はあったがニコルの姿はなかった。写真を見ながら記憶の底を辿ると、見知った顔がいくつかあった。恐らく100年以上前の写真。
アレク
  • by s
  • 2009-05-06 09:38
  • edit
よく見つけたね、こんな古いの。うん、この右端に映ってるの、僕だよ。その隣の隣が「き・ど・う」君だ。思い出した。彼も名前で呼ばせてくれなかったな。君とよく似てた。
ナレータ-
  • by s
  • 2009-05-06 09:45
  • edit
100年以上前の出来事がまるで昨日の事の様に蘇り その記憶を辿る。だが、古い方の「き・ど・う」君の名前が出そうで出てこない。
アレク
  • by s
  • 2009-05-06 09:46
  • edit
名前、なんてったかな彼。知ってる?
景虎
  • by t
  • 2009-05-06 09:47
  • edit
Sで始まる名だろう。棺桶の主が契約したというのはこいつなのか? 俺に似ている?
ナレータ-
  • by t
  • 2009-05-06 09:47
  • edit
いささか意外そうに憮然とした表情で景虎が問うた。
アレク
  • by s
  • 2009-05-06 09:48
  • edit
なんとなく雰囲気がね、今思えば似てたな。つっけんどんなトコとかも。ジークと契約したって話は....どうかな...
ナレータ-
  • by s
  • 2009-05-06 09:48
  • edit
写真はなるべく残さない様にしてるんだけど...と独り言の様にぼそりと呟きながら眉根を寄せ写真を景虎に返す。
景虎
  • by t
  • 2009-05-06 09:49
  • edit
どうかな?…とはどういう意味だ?
ナレータ-
  • by t
  • 2009-05-06 09:49
  • edit
景虎は写真の裏の署名を眺めながら呟いた。ヴァンパイアは鏡や写真に映らないという説があるが、こうして実在している彼らを見ると情報は交錯している。
アレク
  • by s
  • 2009-05-06 20:40
  • edit
何が知りたいの?景...き・ど・う君は。
ナレータ-
  • by s
  • 2009-05-06 20:41
  • edit
窓辺を背にこちらを向くアレクの表情が逆光でよく見えない。
景虎
  • by t
  • 2009-05-06 20:41
  • edit
お前は一体どういう生き物なんだ
ナレータ-
  • by t
  • 2009-05-06 20:42
  • edit
どこか苛立たしげな口調で景虎がアレクに詰め寄った。顰めた眉は陽光が眩しいせいなのか、苛立ちからなのかわからない。
景虎
  • by t
  • 2009-05-06 20:42
  • edit
ヴァンパイアは不死身の存在の筈だ。なのにお前といいランドルフといい、何故そんなに危なげなんだ。見せ掛けか? お前の意識はどこまで人だ?
ナレータ-
  • by t
  • 2009-05-06 20:43
  • edit
景虎はつかつかと窓に近寄るとアレクの横のカーテンを派手に開け放った。いくつもの窓のカーテンを引いていくと真昼の日差しがさんさんと降り注ぎ、部屋の中から闇が振り払われるように一気に光に満ちる。
景虎
  • by t
  • 2009-05-06 20:44
  • edit
朝の光が苦手らしいな。だがそれで死ぬわでもあるまい? お前は死ぬのか? 人を死に至らしめることは出来るのだな。
ナレータ-
  • by t
  • 2009-05-06 20:44
  • edit
景虎はアレクの胸元に指を突きつけて睨んだ。口調はきつく責めるように聞こえた。それでも、彼の苛立ちの焦点はアレク個人の存在に向かっていた。
景虎
  • by t
  • 2009-05-06 20:45
  • edit
俺が何に見える。獲物か。それ以外、人はお前にとって意味があるのか? 名を記憶に留める必要などどこにある
アレク
  • by s
  • 2009-05-07 10:37
  • edit
何も...
