忍者ブログ
不知夜月とJardin de ciel(空の庭)のコラボ頁です。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

† 闇に咲く悦楽の閨 第2章 4幕 †

夢の時間は過ぎ、夜も明けようとする頃。ニコルの帰りを待ちわびていたアレクがヴァンパイアの哀しい現実を突き付ける。一方のエドリックもジョフロアに不思議な感覚を打ち明けていた。そして、ヴァンパイアを排斥しようとする景虎に対してフレイは…。三組の朋友・幼馴染が織りなす三者三様。

拍手

PR

Drama

ナレーター
  • by s
  • 2009-03-07 21:34
  • edit
まだ薄暗い明け方、ニコルはエドリックとの夢の様な逢瀬からGDの待つ部屋に戻って来た。それでもなるべく気付かれない様そっとドアを開ける。
アレク
  • by s
  • 2009-03-07 21:35
  • edit
ニコル?
ニコル
  • by s
  • 2009-03-07 21:35
  • edit
....起こした?ごめん。
アレク
  • by s
  • 2009-03-07 21:37
  • edit
いや、寝てない。
ナレーター
  • by s
  • 2009-03-07 21:39
  • edit
そんな気はしてたが素振りには見せない様、GDの方には向かずに答える。
ニコル
  • by s
  • 2009-03-07 21:40
  • edit
なんでさ?傷、まだ痛むの?
アレク
  • by s
  • 2009-03-07 21:40
  • edit
こっち来て。ニコル
ナレーター
  • by s
  • 2009-03-07 21:44
  • edit
伏せ目がちにGDをちらりと見てから、ゆっくりと窓辺のベッドに歩み寄る。
アレク
  • by s
  • 2009-03-07 21:44
  • edit
どこにいたの?
ニコル
  • by s
  • 2009-03-07 21:45
  • edit
どこでもいいだろ。君には関係ない。
アレク
  • by s
  • 2009-03-07 21:46
  • edit
エドリックと一緒だったの?ずっと?
ニコル
  • by s
  • 2009-03-07 21:48
  • edit
だったら何?
ナレーター
  • by s
  • 2009-03-08 00:11
  • edit
外が薄く白み始め、ぼんやりとGDの顔が見えた。遠目にも一晩中泣き腫らしたうさぎの様な赤い目元が嫌でも目に入り胸の奥がちりっと小さな音を立てる。心持ち溜め息をつきながらニコルはGDのベッドにゆっくり腰掛けた。
アレク
  • by s
  • 2009-03-08 00:17
  • edit
知ってるくせに。僕がどれだけ君のこと想ってるか知ってるくせに...ニコルはずるいよ。
ナレーター
  • by s
  • 2009-03-08 00:29
  • edit
又、枕に突っ伏したGDの嗚咽が聞こえ彼の軀から匂い立つ芳香が部屋に漂う。その様子になす術もなくニコルはGDの柔らかい髪を撫でた。思えば、まだ自分が人間だった頃、いつも髪を撫でてくれたのは ここにいるGDだけだった。その頃からGDは何も変わっていない。変わったのは自分の方だ。長いのか短いのかさえ分からなくなっている時の流れの中で、いつも変わらぬ愛情を注いでくれるのは彼しかいない。そんな分かりきった事を今まで何度 頭の中で反復しても答などないというのに...
アレク
  • by s
  • 2009-03-08 00:34
  • edit
どうせ....覚えてないよ...エドリックは
ニコル
  • by s
  • 2009-03-08 00:35
  • edit
そんな事、君に言われなくても わかってる。
アレク
  • by s
  • 2009-03-08 00:36
  • edit
エドリックだけじゃない!今までも、これからも、誰も覚えてないのに...馬鹿だよニコルは
ナレーター
  • by s
  • 2009-03-08 07:38
  • edit
そんな事分かっている、と言いかけてニコルは口をつぐんだ。ついさっきまで自分の心を満たしていた甘く溶ける様な瞬間の一つ一つがバズルの様に崩れ出し、代わりに頭を擡げて来るジークのあの言葉...
「所詮、人など我々にとって長い旅の停車駅に過ぎない」
ニコル
  • by s
  • 2009-03-08 07:46
  • edit
停車駅、か。
ナレーター
  • by s
  • 2009-03-08 07:48
  • edit
柔らかい朝の光が容赦なく、それでいて優しく部屋を満たし始めニコルは重い瞼を静かに閉じた。
