記憶に残らない筈のヴァンパイアとの性。ただ一度だけ恋人との逢瀬を記憶に残して貰ったエドリックは…。(threesome=3P性描写アリ)
ナレータ-:
「それは一か月前の出来事であった。話はニコルが景虎の為にジークを呼びに行った日にさかのぼる。その算段をつける為、アレクと中庭で別れてから、その足でニコルは放課後の生徒会室に向かっていた。呼ばれれば出向くが、ニコルが自らそこを訪れる事は殆どなかった。まして生徒会室はエドリックの領域であり、副会長であるジョフロアとの密接な関係を目の当たりにする場所でもある。急ぐ理由がある訳ではなかったが、閨の記憶がない彼らの関係では電話で済ませる訳にはいかず、ニコルはドアを叩いた。」10/22 13:35
効果音:
「コンコン」10/22 13:35
ジョフロア:
「どうぞ」10/22 17:02
ナレータ-:
「ジョフロアの声が聞こえて、ドアが開けられた。いつもの柔らかい笑み。銀髪と黒髪こそ違え、少し淋しげな面ざしも背格好も、この二人は似ているかもしれない。歓待の挨拶がニコルになされ、奥の生徒会長執務室に通される。机の上に行儀悪く足を乗せていたエドリックが、椅子をくるりと回転させて軽やかに立ち上がった。ニコルからの初めての訪問に満足そうな笑みを湛えて両手を広げる。」10/22 17:02
エドリック:
「やあ、君からおでましとは。今夜は祝いの宴かな。…ジョフ、席をはずせ」10/22 17:03
ジョフロア:
「ああ、もちろん。先に寮に帰って食事も一人で済ませておくよ、エディ」10/22 17:03
ナレータ-:
「少し横暴な友には慣れているのか、優しい微笑みでジョフロアは答えた。午後の陽は傾いて、暮れかけている。ジョフロアが上着と身の回りのものをもって部屋を出て行くと、エドリックはそのドアの鍵を後ろ手にかけた。」10/22 17:03
エドリック:
「会いたかった、ニコル」10/22 17:04
ナレータ-:
「エドリックはつかつかとニコルに歩み寄ると、いきなり壁に相手の身体を押しつけ、くちづけた。来訪の要件を聞くより、ずっとそちらが大切だとでもいうように。自分の情熱を一方的に押しつけ、ニコルが体温をふわりと上昇させた事に満足すると、エドリックはやっと本来の話題に戻った。」10/22 17:04
エドリック:
「来訪の用件は何だ?」10/22 17:04
ニコル:
「すみません。いきなり訪ねたりして....」10/22 17:34
ナレータ-:
「右手で胸を抑え、目を瞑りながら先程のキスで早くなった己の鼓動を整える。」10/22 17:36
ニコル:
「あの...ジークに会いに行くので、もしかすると暫くこちらに帰れないかもしれません。でも、必ず戻ってきます。以前の様な事は決してありません。それだけ貴方にお伝えしたくて...」10/22 17:41
ナレータ-:
「ニコルは一気に用件を口にした。以前一度、ニコルは2人の間の情事の記憶をすべて忘れるエドリックとの関係に絶え切れず、人知れず眠りに入ろうと彼の前から姿を消した事があり、その時は記憶のない彼がニコルの眠る地底湖まで探しに来てくれた。その為、今回は「眠りに入る」のではない事、もしくはエドリックから逃げるのではない事をきちんと話しておきたかったのだ。」10/22 17:52
エドリック:
「わかった。君たちの事情を深く問うつもりはない。…だがその前に、もちろん、いいんだろう?」10/22 17:56
ナレータ-:
「恋人同士が会えない間の辛さ。それはエドリックにはない。というより、彼はニコルと恋人同士として日々を過ごしている記憶がない。だが、ニコルが暫く姿を消すという事は、エドリックにとって、片思いの相手を暫くその視界から見失う事になる。心情的にはそうだ。だが、彼のメモによれば、二人は肉体関係にある。だから、エドリックはいつもニコルの状況に合わせて、言葉を言った。」10/22 17:56