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-07 10:37
  • edit
突きつけられた浅黒い指がアレクの胸の奥を刺し、疼く。
アレク
  • by s
  • 2009-05-07 10:38
  • edit
何も変わんないよ、君と。ただ、人間じゃないだけだ。
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-07 10:39
  • edit
アレクを上から見つめる黒い瞳。この瞳を今まで何度も見た。どんなに誠意を尽くしても、いつも最後、きまって自分に向けられるのはこの視線だ。
アレク
  • by s
  • 2009-05-07 10:39
  • edit
君も結局、みんなと同じだね。ニコルだけは違ったけど。僕、ニコルが今どこにいるか知ってる。だけど、そこには行けない。
ナレータ-
  • by s
  • 2009-05-07 10:40
  • edit
大きな翠眸には、今にも落ちそうな雫が溢れている。
景虎
  • by t
  • 2009-05-07 10:42
  • edit
行けない? 何故だ
ナレータ-
  • by t
  • 2009-05-07 10:42
  • edit
問いを重ねることは相手に興味を持つことと同義だ。それを知りつつ、景虎は怪訝そうな表情を見せた。
アレク
  • by s
  • 2009-05-07 10:43
  • edit
ニコルは今、僕を求めてない。だから行けない。
ナレータ-
  • by t
  • 2009-05-07 10:47
  • edit
泣くことを必死で耐えるような苦渋に満ちた言葉。多分、数十年は二人きりで生きてきただろう。原因は知る由もないが、その相手に突き放された凍えるような孤独が、このヴァンパイアを追い詰めていたことを景虎は悟った。
アレク
  • by s
  • 2009-05-07 10:48
  • edit
僕達がどういう生き物で、なぜ生きているのかなんて聞かないで。そんなの僕の方が知りたいよ。
ナレーター
  • by t
  • 2009-05-08 13:38
  • edit
景虎はしばらく無言だった。眉間辺りに拳を寄せ、目を閉じて考え込む。しばらくして流れた低い声はもう落ち着いて、いつもの彼の声だった。
景虎
  • by t
  • 2009-05-08 13:38
  • edit
確かにそれは…人も同じように持つ疑問だな…
ナレーター
  • by t
  • 2009-05-08 13:38
  • edit
自分はどこから来て何をすべきなのか。大抵の人はそれを思い量る。自我を持つ生き物が抱く命への疑問は皆同じなのかもしれない。
景虎
  • by t
  • 2009-05-08 13:39
  • edit
何も変わらないか…。お前は、ランドルフのためなら何でもするのだろうな。俺から血を掠め取ったように。唯一の仲間だ、その感覚も理解できる。…人間も同じだ
ナレーター
  • by t
  • 2009-05-08 13:39
  • edit
景虎は一旦言葉を切って、窓の外に視線を移した。中庭を数人の学生が談笑しながら横切っていく。
景虎
  • by t
  • 2009-05-08 13:39
  • edit
だから、同じところに住み同じものを食べ同じ文化を共有しようとするんだ。仲間であろうとするために。…お前はどうだ? ここで暮らして、その意識はあるか?
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-08 13:40
  • edit
意識はあるか?と聞かれ、その意図する真意がアレクには掴めなかった。相手の立場を考えれば、自分達は今すぐにでも排斥したい存在に違いない。だが、昨晩からアレクに見せる景虎の真摯な態度は、彼のぶっきらぼうな言葉とは裏腹に その意識の狭間で葛藤している様にも見て取れる。
ただ、仲間...と言われて真っ先に思い浮かぶのは、ニコルの穏やかな笑顔。そして、氷の彫像の様に冴え冴えとしたジークである事は紛れもない事実だ。
アレク
  • by s
  • 2009-05-08 13:40
  • edit
餌が違う...
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-08 13:41
  • edit
アレクはあえて、この言葉を選んだ。
景虎
  • by t
  • 2009-05-08 22:40
  • edit
ああ、そうだな。その違いは避けては通れない。だが俺が知りたいのはお前の意識だ。種が違っても同じ場所で生きる仲間であろうとする意識はあるのか?ないのか?
アレク
  • by s
  • 2009-05-08 22:40
  • edit
うん、と言うのは簡単だけど....僕にどう言わせたいの?