ナレーター
  • by z
  • 2009-03-08 08:07
  • edit
一方、エドリックはベッドに転がり、妙な違和感に苛まれて自室の天井を睨みつけていた。
不思議な感覚に気づいたのは寮へと戻る最後の扉が開かれる直前だった。重厚な鉄の扉の前で、エドリックはニコルの肩を抱き寄せて銀の髪にくちづけた。そしてゴンドラの浮かぶ地底湖でまたの逢瀬を誓おうと、元来た暗闇を振り返り、そこへ辿る道を思い浮かべようと記憶を巡らした時だ。道が思い出せないのだ。
エドリック
  • by z
  • 2009-03-08 08:08
  • edit
ニコル愛している。また会おう
ナレーター
  • by z
  • 2009-03-08 08:08
  • edit
そう言って寮の三階の暗がりで唇を寄せて囁き、光耀寮の両翼にあるそれぞれの部屋に向かうために別れた。しかし、その強烈な幸福感にも係わらず、ニコルが自分の腕の中で達した時の切なげな顔まで思い出せずに、再び愕然とした。
エドリック
  • by z
  • 2009-03-08 08:09
  • edit
…ジョフに話さないと
ナレーター
  • by z
  • 2009-03-08 08:09
  • edit
自分のニコルへの愛情は微塵も疑ってはいない。なのにこの薄情者のような、稀薄感は何だ? 焦りの感情とともに、ほんの少しの忘却への恐怖を感じて、エドリックは隣の部屋のジョフロアを呼ぶために犬笛を取り出した。
ジョフロアはエドリックの英国時代からの親友で、彼の生徒会長就任時には、わざわざ副会長として呼び寄せた逸話を持つほどの仲だ。エドリックは彼に何でも打ち明けていた。普段恐ろしく寝覚めの悪い人狼のジョフロアも、この高い周波数帯の音を聞き付けて起きてくる。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-03-08 08:10
  • edit
エディ、何事だ? こんな明け方に…
ナレーター
  • by z
  • 2009-03-08 08:13
  • edit
言葉では詰っても心配そうなジョフロアをバルコニーから迎え入れながら、エドリックは彼がソファに座るのも待ち切れずに、言葉を切った。
エドリック
  • by z
  • 2009-03-08 08:13
  • edit
実は、ニコルと…
ナレーター
  • by z
  • 2009-03-08 08:14
  • edit
そこまで言って、エドリックは哀しげな困惑の表情を浮かべた。ニコルとは確かに会った。だが何をしたのか、思い出せない。
エドリック
  • by z
  • 2009-03-08 08:14
  • edit
ジョフ…。どうしよう…
ナレーター
  • by z
  • 2009-03-08 08:15
  • edit
突っ立ったまま呆然としているエドリックを見て、流石にジョフロアも眠気が吹き飛んだ。肩を抱いてソファに座らせる。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-03-08 08:16
  • edit
君が落ちつくようにハーブティーを淹れるよ
ナレーター
  • by z
  • 2009-03-08 08:17
  • edit
そう言い残して、自室で育てている植物の葉を取りにジョフロアが一旦部屋に戻ろうとするのを、エドリックが遮った。
エドリック
  • by z
  • 2009-03-08 08:17
  • edit
…行くな。その間に忘れてしまう
ジョフロア
  • by z
  • 2009-03-08 08:18
  • edit
わかった。なんだかよく分からないが、忘れてしまう前に話せ。とにかく全部
ナレーター
  • by z
  • 2009-03-08 08:19
  • edit
隣りに座ってジョフロアが肩を抱くと、エドリックはその胸に頭をコトンと預けた。
エドリック
  • by z
  • 2009-03-08 08:20
  • edit
…ジョフ。実はニコルと会った。幸せな逢瀬だった。私は今、満ち足りている。
…だけど、それ以上の事が思い出せない
ジョフロア
  • by z
  • 2009-03-08 08:21
  • edit
…なんだ? のろけか?
ナレーター
  • by z
  • 2009-03-08 08:21
  • edit
ジョフロアがぽつんと言った合いの手のような言葉にも、エドリックは笑みも返さない。
エドリック
  • by z
  • 2009-03-08 08:22
  • edit
…多分、彼を抱いた。…多分だ。何故なら、私の下半身は、今、恐ろしくすっきりしている
ナレーター
  • by z