エドリック:
「暫く会えなくなるなら、その前に君をまた愛したい」10/22 17:56
ニコル:
「まさか...今、ここで?」10/22 18:12
エドリック:
「ここは密室だし、適当なソファもある。…だが、舅殿に我々の仲が良いところを知って貰うのもいいかな。君たちの棲み処で、君に思いっきり嬌声を上げさせるのもやぶさかではないよ」10/22 18:31
ナレータ-:
「エドリックはニコルが赤くなるのも構わずにニヤリと笑った。以前、ジョフロアに導かれて訪れた地底湖。その場所の記憶の残すために、彼は長時間ニコルに手を触れずに待った。その記憶によれば、あの場所が彼らの領域の筈だ。」10/22 18:31
ニコル:
「エドリック...」10/22 20:31
ナレータ-:
「冗談なのか本気なのか....今から一人で出向こうとしていた地底湖でエドリックと密事に及べば、ジークが目覚める可能性は確かにある。ジークを目覚めさせるのに自分に秘策があった訳ではないニコルにとって、エドリックの申し出は悦楽で自分自身を満たし、今回の目的も果たせる両方の意味を含んでいた。だが、それに彼を巻き込みたくないのが本心だ。しかし、甘美な彼の誘いは既にニコルの中心に火をつけ始めていた。」10/22 20:32
エドリック:
「…案外、その気があるみたいだな」10/22 20:49
ナレータ-:
「うっすらと不敵な笑みを刷いたニコルの頬にエドリックが手を添えて、親指でなぞる。時々垣間見えるニコルの強気。その御し難さがエドリックの征服欲をそそった。竜を御すという騎士。その荒々しさをエドリックは秘めている。」10/22 20:49
エドリック:
「君の声で、棺桶の中の舅殿を勃たせてやるか? ニコル」10/22 20:52
ニコル:
「エドリック.....お願いです。このまま私を一人で行かせて下さい。」10/22 20:54
エドリック:
「君の瞳の中に、愛し合いたいと書いてあるのに?」10/22 20:57
ニコル:
「....」10/22 21:00
ナレータ-:
「会えば求めたくなる。触れて欲しくなる。言葉とは裏腹にニコルの細く白い首筋にはうっすらと汗が滲み出ている。先程までジョフロアがいたこの居室では、欲望の制御が効かない事は承知だったはずだ、と。」10/22 21:00
効果音:
「パンッ」10/22 21:06
ナレータ-:
「ニコルがエドリックの手を撥ね除けた。そのままするりとその場をすり抜けドアに向かって走り出す。」10/22 21:09
エドリック:
「ここで? それともあのゴンドラで? どっちがいい?」10/22 21:12
ナレータ-:
「逃れようとしたニコルの手頸を強引に掴んで、エドリックがもう一度腕の中にその身体を包み込む。彼は、既にそれ以外の答えを要求していなかった。ニコルの首筋をエドリックの唇が這った。ヴァンパイアさながらに軽く歯を立てて、舌を走らせる。一つだけ外したシャツのボタンからもニコルの素肌へと手が忍び込んだ。」10/22 21:14
エドリック:
「…背徳が好きなんだろう? …知ってる。私がいざなってやる」10/22 21:14
ニコル:
「後悔しても知りませんよ」10/22 21:25
エドリック:
「それは、君の恋人になる前に言え。…でも、その答えは以前に言った筈だ。ダンスの時だったかな」10/22 21:27
ナレータ-:
「蒼い月光の海でのダンス。あれが二人の馴れ初めだった。戯れにしては、真剣過ぎた自分を思い出して、エドリックは苦笑する。」10/22 21:28
ニコル:
「『いつか、破滅への門を君と共に叩く』...そうおっしゃいましたね」10/22 21:32
ナレータ-:
「そう言うとニコルはエドリックの手を取り、静かにドアを開け地底湖への道を踏み出した。」10/22 21:34
エドリック:
「Voilà! あれが私たちのウォーターベッドだな」10/22 22:32