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-08 22:41
  • edit
どことなく艶を漂わせ、ほんの少しあどけなさの残るその表情が、音もなく冷ややかなものに変貌していく。
景虎
  • by t
  • 2009-05-08 22:41
  • edit
どう、だと?
ナレーター
  • by t
  • 2009-05-08 22:41
  • edit
景虎は今はその容貌が邪魔なように不快そうに深く眉を顰めた。
景虎
  • by t
  • 2009-05-08 22:42
  • edit
何十年もここに出入りしてそんなことも考えたことがなかったのか。ランドルフは言ったな、ここが生きる場所だと。それは俺も、誰も同じだ
ナレーター
  • by t
  • 2009-05-08 22:42
  • edit
景虎の伸ばした手がアレクの左の二の腕を攫って引き寄せた。屈み込んだ彼は真っ直ぐに相手を睨んだ。見開かれた翠の瞳に浮かぶ心情だけを、景虎は見ていた。
景虎
  • by t
  • 2009-05-08 22:42
  • edit
だったら、周りを認める努力をしろ! 俺にしたようなことを二度と誰にもするな。あれは仲間にする行為じゃない!
ナレーター
  • by t
  • 2009-05-08 22:43
  • edit
言葉だけの謝罪などに意味はない。握り締められた腕に痛みが走るほどこもった景虎の真剣な力。黒い鋭い目が射抜くほどの迫力でアレクに迫っていた。
アレク
  • by s
  • 2009-05-09 08:52
  • edit
仲間じゃない!努力はしてるよ。僕ら、誰も殺してない!それが僕らにとっての努力だ。確かに同意なく君から血を掠めとったのは悪かった。謝るよ。ごめんなさい。でも今までは、相手の同意を得て体液を搾取してる。ニコルはそれさえも良心の呵責から出来ない。だから僕がいつもニコルに分けてあげるんだ。
僕が君の事を獲物として見てるか、って何度も聞くけど、自分の周りの人間から搾取しなきゃ生きてけない僕らには、人間はみんな獲物だ!
....その言葉を僕に言わせたいんでしょ?....ひどいよ。景虎君。
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-09 08:53
  • edit
掴まれた二の腕を払おうともせず、相手を同じくまっすぐ見据える。景虎の言う事は正論だ。それも理解している。だが、それは人間側の正論だ。そして、いつもの様に甘えて済む相手ではない。だから真正面から自分が一番口にしたくない言葉で詰った。人間相手には決して言わない「獲物」という言葉。アレクにとって景虎は、それを無理矢理言わせる相手でしかなかった。
アレク
  • by s
  • 2009-05-09 08:53
  • edit
分かって貰おうとか思ってないから
ナレーター
  • by t
  • 2009-05-09 08:54
  • edit
景虎はしばらくアレクの表情に見入っていた。そして、ゆっくりと口を開いた。
景虎
  • by t
  • 2009-05-09 08:54
  • edit
誰も殺してないのが努力だ? ふざけるな。それはここでの共存の最低限のルールだ
ナレーター
  • by t
  • 2009-05-09 08:54
  • edit
景虎は力の入ってしまった手を離した。華奢なアレクの身体。激情に駆られれば折れてしまいそうだった。
景虎
  • by t
  • 2009-05-09 08:55
  • edit
お前らに餓えて死ねとは言わん。俺は仲間が獲物であってもかまわんと思っている。要は、どちらの意識が強いのか、と問うているんだ
ナレーター
  • by t
  • 2009-05-09 08:55
  • edit
同じ世界を生きる他者を認める気持ちが強ければ、相手を気遣うことは可能な筈だ。それを問うた時の怪訝そうなニコルの表情が景虎の意識の隅にいつまでも引っかかっている。もともと同意をとってのことなら景虎に関与の意思は薄い。けれど、アレクは景虎から血を掠め取ったことを謝っても、その行動を二度としないとは口にしない。
アレク
  • by s
  • 2009-05-09 08:56
  • edit
意識か....どちらもだよ。心では友達と思っても、僕の身体と頭は「獲物」と捉える。考えると自分が嫌になるから考えない様にしてるのに....それを君は僕に突きつける。