  • 2009-03-08 08:24
  • edit
ジョフロアは思わず苦笑してエドリックをたしなめた。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-03-08 08:24
  • edit
…エディ。それ以上の詳細は誰だって人には言わないよ
エドリック
  • by z
  • 2009-03-08 08:25
  • edit
違う。覚えていないんだ。全く。…しかも、この忘却現象は、時間を追うごとに、激しくなっていく。…夜が明けきる頃には、ニコルの存在さえ忘れてしまいそうな勢いだ
ジョフロア
  • by z
  • 2009-03-08 08:32
  • edit
…なるほど。それで僕を日記帳代わりに呼んだのか。わかった。覚えておくよ。君の代わりに
エドリック
  • by z
  • 2009-03-08 08:36
  • edit
…ああ。そうしてくれ。君には私のすべてを知っていて欲しい。…ただそれだけでいいから
ジョフロア
  • by z
  • 2009-03-08 08:37
  • edit
了解。恋してる君を応援してるよ、エディ。幸せだったんだろう? …君が幸せなら、僕も幸せだ
ナレーター
  • by z
  • 2009-03-08 08:38
  • edit
ジョフロアは、今は膝の上にあるエドリックの顔を覗きこんだ。
エドリック
  • by z
  • 2009-03-08 08:38
  • edit
ああ、幸せだ。君にも分けてあげたいくらい、幸せだ
ジョフロア
  • by z
  • 2009-03-08 08:39
  • edit
ごちそうさま、エディ
エドリック
  • by z
  • 2009-03-08 08:39
  • edit
このまま寝ていいかな…?
ジョフロア
  • by z
  • 2009-03-08 08:40
  • edit
いいよ。そのかわり、あとで何かおごれよ
エドリック
  • by z
  • 2009-03-08 08:41
  • edit
ああ。キスをたくさんあげる…
ジョフロア
  • by z
  • 2009-03-08 08:42
  • edit
…そうじゃなくて
ナレーター
  • by z
  • 2009-03-08 08:44
  • edit
ジョフロアは呆れて天を仰ぐ。部屋には柔らかな陽の光が差し込み始めていた。忘却は優しさでもある。ニコルの長い生に、人であるエドリックが追いつく筈もない。愛して悲しんで老いていく友など見たくなかった。もし覚えていなくても、エドリックならニコルと新しい恋を始める。きっと。性懲りもなく。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-03-08 08:44
  • edit
…それでいい
ナレーター
  • by z
  • 2009-03-08 08:45
  • edit
親友の膝の上でエドリックが安らかな寝息を立て始めた。全てを忘れ去っても、きっと満ち足りた幸福感だけが残るのだろう。幸せのベールに包まれたような笑みを湛えた寝顔に、ジョフロアが小さく囁いた。
ジョフロア
  • by z
  • 2009-03-08 08:45
  • edit
幸せにおなり、エディ…
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 16:31
  • edit
朝の清々しい日差しが溢れた廊下に、景色に溶け込むように一人の男が立っていた。光を弾く柔らかな金髪が風に揺れる。その長閑な風景に突き刺さるような傍若無人な早い足音が遠くから響いた。フレイは扉にもたれかかって腕組みをしたまま、理事長代理の執務室に戻ってきた景虎を斜めに見つめた。
フレイ
  • by
  • 2009-03-12 16:32
  • edit
ご機嫌麗しゅう。その眉間の縦皺がいつも素敵だ
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 16:33
  • edit
景虎はフレイの姿を見た途端、不愉快そうに眉を寄せて足を止めた。気まぐれに、意味不明に現れる男。大抵の人間を好まない景虎だが、このエスコート部の部長が一際気に入らなかった。
景虎
  • by
  • 2009-03-12 16:33
  • edit
そこをどけ
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 16:34
  • edit
冷たい、必要最小限のセリフ。
フレイ
  • by t
  • 2009-03-12 16:35
  • edit
景虎。顔色が冴えないな。忙しすぎるんじゃないのか?