ナレータ-:
「地底湖に浮かんだゴンドラを望む場所に立って、エドリックはニコルの肩を抱き寄せた。」10/22 22:32
エドリック:
「…さっきのことだが。あの時、私は君が人間じゃないって知ってたんだ。でも、そんな事好きになる条件には関係なかった」10/22 22:33
ナレータ-:
「エドリックは見つめてくる翠の瞳にくちづけた。」10/22 22:33
ニコル:
「...何故」10/23 05:22
ナレータ-:
「.....あの時、自分は彼の血を欲しがったのか、彼自身を欲しかったのか分からなかった。でも、今なら分かる。暉堂一族の庇護の元、いつもの様にアレクと2人、数年学生達の間に籍を置く。ただ行きていく為だけに繰り返されるルーティン。そんなモノクロだったニコルの時間に彩りを与えてくれたエドリック。だからこそ どんな事があっても彼を失いたくない。.....2人の口づけが一層深くなる。」10/23 05:44
ニコル:
「...貴方は私を愛することが出来るのでしょう」10/23 06:06
ナレータ-:
「今、こうして触れている唇の感触さえ根こそぎ捥取られてしまうのに....彼に触れられ、愛される度に自分の中の赤い熱情は膨れ続けその限度を知らない。躯中の細胞に愛の刻印を持つニコルと、メモの中にだけ残された2人の記憶を辿るエドリック。情事を重ねれば重ねる程反比例していくはずの2人の温度差。....それ故、いつ終わりを告げてもおかしくはない刹那の恋にも関わらず、その温度差を全く感じさせないエドリックの心情に触れた時、透き通る翠の瞳から一筋の涙が頬を伝った。」10/23 06:24
ニコル:
「私は時々、貴方を壊したくなる。ご存知でしたか?」10/23 06:38
ナレータ-:
「不敵な微笑みを返すエドリックが、言葉の代わりに岩に捲かれていた舫い綱を手に取った。黒光りするゴンドラがゆっくりと近づいてくる。その中にゆらりと動く人影。」10/23 07:00
ジーク:
「この場合、私の方が出歯亀か?」10/23 07:01
ニコル:
「ジーク!」10/23 07:01
ナレータ-:
「いるはずのない人物を前に一瞬立ち尽くす2人。煌煌と光る天蓋を持つ閨の地底湖。ニコルははっと我に返り、今回の来訪の目的を果たそうと自分を奮い立たせた。」10/23 07:13
ニコル:
「Mr.暉堂が貴方にお会いしたいと彼からの伝言を預かってきました。目的までは伺っていません。ですが、面倒だけは勘弁して頂きたい。これは私からのお願いです。」10/23 07:17
ジーク:
「なるほど。で、今日の宴はThreesomeかい?エドリック。位置の選択権くらいは君に譲ってもいいが」10/23 07:37
ナレータ-:
「に、と嗤い毒を吐く割に、その物腰には一遍の無駄がなく むしろ風格さえ漂わせる闇の主。破滅の門が大きな口を開けて手招きしている。」10/23 07:43
ニコル:
「帰りましょう、エドリック。用件は済みました。」10/23 07:46
ナレータ-:
「エドリックが帰ろうと踵を返したニコルの手首を掴んだ。」10/23 11:58
エドリック:
「用件は済んでないぞ、私の用件は。…それに、舅殿も私に用ありのようだ」10/23 12:01
ナレータ-:
「エドリックはジークに慇懃に頭を下げる。だが、顔には不敵な笑みを浮かべて、斜めに見上げた視線は挑戦的だった。」10/23 12:02
エドリック:
「私の一族には伝説があります。昔祖先の騎士がドラゴンを退治に行き、その巣穴に入り、その姫を娶って戻ってきたと。だから、我が一族の血には竜の血が流れていると。私は何事も怯みません。破滅の淵から必ず帰還します」10/23 12:02
ナレータ-:
「エドリックは膝を折って、騎士の如く最敬礼した。輝く金髪が割れて、そこから覗くうなじがヴァンパイアたちの視線を誘っているのもお構いなしだ。」10/23 12:03
エドリック:
「決死行は好みです、ジーク。但し、ニコルが望まないことは私は致しません」10/23 12:03
ジーク:
「采配は君に振られたぞ、ニコル」10/23 12:14
ニコル:
「....エドリック、本当に望んでいるのですか?こんな馬鹿げた事を...」10/23 12:15
ナレータ-:
「ありありとした困惑がニコルの寄せた柳眉に色濃く浮かび、首を大きく横に振る。」10/23 12:21
ニコル:
「選択の余地などありません。伝言は伝えました。行きましょう、エドリック。」10/23 12:22
エドリック:
「君は私を壊したくなる…先程そう言ったね? 仮面を取った君も見たいな」10/23 12:24
ナレータ-:
「まるでうわの空のように、エドリックが天蓋を見上げながら言った。その声が反響して、地底湖に、そしてニコルの心に、妙な余韻を持って広がる。」10/23 12:27
ジーク:
「ニコル。もし......彼に今日の記憶を残すと私が言っても?」10/23 12:29
ナレータ-:
「既に去りかけていたニコルの足がぴたりと止まった。先日、『忘却現象を起こさない方法を一つ思いついた』と言ったジークの言葉がニコルの脳裏に蘇る。」10/23 12:31
ニコル:
「...今、なんと?....」10/23 12:53
ジーク:
「保証はない。まぁ.....一種の賭だな。竜の血筋にでも縋ってみるか」10/23 12:57
ナレータ-:
「それが単なるジークの戯れなのか、それとも彼なりの気遣いなのか...あるいは別のものなのか。問いを投げる深海色の瞳からは容易に読み取らせてはくれない。大きく溜め息をついたかと思うと、ニコルは隣にいるエドリックのアスコットタイに手を掛けた。」10/23 13:13
ニコル:
「これで私に目隠しをお願いします。エドリック」10/23 13:17
ナレータ-:
「趣味のいい刺繍が施されたワインカラーの幅広のタイがエドリックの前に差し出された。」10/23 13:22
エドリック:
「なぜ、君の顔が見れない? 瞳が覗けない? これは私にとって一度きりの逢瀬と変わらないのに」10/23 13:38
ナレータ-:
「絹がシュッと音を立てるほど手荒に、エドリックはニコルの手からタイを受け取った。少し困惑した顔で、己の上着を脱ぎ捨てる。そして、ニコルにくちづけた。そのまま手が優しくニコルのブラウスのボタンを外していく。掌中の大切な珠。記憶に残るのなら、なるべく優しく心を籠めたい。何故ならこれは、一度きりの逢瀬と変わらない。」10/23 13:38
エドリック:
「…残酷だね。それが君の本性?」10/23 13:38
ナレータ-:
「ニコルの耳元に囁いて、エドリックはにやりと笑んだ。それもいい。魔性は望むところだ。エドリックはニコルの服を取り去って行く。そこにジークがいるのもどこか高揚感に繋がっていた。」10/23 13:39
ニコル:
「こんな時の貴方は容赦ない...ほんの少しでも私を哀れと思うのなら、どうか先程お願いした情けをかけて下さいませんか」10/23 14:48
エドリック:
「なぜ情けと? ジーク殿の目が気になるのか?」10/23 15:12
ナレータ-:
「エドリックは、ニコルの本意が掴めずに、ジークを振り返った。」10/23 15:12
エドリック:
「ジーク殿、私の記憶にこの逢瀬を残すためには、あなたが間近に居る必要があるのですか?」10/23 15:12
ジーク:
「何を今更....えらく無粋なことを聞くね、君は。」10/23 17:34
ナレータ-:
「船尾に腰掛け、淵に頬杖をつきながら2人の様子を見ていたジークがくすっと笑った。」10/23 17:40
エドリック:
「私はthreesomeでも、いっこうに。ただ、ニコルが…」10/23 18:32
ナレータ-:
「エドリックは振り返って少し強張ったニコルの顔を伺った。諦めに似た表情には見える。それを見てとった後の彼の行動は早かった。エドリックは強引に半裸の恋人の手を引いて、ゴンドラに乗り込んだ。そこで初めて額に手を当て、ほんの少しのあいだ考え込む。行動の方が早い。それがこの男の特徴だ。やがて大きく溜め息をついて彼なりの提案を述べた。」10/23 18:32
エドリック:
「ジーク殿、貴方は船首楼の上へ。ニコルにはその下に横たわってもらう。そして私は下のニコルを突き、上の貴方を口で奉仕します。…そうすれば、ニコルは貴方の目を気にせずともすみます。いかがでしょう?」10/23 18:32
ジーク:
「顔射か」10/23 18:40
ニコル:
「あぁ....」10/23 18:40
ナレータ-:
「ニコルが両手で顔を抑えた。」10/23 18:44
エドリック:
「顔射でも、なんなりと。但し、後ろだけは死守したい。たった一度の恋人との思い出です。男でありたいという、男心を汲んで頂きたく」10/23 18:45
ニコル:
「こんな事やめましょう!エドリック。私の我が儘が過ぎました。一度でも貴方に閨の記憶を持って欲しいと願ったばかりに...」10/23 18:47
ナレータ-:
「ニコルがエドリックの胸に縋りついた。身体が小刻みに震えている。」10/23 18:49
エドリック:
「なぜ? 私は君の身体の感触を覚えておきたい。これは、私の我が儘でもある」10/23 18:50
ニコル:
「エド....」10/23 19:03
エドリック:
「…ん? なんだ?」10/23 19:09
ニコル:
「愛してます」10/23 19:10
ナレータ-:
「声にならない涙が込み上げ、しゃぶりつく様な口づけをした後、ニコルはそこに横たわった。透き通った白い肌が浮き彫りになる。その間にもカツカツと容赦ない足音がこちらに向かって歩いてくる。」10/23 19:10
ジーク:
「決して私のを飲むなよ。まだ君が人間でいたいのなら」10/23 19:11
エドリック:
「……」10/23 19:15
ナレータ-:
「一度に衝撃的な事を双方から言われて、エドリックは絶句した。ニコルに愛していると返そうとしていた口がほんの少し開いたままになる。」10/23 19:16
エドリック:
「…あなたがたヴァンパイアの血の継承は、そうやって?」10/23 19:16
ジーク:
「我が一族の、だ。どうした?怖じけづいたか、竜の末裔。」10/23 19:20
エドリック:
「いいえ。…ですが、もし甘美だったら困るなと」10/23 19:23
ナレータ-:
「死地。その言葉が、エドリックの頭を過った。彼は負け惜しみで己を奮い立たせた。彼らとの交わりは、単なる行為とは異なるのだ。自分が巨大な扉の前に立ってしまった事をひしひしと感じる。」10/23 19:24
エドリック:
「…お手柔らかに、ジーク。…そして、ニコル。愛してるよ。私はずっと君との関係を守る」10/23 19:31
ニコル:
「...っあ」10/23 19:37
ナレータ-:
「既に涙で視界はぼやけている。こんな危険を愛する人に強いる強烈な後悔の念が心に渦巻いて気が狂いそうだ。最後まで正気を保っていられる自信がない。それでもエドリックのベルトを外しにかかる自身の手は、彼の雄芯を性急に求めている。後ろからのぬめる様な視線を感じながら....」10/23 19:52
ジーク:
「ようこそ我々の閨へ。願わくばこの記憶が永遠にあらんことを。」10/23 19:54
ナレータ-:
「船首楼に腰掛け大きく足を広げたジークの下でニコルの虚ろな視線が蒼い瞳だけを見つめている。胸は鼓動と呼吸で何度も上下に大きく反り返りながら、脳なのか心なのか、それとも手そのものが覚えているのか、ニコルの右手と左手が別々の滑らかな動きをする。」10/23 20:03
エドリック:
「泣くな。笑顔を忘れるなと言っただろう? どんな時でもだ」10/23 20:35
ナレータ-:
「ニコルにそっとくちづけて、エドリックは立ち上がった。ニコルの手を制して、自分で全てを脱ぎ捨てる。」10/23 20:35
エドリック:
「その言葉。訂正させて頂きましょう、ジーク。私の生ある限りです。あいにく永遠に生きるつもりなどない」10/23 20:35
ナレータ-:
「エドリックの声が天蓋に低く響いた。生身の裸体。ヴァンパイアにとって、若い血潮が脈打つ甘美な餌。それを惜しげもなく晒して、若き騎士はジークを挑戦的に睨み返した。」10/23 20:36
エドリック:
「…貴方の服…邪魔ですね。取りましょうか?」10/23 20:36
ナレータ-:
「最初にジークの優雅なクラヴァットに長い指がかかった。ゆっくりとそれを解いて、ブラウスのボタンを外して行く。体温を持たないかのような白さだった。妖艶に変化していくジークの表情をその蒼い瞳で見つめながら、容赦なくその身体をあばいていく。その間、下から伸ばされたニコルの手が、愛おしげに自分の身体を熱くしていくのをエドリックは感じていた。」10/27 19:42
ジーク:
「......」10/27 19:42
ナレータ-:
「露になったジークの躯は均整の取れた細い流麗なラインをしていた。だが、ニコルと少し印象が違う。それはどこか生物らしさの欠けた、まるで美しく白い陶磁の彫像のようだった。つと、ジークの細い指がエドリックの見事な体躯の鎖骨から筋へと伝う。」10/27 19:44
ジーク:
「.....君の躯は獅子の様だな」10/27 19:44
ナレータ-:
「そのジークの言葉と視線を受けて立つように、エドリックは薄ら笑った。瞳に挑戦的な光を宿し、ジークを見つめたまま、自分の中心を愛撫し続けるニコルの手に指を絡める。彼はそれを強く握り返した。想いは繋がっている。そう思いたかった。だが、もう片方の手はジークの胸へとのびていく。色素を失ったかのような白磁の肌に浮かぶ淡い桜色。指先で円を描いてそれを弄ぶ。仰け反って、弧を描いた身体を指がそのまま這い降りた。水面と天蓋からの淡い反射が、闇の王の裸体に薄い波紋を映し出している。一人の無力な人間の手の中に降りてきた妖しく美しい背徳の世界。エドリックは存分にそれを享受した。ニコルの身体を両脚の中心に置いて膝をつくと、彼はジークの雄神を躊躇いもせず口に含んだ。不死者への秘薬か、死神への扉か。飲めば己の運命が変わるというその泉。蒼い瞳が見上げる先で、硬質のヴァンパイアの顔が妖しく歪む。」10/27 19:45
ニコル:
「あ...ぁ...」10/27 19:46
ナレータ-:
「上で白い彫像の中心が意思を持ち始める。 その下では途切れ途切れの喘ぎ声がニコルの口から漏れている。目の前のエドリックの肉芯を掴み、右手で優しく器用に上下に動かすと、滴りが滑らかさを生み出し その屹立を自分の中へと導いた。熱い。」10/27 19:46
エドリック:
「…ニコル。待って」10/27 19:46
ナレータ-:
「エドリックの声が降って来て、そのまま唇がニコルの唇を塞いだ。その間も、上に伸ばされた彼の手は器用にジークの快楽を煽り続けている。エドリックは恋人の顔を見つめながら腰を進めた。自分を圧する熱い身体。艶冶に顰められた眉根。熱く見つめてくる瞳。吐息に喘ぐ唇。それらに目を奪われる。愛おしそうに見つめるエドリックの瞳が切なげに揺れた。たった一度だけの記憶。恋人を熱く貫きながら、この一瞬の全てを目に焼き付ける。」10/27 19:47
エドリック:
「君は…妖花だな。とても綺麗だ」10/27 19:48
ナレータ-:
「両足を上に向け重なり合った部分に緩いリズムを与えると、エドリックが僅かに遅れてそのリズムを打ち始めた。2人のリズムが一つになっていく。僅かに漏れるお互いの吐息さえ同じ鼓動に揺らめいた。」10/27 19:48
エドリック:
「…いざ…破滅の門へ」10/27 19:48
ナレータ-:
「一瞬躊躇ったが、エドリックは己を奮い立たせた。理性などこの場合不要だった。屹立したジークの裏側からゆっくりと舌を這わせ、再び口に含んで陰圧をかける。歯を軽く立て鈴口を舌先で突くと、白磁の肌が震えた。一方、下半身では強烈な快感が襲っていた。先端がニコルの柔らかい身体の中の一点を見つけて、責め立てていた。その身体の反応が更にエドリックを快楽の頂きへと駆り立てる。」10/27 19:48
ジーク:
「...ふぁ...ん......っ...」10/27 19:49
ナレータ-:
「ほんの小さな喘ぎ声が目の前の彫像から漏れる。その途端、エドリックは奇妙な感覚に見舞われた。自分の下半身と唇は2人の人物を繋ぎ止め、漏れる吐息さえ地底湖の水面の如くゆらゆらと揺らめく。最も死に近い場所に居ながら3人の恍惚の時がゆっくりと近づいてくる。」10/27 19:50
ジーク:
「口をはずせ!」10/27 19:50
ナレータ-:
「ぐいっとジークの右手で豪奢な金髪が目に見えぬ早さで上に持ち上げられた。彼の先端から白い液体がエドリックの顔を僅かに外れて後ろに迸る。」10/27 19:51
エドリック:
「ニコル!」10/27 19:51
ナレータ-:
「その瞬間、エドリックは素早く体勢を変えてニコルを抱きしめていた。同じ思いの中、愉悦の頂きで共に爆ぜる。至福で身体が震え、そして甘く融けた。3人の放つ淫美な匂いが揺らめくゴンドラから天蓋に向け燻り立つ。すると、エドリックは不思議な光景を目にした。」10/27 19:51
効果音:
「...サ...ザァ......」10/27 19:52
ナレータ-:
「二つの白い肢体の胸の部分から揚羽蝶の文様がふわりと浮かび上がる。一人は温かな珊瑚色の文様から色とりどりの蝶を、もう一人は黒一色の文様から一匹の大きな黒揚羽蝶を。それらがエドリックの目の前をゆらゆらと幻影の様に羽ばたき飛び交い乱舞する。現みとは思えぬ光景。」10/27 19:52
ジーク:
「...... ..... .. .... ....... ... .......」10/27 19:53
ナレータ-:
「まるで天界の様な音律がジークの喉の奥から発せられ、木霊の如く地底湖全体にゆっくり響き渡った瞬間、エドリックはえもいわれぬ恍惚にすっぽりと包まれた。彼らが生み出す蝶の幻影は悦楽を与える代わりに相手の記憶を奪い去る。だが今回、ジークの音律による見えない結界を張られ閉じ込められ、本来の行き場を失った色とりどりの揚羽蝶は彼らの目の前で数度羽ばたき、映画のスクリーンのようにすぅとその場で音もなく消えた。」10/27 19:53
ジーク:
「悦楽の蝶だ。脳裏に刻め」10/27 19:55
ナレータ-:
「そう言うとジークはエドリックの金髪の首筋に手を添えキスを一つ落とした。」10/27 19:55
エドリック:
「感謝します、ジーク。…そしてニコル。今度こそ、君を忘れない」10/27 19:56
ニコル:
「エドリ...ク」10/27 19:56
ナレータ-:
「エドリックがくちづけると、極度の緊張の糸が一気に解れたのか、ニコルはその場で気を失った。その様子を見ながらジークは手短かに衣服を整えた後、舫い綱を引き寄せ接岸を待たずふわりと岸に飛び移り闇の中へと姿を消した。」10/27 19:56
エドリック:
「…まるで夢のようだったよ、ニコル。私たちは家族になったな」10/28 15:37
ナレータ-:
「まだ夢から覚めやらない瞳でジークの後ろ姿を見送ったエドリック。見下ろせば、自分たちの愛欲の迸りが未だ恋人の身体で光っていた。彼は自分のシャツを清水に浸すと、硬く絞ってニコルの身体を拭ってやった。白く華奢な裸体が目に眩しい。エドリックはまだ眠るニコルに手近にあった繻子をそっとかけ、身繕いをすると、上着だけを引掛けてその場を後にした。」10/28 15:38
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