嫌な奴だ。
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-09 08:56
  • edit
花の様に端整な少年の容貌の裏に、普段は押し隠した深く根ざす悪露が、露見する。今までのアレクなら容易に受け流したであろう場面。だが今回、彼にそうさせない何かがあった。

その時、痛みの走る掴まれた二の腕を擦りながら、何故か母親の事が彼の脳裏を掠めた。自分に向けられた歪んだ愛情。そこから逃げる様にジークの元に走った過去。自分を失って狂い死んだ母親。もうその顔さえ思い出せないだろう。とうの昔に自分は母親を許している、と思っていた。だが、景虎はその母親を思い出させる。優しさという刃で傷を舐め回す存在。
アレク
  • by s
  • 2009-05-09 20:11
  • edit
...言ったらすっきりしたな。
景虎
  • by t
  • 2009-05-09 20:11
  • edit
そいつは結構だったな。嫌だろうが辛かろうが考えて答えを出すしかあるまい。母親から逃げここからも俺からも逃げても、自分自身からは逃れられないぞ、GD。それから、ここで共存するつもりなら、お前は感情のセーブを憶えろ。あんな真似をして、危険なのは俺じゃない。お前達の方だ。
アレク
  • by s
  • 2009-05-09 20:12
  • edit
言われなくてもわかってるよ。
ナレーター
  • by t&s
  • 2009-05-09 20:12
  • edit
悪びれる様子もなく そう言うと、壁際のソファーにゆっくりと腰掛ける。景虎は相手の真意を量るようにかがみこむともう一度翠の瞳を見つめた。どこか拗ねた子どものような色。どこまで話が通じているのか景虎にはつかめなかった。
景虎
  • by t
  • 2009-05-09 20:13
  • edit
生き物は、全て与え合って共存している。人同士もそうだ。目に見えるものも見えないものも。いいか、GD。いつかお前達の正体が分かっても、別にかまわないと受け入れられる人間を増やせ。フレイのように
ナレーター
  • by t
  • 2009-05-09 20:14
  • edit
自分自身の存在の魅力で。いつかその関係が後ろめたさを薄めさせるかもしれない。いくつもの術を探し道を探るしかない。景虎は重い声でそう言うと、目線を上げ両腕を伸ばして重いカーテンを左右から引き寄せた。残った光の筋がアレクを照らし銀髪を輝かせた。
景虎
  • by t
  • 2009-05-09 20:14
  • edit
その程度に人に溶け込め。…多分ここは、それに適切な場所のはずだ。
ナレーター
  • by t
  • 2009-05-09 20:14
  • edit
景虎は中央のテーブルに近寄ると、制服のポケットから何かを取り出しそこへ置いた。小さな白い塊はまっさらの包帯だった。景虎は振り返ってアレクを一瞥して言った。声は冷たく表情は硬かったけれど。
景虎
  • by t
  • 2009-05-09 20:15
  • edit
その過程でどうしようもなく餓えたら、俺が気を流してやる。…しばらく固定だけはしておけ。邪魔をしたな
ナレーター
  • by t
  • 2009-05-10 08:20
  • edit
景虎の意識も少しずつ動き始めていた。立場の違う他者とお互いの心情を吐露しつつぶつかり合うのは当然のことだ。景虎は言葉をそう残すと、きびすを返しドアの向こうへ消えていった。遠ざかっていく硬い足音。
アレク
  • by s
  • 2009-05-10 08:21
  • edit
景虎君さ、気を流してくれるより...僕を抱きしめてキスしてよ。

..なんだか...こんな時
ナレーター
  • by s
  • 2009-05-10 08:21
  • edit
ニコルが側に居て欲しかったなぁ.....と、温度の下がった広い部屋の中で呟き、テーブルの上の白い包帯の束をみつめる。すると、今まで聞いたことのない音を耳にした。それが自分の嗚咽だと気付くのに どれだけの時間があっただろう。窓の隙間から仰ぎ見ると、晴れ渡る青空が垣間見えた。

以下は、ドラマ執筆管理人の書き込み専用です。

他者様の書き込みがあった場合は、予告なく削除させて頂きます。

書込者
キャラ名
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