景虎
  • by t
  • 2009-03-12 16:36
  • edit
邪魔だ
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 16:37
  • edit
当然のようにフレイと景虎の会話はかみ合わない。二人はしばらくその場で睨みあった。対照的な二人だった。フレイの方が幾分細いものの、背格好はよく似ている。けれど纏う雰囲気は正反対だ。金と白と光の柔らかさを感じさせるフレイの存在感と、黒と薄茶と影の厳しさを背負う景虎。いつまでも動こうとしない態度に焦れた景虎がフレイの胸元を掴み上げ強引に退けようとする。
フレイ
  • by t
  • 2009-03-12 16:38
  • edit
乱暴な奴だな。離せよ
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 16:38
  • edit
浅黒い肌の手に襟元の上品なレースが握りつぶされる。景虎の苛立ちの浮かんだ目をフレイは真っ直ぐに見ていた。今はこんな関係でも、景虎にとってフレイは唯一の幼馴染だ。
フレイ
  • by t
  • 2009-03-12 16:39
  • edit
離せ。離さないと…
景虎
  • by t
  • 2009-03-12 16:39
  • edit
離さないと、何だ?
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 16:39
  • edit
せせら笑う景虎の表情に険しい険が浮かぶ。が、いきなりフレイは一歩前に踏み出し近寄るときっぱりと言った。
フレイ
  • by t
  • 2009-03-12 16:40
  • edit
キスするぞ。昔みたいに
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 16:40
  • edit
バッ! と音がするほど素早く景虎が飛びのいた。表情に浮かんだ嫌悪をみると、幼い頃に相当そんなことをされたらしい。
景虎
  • by t
  • 2009-03-12 16:42
  • edit
俺に近寄るな
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 16:42
  • edit
しっしっと猫を追い払うように手を振って景虎は素早くドアの鍵を開けて中に滑り込んだ。もちろんフレイも後を追う。しかし半分ドアにはさまれた格好になったフレイは悲鳴を上げた。
フレイ
  • by t
  • 2009-03-12 16:42
  • edit
話があるんだ。いいのか、廊下に響き渡るぞ! お前、アレクに血を…!
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 16:43
  • edit
大声で叫んだフレイの腕を乱暴に引っ張って部屋に引き入れると、景虎が怒鳴った。
景虎
  • by t
  • 2009-03-12 16:44
  • edit
奴らのことを大声でわめくな!
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 16:44
  • edit
苦い表情で釘を刺す景虎にフレイは妙に嬉しそうに笑った。
フレイ
  • by t
  • 2009-03-12 16:45
  • edit
それなりに気は使ってくれているわけかい? アレクに血をあげたって? いいとこあるじゃないか、景虎。…でも、まあ、代金が高すぎる気がするんだがね。
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 16:46
  • edit
豪華だがシンプルで味気ない彼の執務室。主が不在だった部屋は、まだカーテンがひかれていて薄暗い。味も色気もないと、フレイの目には映ったらしい。今度花を贈るよ、なんて訳のわからないことをこんな時に口走るフレイの神経が景虎には理解できない。
景虎
  • by t
  • 2009-03-12 16:47
  • edit
肋骨で済んでありがたいと思え
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 16:48
  • edit
伝わる衝撃で景虎にも分かっていたらしい。なのに平然と言い捨てた声の容赦のなさ。そこに込められた嫌悪に、笑みを浮かべていたフレイの顔が白く色を変えた。
フレイ
  • by t
  • 2009-03-12 16:48
  • edit
…お前、変わったよ。昔から意地悪だったけれどな。最初に会って二三日で、理由も分からず噴水に突き落とされたもんな、私は。
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 18:14
  • edit
景虎が嫌がるのを知っていて、フレイはわざと子どもの頃のことを口に出す。だが、もう景虎は取り合わないのを悟ってフレイは話を戻した。
フレイ
  • by t
  • 2009-03-12 18:14
  • edit
お前、血の気多すぎだ。まったく…昏倒して反撃できないぐらい抜いてやりゃよかったのに。可愛そうに真っ青だったよ、アレク。治りがはやかったとしても痛みは人とそう変わらないだろう。
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 18:15
  • edit
当然、切り捨てるように言い返すと思われた景虎がいきなり動きを止めた。そしてフレイの顔をじっと見つめたまま沈黙する。流れた気まづげな間の後、部屋の中へ踵を返しながら景虎が独りごちた。
景虎
  • by t
  • 2009-03-12 18:15
  • edit
なるほど…。痛みは同じか。その辺りが奴らの弱点かもな…
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 18:16
  • edit
フレイからは景虎の表情は見えない。だが、その声は酷く冷たく響いた。フレイが声をかけるのを躊躇うほど。
景虎
  • by t
  • 2009-03-12 18:16
  • edit
フレイ。お前はヴァンパイアの弱点を知っているか?
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 18:17
  • edit
胸を押さえて蹲っていたアレクの姿を思い出しながら、景虎は呟いた。たとえ彼が気に入らなかろうが、フレイがヴァンパイアたちに最も身近な人間の一人であることは確かだ。机に向かうとデスクトップのPCのスイッチを入れる。微かな振動と起動の音がして明るい光が険しい表情で覆ったままの彼の顔を照らした。
景虎
  • by t
  • 2009-03-12 18:17
  • edit
日光には弱いが致命傷でもない。…やつらは相当強い生命体だ
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 18:18
  • edit
景虎が制服のポケットから取り出したメモリースティックを差し込むと、ディスプレイには様々な画面が動き流れていった。映画の場面や絵画、小説の挿絵、研究家の報告書。眉唾ものから真面目な意見まで、ヴァンパイアの情報。景虎は無表情にそれらを眺めている。
フレイはその横顔に眉を顰めた。景虎の興味がどこに向かっているか瞬時に理解する。学園を守る立場の景虎と、面倒なことを引き起こすのが趣味だという目覚めたジーク。相性の悪い彼らのために、今まで保たれてきたバランスが崩れそうなのだろうか。
フレイ
  • by t
  • 2009-03-12 18:19
  • edit
オカルト研究家にでもなるつもりなのか? 止めとけ、似合わない
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 18:19
  • edit
重くなってしまった空気を振り払おうと、軽い口調でそう言ってフレイは奥に進むと勝手にカーテンを開けた。シャッと音がして、斜めに空間を裂く眩しさで陽の光が差し込んだ。辺りの視界が一気に開け、反対にPCのディスプレイは力を弱めて沈黙すろ。景虎は額に手をやって眩しげにフレイを睨んだ。陽の元で金髪を輝かせ微笑するフレイは能天気そうな“自称天使様”な様子で、いっそう景虎を苛立たせた。
景虎
  • by t
  • 2009-03-12 18:21
  • edit
お前は何とも思わんのか? 奴らは人を喰らう生物だぞ
フレイ
  • by t
  • 2009-03-12 18:21
  • edit
不思議な生き物ってことか? まあね。でも実際、どうしたってそこに居るんだから…
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 18:21
  • edit
相変わらず噛みあわない会話。考えたって仕方ないというようにフレイは肩を竦め首を振る。景虎はまた何かが引っかかったように言葉を切った。
景虎
  • by t
  • 2009-03-12 18:23
  • edit
……。大体、どうしてあんな連中がこの学園に居るんだ? 一体いつから…
フレイ
  • by t
  • 2009-03-12 18:23
  • edit
今更、何を言っているんだよ。気になるなら3年前に理事長に聞けばよかったのに
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 18:23
  • edit
フレイは菱形の美しい青いステンドグラスで飾られた大きな窓を勝手に開けた。朝の新鮮な空気が緩やかに流れ込み淀んだ部屋の空気を散らしていく。3年前、高等部に進学した彼らは理事長に呼び出され、あの二人の転入を知らされた。理事長は景虎には特異な体質の彼らへの配慮を命じ、フレイには二人のエスコート部への勧誘を勧めた。エスコート部員は一般学生と違い何かと優遇される立場だからだ。
フレイ
  • by t
  • 2009-03-12 18:24
  • edit
あの時、何て言ってたっけ…理事長は…。確か、契約…?
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 18:24
  • edit
美しく聡明な権力者の顔を思い出しながらフレイは呟いた。確執を抱く母親の言葉に、息子の景虎がそっぽを向いていたことまで。
景虎
  • by t
  • 2009-03-12 18:26
  • edit
…契約により、彼らには学籍がある、と。…そう言っていたな、確か
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 18:26
  • edit
フレイに記憶の糸を手繰られて景虎が続けた。景虎が生まれる前からここにいる、とニコルは言った。一体、いつ、誰と誰が交わした契約なのだろう。景虎が考え込んでいる間に、フレイはそっと近寄ってPCの電源を落としてしまった。いきなり息絶えたように映像は消え光が失せる。じろり、と睨んだ景虎に彼はにっこりと笑った。
フレイ
  • by t
  • 2009-03-12 18:27
  • edit
ひとつ思いついたんだが、彼らの弱点はこの私ってのはどうだい? 彼らの属するエスコート部の部長だからね
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 18:28
  • edit
気を逸らすための馬鹿馬鹿しい冗談だとわかっていながら、向き直った景虎の口元に意地悪い笑みが浮かんだ。フレイの首にピンと伸ばした人差し指を突き刺すように食い込ませる。
景虎
  • by t
  • 2009-03-12 18:29
  • edit
ではナイフをこう突きつけて、やつらに出て行けと勧告してみるか
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 18:33
  • edit
底光りする黒い瞳に込められた迫力に、フレイは一瞬言葉をなくした。何度目か、二人は無言で睨みあった。
フレイ
  • by t
  • 2009-03-12 18:34
  • edit
景虎…一体、彼らをどうしたい
景虎
  • by t
  • 2009-03-12 18:34
  • edit
さあな
フレイ
  • by t
  • 2009-03-12 18:34
  • edit
…嫌なヤローだな、お前
景虎
  • by t
  • 2009-03-12 18:35
  • edit
今更か
フレイ
  • by t
  • 2009-03-12 18:36
  • edit
絶対に嫁になど行ってやらんぞ!
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 18:36
  • edit
一声怒鳴って意味不明の捨て台詞を残すと、フレイは派手にドアの音を立てて出て行った。幼馴染同士がどこかで掛け違えたボタン。昔は笑顔で一緒にいられた。なのに今はお互いが何を考えているのか、探る糸口の会話さえうまくできない。健康的とはほど遠く忙しい景虎の表情に浮かぶ苛立ちが、フレイには不安だった。
景虎
  • by t
  • 2009-03-12 18:37
  • edit
契約…か
ナレーター
  • by t
  • 2009-03-12 18:37
  • edit
勝手に開けられた窓を乱暴に閉め半分ほどカーテンを引く。いつもいつも気まぐれに近寄っては彼の感情を波立たせる存在。薄暗い部屋の中、フレイの残像など追い払うように軽く頭を振って景虎は呟いた。ヴァンパイア達の謎を紐解く鍵が、そこにあるように思えた。

以下は、ドラマ執筆管理人の書き込み専用です。

他者様の書き込みがあった場合は、予告なく削除させて頂きます。

書込者
キャラ名
台詞
パスワード

Copyright © 月と空のコラボ空間 : All rights reserved

「月と空のコラボ空間」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7 & Zippy
忍者ブログ [PR]

HOME